これがすべてを変える――資本主義VS.気候変動(下)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000229579

感想・レビュー・書評

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  • 著者の不妊治療や繰り返す流産と、環境が殺されていくことが重なって見えるところが圧巻。非常に説得力を持って環境汚染による生物多様性の失われていく様が描かれている。気候問題は気候正義とも言われるように、倫理的問題でもある。しかし、対案を示し、自分たちでコミュニティを守ることが必要な問題でもある。アメリカやカナダなど先住民族のいるところでは、日本とはまた違った景色が見えているようである。

  • 気候変動という”今ここにある危機”の根本原因は成長神話にがんじがらめになった資本主義のシステムにこそあり、それを解決するには現行の経済システムとそれを支えるイデオロギーを根底から変える以外に方法はない。

    それに大人たちが向き合わず、グローバル資本主義の価値観の中で他者より少しでも優位を取ることに時間を費やしてきたことこそ、グレタさんが怒っていた事の本質なのだろう。

    このイデオロギー部分については奴隷制廃止の事例が引かれている。アダム・スミスは1776年の国富論で奴隷制反対の主張を展開したが、それは経済的損益の観点からだった。賃金労働者の方が一生懸命働く動機があり、病気や怪我により働けなくなった際の出費もなく安くつくという主張だ。しかし、18世期末に奴隷貿易廃止の運動がイギリスで起きた時には、奴隷制が孕む倫理的な歪みとその背後にある人間性を蝕む世界観を重視し、実際に廃止へと進んでいく。つまり、忌まわしい慣行を禁止するだけでなく、そもそも奴隷制が受けいられることを許した社会の深いところに根差す価値観を変えることこそ重要だった。

    化石燃料からの脱却についても、確かな経済的論拠はあるものの、例えば、災害が起きた後で対応するより今から排出削減に投資する方が費用対効果が良いなどと論じるような相手の土俵にのって闘うのではなく、そうした計算が倫理的にいかに醜悪かを主張することによってこそ真に勝利は得られるのだとろう。

    グローバル経済はいま未曾有の事態に直面している。コロナ対策で経済よりも優先されるものが初めて見えてきた。アフターコロナの時代に、人命だけでなくこの地球という生命体の存続を経済に優先して考えることできるのかどうか?既存の経済システムの回復をはかることが指向されるだろう中で、オルタナティブな世界観を提示し向かっていくことができるかどうか。つまり、システムの歪みを一部の人に押し付け見ないフリをする社会を存続させるのではなく、超個人主義でなく相互依存に、支配的でなく互恵的な関係に、上下関係でなく協力に根差したオルタナティブな世界観を獲得できるかどうか。その闘いがコロナの後にはじまるのだと感じる。

  • 環境汚染や温暖化と戦う世界の人々は日本人にとっても無関係な出来事ではないはず。危機が迫って民衆が結束する事例は心強くもあり、経済至上主義と対立する環境持続問題の複雑さや困難を表すものでもある。
    オゾンホールの問題がフロンの規制を成立させ、代替え冷媒を開発させたが、オゾンが暫定的に回復している兆候が最近発表された。 化石燃料への依存を倫理的にも否定し、自然エネルギーが電力供給の全てを支えるシステムになりえることが技術的にも現実的にも可能であり、世界がその方向へ進んでいると信じたい。
    しかし大震災により、現在進行形で大量の汚染物質を垂れ流している福島原発の事故を経験しながら、脱原発・自然エネルギーへの転換や開発への投資に舵を切るどころか、原発を推進する政府や官僚に正義や倫理観など期待できない。エスタブリッシュメントが社会や未来そのものを腐敗させていく構造になっているのは日本も同じで、様々な格差拡大が今後もこの国の民主主義の矛盾を増大させていくことにつながる。
    炭素取引から地球工学の事例まで、やる前から失敗することなど明白だと思うが、トップレベルの頭脳をもってしてもその程度のものなのだろうか・・

  • おもしろい!

  • SDGs|目標13 気候変動に具体的な対策を|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/765159

  • 石油流出事故と自分の妊娠についてカナダを中心に書かれているので、下巻はかなり身近な問題として取り上げていた。
     日本のジャーナリストでここまで書くとスポンサーがつかなくなるということで、出版会社はないのかもしれない。

  • テーマ:気候変動

  • 開発目標13:気候変動に具体的な対策を
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50071499

  • 20/05/22。

  • 519||Kl||2

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著者プロフィール

1970年、カナダ生まれのジャーナリスト、作家、活動家。デビュー作『ブランドなんか、いらない』は、企業中心のグローバリゼーションへの抵抗運動のマニフェストとして世界的ベストセラーになった。アメリカのイラク戦争後の「復興」に群がる企業の行動に注目したことがきっかけとなった大著『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』は、日本でも多くの読者に受け入れられた。『これがすべてを変える――資本主義 vs。気候変動』は、「『沈黙の春』以来、地球環境に関してこれほど重要で議論を呼ぶ本は存在しなかった」と絶賛された。2016年、シドニー平和賞受賞。2017年に調査報道を手がける米ネット・メディア「インターセプト」に上級特派員として参加、他に『ガーディアン』『ネーション』などさまざまな媒体で記事を執筆している。

「2019年 『楽園をめぐる闘い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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