- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000230704
感想・レビュー・書評
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本書のタイトルの意味は、「○○の未来はどうなりますか?」という問いに「正解」はないということのようです。
企業の上の方の人達や行政の人とかが、「未来志向」とか「未来を考える」と言った時、その内容は「自分たちが見たい未来」の話であることに辟易としている。
技術だけでは解決できない感じが世間に広がっており、哲学、アート、ファッション、音楽、文学とかが「いま」大事になってきている。
「『未来』などない。あるのは『希望』だけだ」という言葉に納得し、もう少し「いま」のことを考えないと。という気持ちは伝わってきました。
全編通して著者の思考回路の根底に「あたりまえを疑う」という習慣があると感じました。
すごい量のある本なのでチョコチョコ読み飛ばしましたが、以下のトピックスの話が面白かった。
・本当の「働く」が始まる
・だれがオリンピックを要求したのか?
・音楽に産業は必要か?
・隠し撮りの正義の話をしよう
・お金の民主化と新しい信頼
・ことばに囚われて
・なぜぼくらには人工知能が必要なのか
・ニーズに死を
・おっさんvs.世界
・いつも未来に驚かされていたい詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【新しい視点を与えてくれる一冊】
WIREDで掲載された記事を主として様々なテクノロジーや音楽、産業やビジネスについて若林恵ならではの考察がなされている。
音楽知識の豊富さに圧巻。
これら全てがこれまで全く考えもしなかったから視点から言及されているのが面白い。
テクノミュージックが文化と文化の断絶を埋めるための新しい発明であったというのは面白い捉え方だった。
人間の体内には100兆もの細菌が生きており、故に我々は孤独ではないという言葉、一瞬滑稽にも感じるがとても救われた一言。
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エッセイだとは・・・
知ってる人が出てきてたり
見たい映画があったり
それはそれでいいです -
《かつて、カート・ローゼンウィンケルというジャズギタリストを取材したときに「一番好きなアーティストって誰ですか?」と聞いたところ、「デヴィッド・ボウイ」という答えが返ってきて驚いた。ジャズミュージシャンには珍しい答えだと思って、なんでですか? と問い返したら「勇気があったから」という答えが返ってきて、さらに驚いた。「自分をとことんまでさらけ出す勇気があった」。その理由をもってローゼンウィンケルは、ボウイを最上位に置く。》(p.280)
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イノヴェイションとかけ離れた生活をいつしか送っていたことに気づいた。いちサラリーマンとして社会のニーズに合うもの、会社の利益になるものに思考を占領されていた。テクノロジーと哲学の交差する地点で時代と自身に正直に向き合った人の言葉は、今の自分に刺さるところが多かった。
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炭酸でごまかされていた砂糖の味に舌が気づくようになったちょっとぬるめの夏のサイダー
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著者若林さんの視点が面白い。WIREDという雑誌はその器のデザインがなんともお腹いっぱいだったので、ほとんど読まずにいたのですが、書籍として再構成されると読み応えがあります。
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未来を考えようシリーズ。一度授業にもお越しいただいている若林さんさんの著書で、wiredなど、いろいろな書籍等に掲載された文章を集めた本。wired元編集長、wiredからの文書ということで、最新のテクノロジーとかイノヴェイションが中心かと思いきや、哲学書や思想書に近い内容や主張になっている。もちろん、テクノロジーの話題も取り上げられるが、何のための技術なのか、人間はどう向き合うべきなのかという議論がちゅ芯に据えられていると感じた。「日本人の強みを前面に出すのではなく、自分の強みが何であるかを見極めることに時間をさくべき」「旅立ち、苦難、葛藤、克服、勝利、帰還」「イノヴェイターを讃える時に勇気を持って語ることの美しさ」などなど。あと、「体験」していない奴がユーザー・エクスペリエンスを語る気持ち悪さ、など、切れ味鋭いコメントもたくさん載っていて、うっかり見過ごしていることにハッと気付かされる。
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spotify、iTunes、napstar、CD、MD、walkman、はたまたLP、EP、ラジオ放送…音楽という輝く月の裏側にはテクノロジーのイノベーション(本書によればイノヴェイション?)がずっとずっと連なっていることを思い至りました。音楽ラバー視点からテックを語りビジネスを語り社会を語り、そして未来を語る、あまり聞いたことはないけど、めちゃくちゃ納得してしまうような論評の数々。必ず当たる宝くじを買いたがるようなイノベーション志向を嗤い、生産性をひたすら追い求めるシステムとは距離を置き、「表現する」歓びとそれを「感じ取る」歓びの交歓をシンプルに尊重する気持ち良さを感じました。月の表側を目的としてのビジネスの成功が覆ってきているような現在に月の裏側に回った音楽から吹く風みたいな本でした。