黒雲の下で卵をあたためる

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000226158

感想・レビュー・書評

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  • 連詩の時間

  • P46の「人工美の極地」はいつか使ってみたい言葉

  • この人の書く文章はどんなに短いものだろうとすべて読みたいと思わせる。

  • 『屋上への誘惑』以来の、2冊目のエッセイ集。『図書』に連載されていたものに書き下ろしを2本加えたもの。

    本書のタイトルは、一つのエッセイのタイトルでもあり、それはギュンター・グラスの詩にある風景から来ている。しかしこれだけではなく、本書全体を貫くテーマにぴったりのタイトルだとわたしは思った。テーマといってもわたしが本書を読んで勝手に感じたものだが。

    それは何かというと、「不安」。不安から何かを大切に守ろうとする姿が、このタイトルと重なる。死の影、方向感覚の喪失、彫像の中に見る生命力、コントロールできない獣性。読者はさまざまな不安な場面に出会い、しかしそのつど優しい安心感もほっこりとそこにある。

    この居心地の良さは、まさしく、まるで自分があたためられている卵にでもなったような感覚だ。そう、読んでいるうちに、いつの間にか、著者の美しく編んだ日本語が、母のように包んでいる。上品な装丁も、その一助となって。いつまでもこの中に漂っていたい、とついつい思ってしまう。(2006.1.31)

  • (p68から抜粋)高い天井を仰ぐと、アラビア文字と文様が細密に描かれた丸天井があった。高い天井というものは、ひとを妙に宗教的な気分に誘うものだ。見ていると、心が天にぐいっと釣り上げられ、身体のほうがからっぽになってします。自分の外側に広がっている空間がそのまま内側に反転し、どこまでも広がっていくように感じられる。宗教を実践する場所というものには、日常生活の悩みや雑事の類をいったんくだいて小さく拡散してしまうような、こうした空間の力が必要なのだろうか。

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著者プロフィール

1959年生まれ。’97年詩集『永遠に来ないバス』で現代詩花椿賞、’00年詩集『もっとも官能的な部屋』で高見順賞、’01年『屋上への誘惑』で講談社エッセイ賞、’07年「タタド」で川端康成文学賞、’10年詩集『コルカタ』で萩原朔太郎賞、’14年『たまもの』で泉鏡花賞を受章。おもな作品に『感光生活』『弦と響』『野笑 Noemi』『幼年 水の町』がある。

「2018年 『変愛小説集 日本作家編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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