検証 大学改革 混迷の先を診る

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著者 : 山上浩二郎
  • 岩波書店 (2013年5月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000227926

作品紹介

進行する「教育の雑務化」と「改革疲れ」の先は?改革の現場を見つめ続けた記者による、真摯な提言。

検証 大学改革 混迷の先を診るの感想・レビュー・書評

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  • 大学改革が盛んである。しかし、果たして内実や成果の伴ったものであろうか?ペーパーだけを纏めて対外的なアリバイ作りが目的のもの、場当たり的な改革も少なくない。何も考えず、変えることそのものが目的となっていることもある。「改革しない」という選択肢が、単に消極的と受け取られる可能性があるからだ。
    大学改革の焦点は、著者が言うように「さまざまな改革の恩恵が学生に還元されること」である。大学教育の根幹は、教員と学生が向き合う教育研究活動だ。それだけに、教員と学生が作り出す授業空間を充実させて、学生の意欲や好奇心に火をつけ、自主性・自発性を育むことが必要だ。そして、大学が「持続的民主主義」の担い手となることを著者は期待している。
    もう一つの焦点は、改革の実行主体は大学自身だということ。学生に問題発見・解決能力、自主性・主体性を求めるのであれば、大学が組織としてそれを実践していかなければならない。しかし、昨今の大学改革の起点が、内閣府や文部科学省にあり、改革命令が外発的にかつ矢継ぎ早に行われて、そのために大学現場が混乱している点も気になるところである。
    大学改革といえば、とかく意思決定の遅さに非難が向けられることが多い。「企業経営を見習え」という意見も多い。しかし、大学教育の目的は企業の目的よりも多義的である。客観的な指標になじまないものも多い。それだけに、大学の毛細血管にあたる教職員による議論は、結論を出すためだけでなく、議論そのものを通して意見を共有することにも意味があるはずだ。
    大学改革論といえば、教育の本質をわきまえないステレオタイプを押し付けたり、自分の狭い体験や思い込みを絶対的なものだと信じて教育改革論を振りまわしたりする人など、危なっかしい意見は多い。しかしこの書は、大学の現場に実際に足を踏み入れ、関係者との議論・対話をしっかりとしたうえで著されているのである。つまり、実証的な裏付けを持った観察と考察の上で提言されている点でも好感が持てる書籍である。

  • 本書を一読することで、「大学改革」と呼ばれる各機関の取り組み概要を総覧できる。結論では、「持続的民主主義」の担い手を各大学が輩出し、また大学自らが、教育・研究を通じてそれを担当する機能を持つべきと述べている。ただ私にはこのことは、民主主義が一般的でかつ万能であるという前提に立っているような印象を受けた。ある種の思想のみで、大学の機能を統制することは難しいのではないかと思った。

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