この星は,私の星じゃない

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000229661

作品紹介・あらすじ

この星は,私の星じゃない――.田中美津の思いに女たちが共感し,日本のウーマンリブが始まった.リブの旗揚げから半世紀を経て,いまその胸中に去来するものは? 東日本大震災以降のエッセイを中心に編んだ珠玉の作品集.

感想・レビュー・書評

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  • 大学の頃近くの女性センターに通ったり講演会ばかりきいてたことがあるのを思い出した。母からあんたは耳学問と言われたりしてた。

    友人が読んでたから読んでみた。
    上野千鶴子さんや伊藤比呂美さんは講演会行ったりラジオきいたり、新聞の人生相談なんかで知ってたけどこの作者は知らなかった。

    1970年代にリブを立ち上げ活動してしてくれてたからこその私たちの今だなぁと感じながら読んだ。

    生きるってこと。

  • 田中美津の名前は知っていたが、それ以外は全然知らなかったので手に取った。力強い言葉で、カッコイイ、と思った。上野千鶴子との対談がよかった。以下引用。


    だってそれじゃ世間の人たちと同じじゃない。男に対してだけでなく、誰に対しても臆せずのびのびと対したい、いわばそういう自分が欲しくて、私はリブを始めた。別に「女一般」のために立ち上がったわけじゃないんだから、自分に対する自信のなさから、言わなきゃならないひとことが出ない としたら、そのことをモーレツに悔しがって、そこから「私は何者で、どんな自分になりたいのか」 というを繰り返し考えていくわ。「なりたい自分」に徐々に近づいていっているという実感が持てなければ、女が何人政治家になろうと、「それが何だ!」って話でしょ。 p.95


    田中 田中は権威だからって黙っちゃう人がいたら、それはそう思う人の問題でもあるとともに、もしかしたら思わせてしまう私の問題かもよ。人と会ってる時「ずいぶん筋肉が緊張している人だなあ」と感じることがあって、そういう人は誰にでもヤケに愛想がよかったり、また逆に妙に強張ってて話しかけたくても怖い感じで。過剰にニコニコしている人と怖い人じゃ、見た目はずいぶん違う。でも、実は構え(学歴、肩書き、威圧的な態度やニコニコの仮面といったもの)なしには他者と関われない、関わるのが怖い。っていうのも心の深~いところに不安やおそれを抱えているからで、そんな「可哀想な自分」を守るために構えなしには生きていけない。威圧的なのも、過剰なニコニコも、根は同じよ。
    これ、私が勝手に言っていることではなくて、自分自身との関わりは筋肉に現れる、だから筋肉から心を解きほぐしていこうとする精神療法の分野もあるのよ。関係の実質とは自分自身との関係だというのは、筋肉ひっくるめての自分自身との関係が、あらゆる関係に反映しているのだから、他人のことなんてわからなくてもいいけど、自分のことはわかってないとまずいよって思う。緊張や不安が 「ある」ってことがわからなければ、それをなくすことなんてできないのだから。p.95


    で、日本読書新聞に「永田洋子はあたしだ」という文章を書くんだけど、なんせ事件直後のことで本音じゃ私も彼女がおぞましい。もう、「ナンということをしたのよっ!」と罵りたい。もうしょうがないから、タブン小さい時に性的虐待を受けたせいで私は梅毒にかかり、一方永田はバセドウという自律神経が乱れてしまう病気にかかった、と。性の問題を抱えることで私はリブに目覚め、永田は自律神経が乱れがちな自分に欠けてる揺るぎない信念に憧れて革命運動に飛び込む。そんなふうに、 人はそれぞれ自分では選べなかったたまたまの事柄ーー女か男か、どこの家にどういう容貌で生まれ、どんな体格、体質で、金がある家かない家かといった、自分では選べなかった、そういう意味では責任のとりようのないことを背負って生きていかねばならない。つまり私が私であるということの根本には、誰にとっても「たまたまの事実」が関わっていて、そうである以上私と永田の違いというものも、根はたまたまで、もし病気が違えば私も永田洋子になってたかもしれない、と。 pp.98-99


    上野 じゃあ、革命が社会主義と結び付いてるとはまったく思ってない?
    田中 いや、さすがに頭ではそうなんだろうと思ってたわよ。ただ、個人的には自己救済を託す白光の輝き 、それが革命って感じだった。
    上野 実存的ですね。
    田中 私の穢れを抱きとってくれるもの、そして惨めな私が一挙に高みに引き上げられるというエロス、それが私にとっての革命だった。 p.136


    自由や自立を願いつつ、「光は男から」という思い込みから自由になりきれずに、男並み革命家を目指して永田は努力しつづけた。彼女は、総合職について男並みにがんばって、帰宅して一人になると深いため息をついてる女たちの分身です。また切り捨ててきた女を取り戻そうとして、長い髪のかつらを付けて、渋谷円山町の暗闇に立っていた東電OL。殺されてしまったあの彼女もまた、永田の分身。切ない話よね。自立した強い女になりたい、と願った。それゆえに永田は精一杯努力し、またそれゆえに道を誤った。願ったことが罪なのか、そんなことはない!って、私は叫びたかった。それで「永田洋子はあたしだ」と言ったのよ。 p.146


    田中 男との関係が難しいのは、男が暗い顔してると、自分が至らないからじゃないかと思って..… というより、そういうふうにしか思えなくて、それで気を使ったり、早く帰るように努力したり、夫の好むことしかやらないようにしたり。で、そんなふうに「川へ行ってしまう女」をやり過ぎたあげくに、相手が次第に憎くなる。つまり意識は自立した女なのに、なぜか自由に自分を生きられなくて苦しむ。問題はそこよね。
    上野 すごく引き裂かれてるからね。
    田中 引き裂かれてる。 p.171

  • 映画『この星は、私の星じゃない』公式サイト
    http://www.pan-dora.co.jp/konohoshi/

    「この星は、私の星じゃない」田中美津著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/257701

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    この星は,私の星じゃない――.田中美津の思いに女たちが共感し,日本のウーマンリブが始まった.リブの旗揚げから半世紀を経て,いまその胸中に去来するものは? 東日本大震災以降のエッセイを中心に編んだ珠玉の作品集.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b452031.html

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著者プロフィール

1943年生まれ。原因不明の仮死状態で生まれ、いわば生来虚弱。それでもなんとか鍼灸師になる。以来34年間、治療院「れらはるせ」にて一心に治療に励む。「冷え」と「自分を大事に思えない気持ち」こそ、人が病に陥る2大原因と知ってからは治療の傍ら、新宿・朝日カルチャー等でイメージトレーニングを教える。弱いからだを抱え、でも自分の可能性を信じて生きようとしている人たちを、少しでも支えられたら……という思いで、この本を書いた。主な著書 「ぼーっとしようよ養生法」「いのちのイメージトレーニング」「かけがえのない、大したことのない私」「いのちの女たちへ一一とり乱しウーマンリブ論」など。

「2017年 『自分で治す冷え症』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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