最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(下)

著者 :
制作 : 朱 建栄 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000230674

感想・レビュー・書評

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  •  下巻は1956年以降、米中接近を経て1976年の毛沢東死去までの期間。中朝関係は好転したり悪化したりしたが、決裂までは両者とも望んでいなかったようだ。筆者は、毛沢東は対北関係を扱う上で「天朝」意識(と「世界革命」理念)を念頭に置いていたと分析する。書名の由来もそうだろう。国境画定で、長白山と天池において北朝鮮に譲ったのも、帰順さえすれば国境は意識しないという伝統意識のためだとしている。しかし、納得できるようなできないような読後感だ。中国にとっての北朝鮮の地政学的重要性、中ソ対立に影響される中朝関係、等は現代的な国際関係の中でも起こり得るからだ。その上で筆者は、冷戦終結と中韓国交樹立により「血の友誼」関係は完全に瓦解と結論付けているが、これには基本的には同感。尤も、米国が直接的脅威とまでは言えずとも、やはり緩衝地帯としての北朝鮮の意義はあるのだろうが。
     56年のポーランド・ハンガリー事件やソ連内の反党闘争により北朝鮮への中ソの圧力が弱まったこと、中国の反右派闘争・大躍進運動と北朝鮮の党内粛清・千里馬運動の類似性、中国義勇軍の撤収といった外部条件の助けもあり、金日成は権力を掌握し、中朝関係は好転。
     59~60年頃からは中ソ対立激化により北朝鮮は「漁夫の利」「二つの大国の間で掛け合い、引っ張りだこ」状態に。フルシチョフによる個人崇拝批判・平和共存路線が高まると北朝鮮は中国に傾斜。中国の「やせ我慢」による大規模援助や、62年の国境条約(非公開)での大幅譲歩も得た。しかしフルシチョフ失脚以降情勢が変わり、北朝鮮はソ連に傾斜。
     文革では北朝鮮が修正主義と批判されたこともあり、中朝関係は悪化。しかし68~69年には半島情勢の緊張に伴い再度関係は好転。その後、米中接近の中で中国は北朝鮮にも配慮していたが、やはり「同床異夢」にならざるを得ず。毛沢東は日米等への接近を経て国際情勢の安定を望んだのに対し、金日成は引き続き革命、武力統一を志向していた。

  • 東2法経図・6F指定 319.2A/Sh14s/Nakai

  • 凄まじい本である。リアルな現実世界ではちょうど金正恩とトランプがチキンレースの真っ最中であるが、本書を読んで現在の北朝鮮の異様な行動の背景がよく理解できた思いを持った。背筋が泡立つようだ。
    過ぎ去ってみれば1950~70年代に「国際共産主義運動」がどれほど大きな力と影響力を持っていたのかが想像しにくいが、当時は多くの国家指導者も「イデオロギーの呪縛」に縛られていたとしか言いようがない。
    北朝鮮の金日成は、中国とソ連の狭間を巧みに遊泳する中で膨大な国家援助を引き出したことが本書でよくわかった。しかし、北朝鮮とってそれが良かったのかどうか。
    短期的には戦後復興を早期に遂げることはできたし金日成の独裁体制も確立できたのだろうが、北朝鮮はその後50年以上を過ぎてもいまだに自立できない国家経済から脱却できないままである。金一族三代目になっても、初代の成功体験から抜けられないのだ。
    本書は公開された膨大な公文書や多くのインタビューを積み重ねて書かれている。「血と汗で固められた」などというスローガンではない「事実の検証」こそが未来を創るという本書の立ち位置に賛同するものである。


    2017年4月読了。

  • 中国人義勇兵の駐在時の問題は沖縄の米軍基地問題とそっくり!58年2月、彼らの撤兵と共に金日成の権威、そして自主(チェチュ)路線は確立していく。朝鮮戦争後のハンガリー・ポーランド動乱の影響、中国の反右派闘争、党内粛清、そして中ソ論争の中での漁夫の利を得る金日成だが、そこには打算というよりも心の迷い、一貫性のなさを感じる。中朝国境紛争で、北朝鮮が中国孤立の弱みにつけこんで獲得した長白山は朝鮮民族にとって神の山であるだけではなく、金日成が抗日ゲリラを行った場所、そして金正日が生まれたとされる場だったとは奇想天外!それが中朝国境紛争において北朝鮮が譲れなかった一線。ちょうど厳しくなった中ソ対立が中国を弱腰にさせ、北に長白山を譲ることになったとは興味深いことである。長白山に籠もって抗日ゲリラ闘争を続けたという英雄・金日成の伝説の嘘っぽさを物語る逸話だ。

  • 319.22021||Sh||2

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