グアバの香り――ガルシア=マルケスとの対話

制作 : P.A.メンドーサ 
  • 岩波書店
3.82
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000226370

作品紹介・あらすじ

ノーベル賞作家にして稀代の語り部ガルシア=マルケスが、長年の親友である作家・ジャーナリストのメンドーサを相手に膝を交えて語り尽くす、自らの生い立ちや文学への目覚め、若い頃の習作時代、いかにして『百年の孤独』は生まれたか、そして成功後の名声がもたらしたもの、…。作家と作品をより深く知る上で必読のエピソードが満載の、一九八二年、幻の名対談。

感想・レビュー・書評

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  • ガルシア=マルケスへ、親友でジャーナリストのメンドーサがインタビューする。
    これはいろんな方面においてかなり情報が多い。
    ガボさんに興味がある人は是非読んでみてください!

    ❏ガボさんと黄色
    ・「百年の孤独」でマコンドに通るのは黄色い列車。
    ・マコンドに降るのは黄色い花。
    ・ある青年とともに顕れる黄色い蛾。
    キリスト教において黄色は縁起が悪いようだが、ガボさんは黄色を良い色としていて、胸に黄色い薔薇を差して出てくることも多い。
    具体的に好きな黄色は<ジャマイカから見た、午後三時のカリブ海の黄色。P163>

    ❏ガボさんの親族
    ・超自然をごく自然に語る祖母。祖母にとって死者と聖者を分かつ境界線はなきに等しい。家中にいる死んだ親族のことを話す。
    ・50才以上離れているけれど理解者の祖父。祖父のイメージの登場人物は、「落ち葉」に出てくる名前のない大佐。アウレリャーノ大佐とはまったく違うタイプ。
    ・親族は、保守党自由党入り混じっている。
    ・男が混乱、女が秩序。男は戦場にいき家庭のことは考えない。女は男たちが「盾に持って帰るか、盾に載せられて帰るか」であり、敗者になって戻ることはないので、また新しい男を向かい入れる。

    ❏百年の孤独の舞台について
    ・冒頭の「氷を見に行った思い出」はガボさん自身のもの。
    ・百年の孤独は、書き始めるまでに17年、ある日冒頭が浮かんで、書き始めたら2年で書いた。それがホットドックのように売れすぎてしまった。身内へのちょっとしたサインを批評家があれこれ言っててちょっと違和感。
    ・経帷子を編み上げて死んだ叔母、地方中に庶子がいる祖父、ぶたのしっぽのある男、土を食べる妹、未来を予見する祖母、至福感と精神錯乱の区別がつかない同じ名前の大勢の親族の者たち、すべて実際にガボさんの親族のお話し。
    ・フェルナンダの出身である「暖房も花もない修道院」はボコタのイメージ。

    ❏ラテンアメリカと欧米の違い
    ・欧米では驚異が、ラテンアメリカでは日常。
    ・「河」といってもドナウ川とアマゾン川では全く違う。「嵐」といっても欧米のそれとラテンアメリカのそれでは全く違う。

    ❏百年の孤独の登場人物について
    ・もしアウレリャーノ大佐が政権を取っていたら「族長の秋」のような孤独な独裁者になっただろう。
    ・アウレリャーノ大佐のイメージは、ラファエル・ウリーべ=ウリーべ将軍
    ・ウルスラはぼく(ガボさん)にとって理想の女性。自分の母の一部を反映させているが、母は年をとるとどんどんウルスラになっていった。
    ・ホセ・アルカディオとアウレリャーノの違い。
    子孫を残すのがホセ・アルカディオ。残さないのがアウレリャーノ。唯一の例外はアウレリャーノ・セグンドだが、おそらく幼い頃双子のホセ・アルカディオ・セグンドとごっちゃになって名前が反対になってしまったのだろう。
    ⇒そうか!ブエンディーア一族ってホセ・アルカディオタイプ(勇敢だが悲劇的)と、アウレリャーノタイプ(内向的だが頭が良い)がいると思っていたのだが、”アウレリャーノ”も、元はホセ・アルカディオ筋なのか!または、ホセ・アルカディオしか子孫を残さなくても、アウレリャーノが出てくるんだなあ。
    ・小町娘レメディオスは、姿を消すということは決まっていたがどうやるか決まっていなかった。中庭の洗濯を見てひらめいた。<美少女レメディオスが天上に登るためにはシーツが必要だった。あのときは、現実がシーツを思いつかせてくれたんだ。ふたたびタイプライターの前に座ると、美少女レメディオスはなんの問題もなく上へ上へと上昇し続けた。そうなるともう神様に求められないんだ。P45>

    ❏作品について
    <作家というのは普通生涯に一冊しか本を書かないものなんだ。P71>
    ガボさんにとっての根本テーマは「孤独」

    ❏政治とのかかわり
    ・親族は、保守党も自由党もいた。
    ・ベネズエラの独裁者、ペレス・ヒメネスが亡命した飛行機をみた。数日後、大統領官邸にジャーナリストとして入った。
    ・ラテンアメリカの独裁者たちは非常にとてつもない。独裁者は処刑されない。暗殺されるか亡命するかベッドで死ぬ。
    ・フィデル・カストロとは個人的な友人でもある。貪欲な読書家で目利き。発表前のある本を持っていったら「今度生まれ変わったら、作家になりたいな」って言ってた。
    ・ミッテラン大統領とも友人だけど、なかなか文学の話はできなくなっていった。
    ・ヨハネ・パウロ二世に謁見。
    ・ラテンアメリカ諸国の政治家と知り合いで「隠密大使」って呼ぶ将軍もいる。
    ・ラテンアメリカのゲリラ人質事件があると交渉を頼まれる。イギリスからはグレアム・グリーンも公証人になっている。でも解決しても政府は僕達に連絡くれなかったんだよ!うまく交渉したら内通してるって思われたらしい(`^´)。


    ❏まじない、霊感、迷信など
    ・「神を信じない者は、迷信を信じればいい」
    ・黄色い花があれば不幸なことが起こらない。
    ・金、金色はだめ!ヽ(`Д´)ノ
    ・人に不運をもたらせるかもしれないものを”パバ”という。人目でわかる。そんな人や物には近寄らない。
    ・嫌いな曜日は日曜日。

  • マルケスの人となりや作品に対する思いが率直に伝わる対談集。
    マルケス自身が作品のような気がしてきました。
    寛いだ雰囲気の中で、のびのびと語り合うお2人が目に浮かぶようです。
    作品とともにオススメしたい1冊。

  • もっと文庫に、、、

    岩波書店のPR
    「ノーベル賞作家にして稀代の語り部ガルシア=マルケスが、長年の親友である作家・ジャーナリストのメンドーサを相手に膝を交えて語り尽くす、自らの生い立ち、家族、文学への目覚め、習作時代、いかにして『百年の孤独』は生まれたか、そして成功後の名声がもたらしたもの、……。作家と作品をより深く知る上で必読のエピソードが満載の1982年の名対談、初完訳。 」

    • umitotanpopoさん
      ぬおぉぉぉっっっ!(笑)こ、これはっ必読ですねぇ。
      マルケスの自伝的要素が色濃いとされている『生きて、語り伝える』は未読なんですが、こっちの...
      ぬおぉぉぉっっっ!(笑)こ、これはっ必読ですねぇ。
      マルケスの自伝的要素が色濃いとされている『生きて、語り伝える』は未読なんですが、こっちの方が値段が良心的や(笑)
      新潮社としては新装版を売りたいんでしょうから、当分出ませんよね、文庫……。新潮社は外文の文庫、わりとあっさり絶版にしてしまうので困ります。
      2013/08/27
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「『生きて、語り伝える』は未読なんですが」
      私もです。。。
      文庫化の基準?をクリアしない=売れていないのでしょうね、、、
      小説以外で読む(予...
      「『生きて、語り伝える』は未読なんですが」
      私もです。。。
      文庫化の基準?をクリアしない=売れていないのでしょうね、、、
      小説以外で読む(予定)のは「戒厳令下チリ潜入記」(岩波新書)以来かな?
      2013/08/28
  • マルケス大好きなのでとにかく本人の内面を知りたくて。
    対話形式みたいな感じだけどなかなか名著だと思う。

  • *(注意)いつものまとまりが無い個人の感想と戯言でしかも長いです!

    ガルシア=マルケスと親友でかつ記者時代の同僚でもあった作家・ジャーナリストのメンドーサとのノーベル賞受賞前(1982年)の対談。

    『百年の孤独』、『族長の秋』を読み終った直後(本当は『予告された殺人の記録』も読了しているともっといいはず)にこの本を読んだが途轍もなく面白かった。それぞれの作品が生まれた背景や執筆時の問題とその解決方法といったことも答えられていて、今後再読するときにより深く理解するためのヒントが沢山散りばめられていた。

    それにしても、書きたいと思ってから書き上げるまでに掛かった時間が『百年の孤独』は15年、『族長の秋』で17年、『予告された殺人の記録』で30年とスケールが違う。それだけの期間経ったら題材も古くなったりしそうだが、それについてガルシア=マルケスは「長年放置しておいて消えてしまうようなテーマには興味がないんだ。(いいアイデアは)時間の風化作用に耐え抜くんだな。そうなると、あとはもう書くより仕方がない。」と答えていてなんともカッコいい。更にこの対談から三十年以上たつけど、今読んでも全く風化しているとは感じないのもまた凄い。

    対談の中で特に印象に残ったのは、『族長の秋』が「ぼかして書いた自伝・告白の書」であると言っている箇所。他のラテンアメリカの作家の多くと同様に政治に関与をしていたりもするが、対談や経歴からは権力を欲しがるような感じは微塵も無いし、家庭を含め権力を振り翳す感じも全く無く独裁者とは正反対に位置するとしか思えないので意外だった。ただその後を読むと、権力がもたらす孤独と名声がもたらす孤独は似ているとある。『百年の孤独』で得た名声から権力者が感じるのと同じような「誰を信じればいいんだ?」という不安が生じそれが極端に膨れ上がると錯乱し「自分はいったい誰なんだ?」の問いに行きつくのではと意識したらしい。有名になったお陰でそれに気づくことができ族長を創造する上で役立ったとある。でもそれ以上に「ぼかして書いた自伝・告白の書」といった真意は、「(作家は)執筆中の作品に関しては、誰にも助けてもらえない」「作家の仕事ほど孤独なものはない」「白紙を前にして作家は絶対的な孤独と向き合うんだ」と語ったほうに関係すると感じた。『族長の秋』は独裁者の孤独を描いているけど、そこに作家としての自分の孤独を(直接的には分からないようにぼかして)重ねたことで、あのリアリティと迫力が出たのでは素人ながらに思った。更にそれによって特異な独裁者の孤独だけが描かれているのでは無く人間のより普遍的な孤独の本質的な部分にも触れているから広く愛され永く読み継がれているのかもとド素人ながらに想像した。また、飛躍した考えかも知れないが、執筆中の作品の中の世界において作家は独裁者であると言えるのではと(私が勝手に)思いそれとも関係しているような気がしている。

    後、解説にも書かれているけどガルシア=マルケスの記憶している情報量が凄まじい。子供の頃のこと二十代や三十代の頃のことも昨日あった出来事のように鮮明に話す。まあ、だからこそ「ぼくの小説には現実に基づいていない箇所はただの一行もない」と言いきれるのだろうなあ~と(昨日のことも覚束ない私から見たら驚異的である)。

    訳者の解説も本文では触れていない情報が盛り込まれていて面白い。

  • 単行本で対談集というのはあまり読まないけど、このガルシア=マルケスの『グアバの香り』は旧知の友人メンドーサとの対話と、断章のようにして対談に挟み込まれるメンドーサによるガルシア=マルケスの破天荒なバイオグラフィーのそれぞれが小説のようにして読める
    対話の章は、プイグの作品などでほとんど地の文のない作品があって(『リタ・ヘイワースの背信』や『赤い唇』等々)それらを思い出したりしました

    旧知の友人との気の置けない対話の中で『百年の孤独』をはじめとした数々の作品執筆の裏話はとで興味深い
    買い求めたのはもう10年前(ちょうど10年前!)なのにたまに手に取ってはそのたびわくわくする思いでページをめくる

    ラテンアメリカ文学は10代の頃から好きで若い頃はもっとマッシヴな作家に惹かれていたのに気づけば今はガルシア=マルケスばかり手に取るようになった

    いつか原書読みたい!と思いつつスペイン語はまったく手をつけてなくて…
    今からでも!と

  • 花火の玉の中に詰める魔法のチョコレートを調合するように進んで行った失われし対話、残った記録。土地に根付いた言葉から萌え立つ敬虔さが刻まれた大空に花火が吹き上がっていくのを恍惚と眺めた。そして今、少しずつ魔法のチョコレートを削って陶然と舐めながらグアバの香りに対してできる貢献を考える。チョコレートは愛の詰まった伝言、甘くとろけながら狂躁的暗闇を喚起させられ怯える。それでも文化資本と呼ぶべき愛には《創造力に備わる総合的な力》と《人間の知性を社会的に活用》できるようにと祈りが込められ、それがわたしをぎゅっと抱く。

  • ガルシアマルケスの対談本。自身の半生を語る。
    自分自身の半生と作品について語ったもの。様々な話題を取り上げており、特に「百年の孤独」の成功が、彼の人生を大きく変えたと言う。ファンにとっては、話題満載で面白く読めると思う。

  • ガブリエル・ガルシア・マルケスはなんと新聞記者上がりだった。ジャーナリズムやったあとに、想像力豊かな豊饒な語彙で幻想的な世界描けるんだな。

  • 【由来】
    ・図書館の岩波アラート

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

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G.ガルシア=マルケスの作品

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