虚栄の帝国ロシア―闇に消える「黒い」外国人たち

著者 : 中村逸郎
  • 岩波書店 (2007年10月18日発売)
3.63
  • (2)
  • (1)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
  • 本棚登録 :20
  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000225632

作品紹介・あらすじ

潤沢な石油マネーで華やかな表玄関を構えるロシア。だがその裏で働く一五〇〇万人もの旧ソ連出身外国人不法就労者の存在を知る人は少ない。僅かの賃金、劣悪な条件のもとで建設や清掃などの重労働に従事する彼らからは、つねに警察官や雇い主がなけなしの金をしぼりとっていく。そればかりでなく、労働災害による傷病や事故死の危険も常時隣り合わせで、働きに出たまま行方知れずとなる外国人の数は月に数百人ともいわれる。そうしたかれらにさらに追い討ちをかける、スキンヘッド・グループによる襲撃も、あとを絶たない。一方でロシア社会は彼らの労働なしにはもはや成り立たなくなっており、ロシア市民たちもまた、彼らの上前をはねる生活に慣れてしまった。「虚栄の帝国」の知られざる舞台裏を、地域に密着した調査がえぐり出す。

虚栄の帝国ロシア―闇に消える「黒い」外国人たちの感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • プーチンがツァーリになると聞きましてロシアの本など。

    書かれたのが2006年とちょっと古いのですが、
    モスクワで不法就労している旧ソ連諸国の労働者についてのルポです。
    タジキスタン・アゼルバイジャン、モルダヴィアなど
    旧ソ連諸国では経済が崩壊しており、
    モスクワでの労働でもらえる賃金は5倍とも10倍とも。

    不法就労ですので絶えず警察官に賄賂を掴ませたり
    ロシア人監督からピンはねされたりでも、その収入です。
    不法就労者はロシア人が就きたがらない工事現場や
    道路清掃など過酷な重労働現場を支えており
    ロシア社会はもはや彼ら無しには成り立たないと。

    外国人排斥を叫ぶスキンヘッドたちもいますが、
    ロシア社会があまりに不法就労者に依存しているゆえ
    市民からの支持は得られていないなど
    興味深い話がたくさんです。

    いや、おそろしあ。。

  • トルクメニスタンは1990年から2006年11月まで、ニヤーゾフが終身制大統領の地位につき、議会はソ連時代の共産党の流れを継ぐトルクメニスタン民主党の事実上一党支配である。欧米諸国からは、中央アジアの北朝鮮と揶揄され、首都アシガバードではニヤーゾフ大統領の金メッキの像が太陽を追って24時間回転し続けている。でも汚職できないほどに社会の隅々まで統制がいきわたりトルクメニスタンは社会の民主化と無縁な国と評されることが多いが、汚職がない分、皮肉なことに周辺の旧ソ連の諸国よりも腐敗が少ない。トルクメニスタンのような独裁国家は汚職の蔓延に歯止めをかけているのかもしれない。
    個人崇拝が徹底しているトルクメニスタンが一番健全な国かもしれない。
    アルメニアで学校の校長先生がモスクワに来て工事現場で働くと給料が12倍になる。そのくらいの経済格差がある。
    現在のロシアが抱える問題の焦点は高騰うるエネルギー資源に過剰に依存する社会体制を形成し、その深部では周辺民族を収奪することで権限まで利己主義に追求している点である。

  • 現地での長期にわたる調査を基にした問題作。

    何重もの搾取を受け、劣悪な労働条件を強いられながらも、
    自国への送金を目的にロシアへ向かう周辺国の出稼ぎ労働者たち。
    彼らの殆どが不法就労者。

    そしてロシア政府や地元警察官の杜撰な体制。
    警察ですら搾取に加わっている中で、政府は問題を把握する努力すら不十分なようです。
    さらには様々な人々の金による癒着構造を知り、唖然とするとともに胸が痛みました。
    モスクワの華々しさは、そんな構造にも支えられていたのかぁと。

    表面上は栄華を極めているロシアですが、
    瓦解する可能性はやはり内包しているのだなと、改めて強く実感。

  •  前回の著作に比べると急いで出した気がする。彼にしては珍しく推測や憶測というような発言も目立つ。これは前回の著作でももしかしたらあったかもしれないが、前回の著作は全体を突き通す大きな軸があり、且つ徹底的なフィールドワークに裏打ちされた論理性があった。今回はそれが少し物足りない。おそらく、今回の著作は、逸郎さん自体が感情的にもかなり揺れたのだろう。帝政民主主義国家ロシアで登場する日常に課題を抱えるロシア市民とは明らかに違う生きるか死ぬかの労働者は彼には大きなインパクトを与えたと思う。それぞれの労働者のケースをとりあげているが、背景説明や理解として各国の最低限の情報は必要だ。これは現地で調査出来ないとなれば二次資料で論文や著作を読む必要が出てくる。一次資料に拘る彼だけに、日本人の著作や論文を読む事は嫌だったのであろうが、労働者という枠で論じる以上それは不可欠だろう。ただ、いずれにしてももう少し全体を一本の線で通す作業が必要だった。

全4件中 1 - 4件を表示

中村逸郎の作品

虚栄の帝国ロシア―闇に消える「黒い」外国人たちはこんな本です

ツイートする