最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(上)

著者 :
制作 : 朱 建栄 
  • 岩波書店
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000230667

感想・レビュー・書評

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  •  上巻は1920年代から1956年までの間。元々自分も、中朝の「血の友誼」を額面どおり信じてはいなかったが、とにかく多くの一次資料を使って丹念に分析しているのに圧倒される。友誼の象徴とされがちな朝鮮戦争においても、開戦時には毛沢東は不満で、中国参戦後には(助けてもらったはずなのに)金日成が不満だったのは興味深い。
     1920年代以降、中朝の共産主義者には直接の連携・協力はなかった。金日成が属するパルチザン派は、中国東北部で中国の党組織と共に戦うも、同地に中国党中央の指導が及ばなくなったことから、次第にソ連の影響を強く受けていく。
     そのため北朝鮮の建国直後はソ連の影響力が強かった。中国東北部の朝鮮人の帰属も微妙な問題。この時期の中朝関係を筆者は「即かず離れず」としている。
     金日成の南進計画には、当初は中ソとも否定的。その後ソ連は容認に転じ、それを土壇場で知らされた毛沢東は不満ながらも消極的黙認。中国の参戦後は中ソの友好が強まる一方、戦争の主導権や延安派の存在感などをめぐり北朝鮮は不満だったが従わざるを得なかった。
     朝鮮戦争後、中国は北朝鮮に対しソ連以上に大規模支援。筆者はこれを、毛沢東には「中央王朝」の統治理念が浸透していたからだと見ている。一方、金日成は権威確立のため党内粛清。これに対し中ソは共同で介入するも、金日成は素直に従わず、毛沢東は北朝鮮が社会主義陣営からの離脱を企んでいるとすら考えていた。

  • 東2法経図・6F指定 319.2A/Sh14s/Nakai

  • 中国・ソ連の公文書がここまで公開されたのかと驚嘆する思いを持った。膨大な公文書を駆使した余りにも詳細な歴史の真実である。
    今までにも朝鮮戦争を扱った多くの書籍はあるが、これほどリアルかつ深くわけ入った研究は初めてではないか。
    スターリン・毛沢東・金日成の息づかいまで感じられそうな展開に夢中で読み進んでしまった。
    なるほどこのようなキャラの指導者達があの様な状況に置かれれば、中国・ソ連・北朝鮮の国家関係が現在まで続く異様な関係にならざるをえなかったのかとうなづいたが、しかしこれはまだまだ検証の必要があるとも思えた。
    北朝鮮は現在でも東アジア最大の不安定要因である。その解決と解明には過去の歴史をきちんと知る事は欠かせないと思う。
    現在の中国指導部でも北朝鮮はコントロールはできていないが、その真の理由は本書で扱われているこの時代の歴史経緯にあるのではないのかと思うと本書の下巻が楽しみである。

    2017年4月読了。

  • 319.22021||Sh||1

  • 朝鮮戦争の裏側(北側)から見る20世紀の歴史は弩迫力である。コミンテルンの指導の下、朝鮮人共産主義者も中国共産党の一員として行動していた、また国共内戦の特に東北地区の戦いにおいて北朝鮮が果たした大きな役割などは、両国が単に、同じ共産主義国というだけではないシャム双生児のようなスタートだっただけに、複雑な関係にあるのだろう。金日成が満州で主に活動していた中共の一員だったとは驚き。1945年から南北朝鮮の成立、国共内戦の終結と中国の成立に至る歴史の背景。戦争突入の背景、中国義勇兵の参戦、義勇軍を含めた指揮命令系統の検討、休戦の動き、義勇軍の中国への撤兵まで、は全く知らない世界であった。休戦時の戦争続行したい中ソの密月ぶりと、逆に休戦したい北朝鮮との距離感は全く想定外。北は完全にソ連の衛星国としてスタートし、中国を無視した開戦に至り、毛沢東は不快感を持った。毛沢東と金日成の間の確執があったことは半ば当然のことといえ、初対面の場面から既に・・・。北の粛清の歴史の根っこの深さは中ソとの関係深さの下にあるのだ。毛沢東が朝鮮代表団に「同志に裏切り者のレッテルを貼り、殺していることは重大な過ちだ」と伝えた!後年を知る今では滑稽ですらある。

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