人文学と批評の使命―デモクラシーのために

制作 : Edward W. Said  村山 敏勝  三宅 敦子 
  • 岩波書店
3.89
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本棚登録 : 31
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000234238

作品紹介・あらすじ

人文学の危機が現代にもつ意味とはなにか。人文学的価値観はいかにデモクラシーに寄与しうるか。生涯をかけて人文主義者を体現したエドワード・サイード。他者の歴史と思想に反映する自己批判からこそ、正確な自己認識が生まれると説き、人文学の真の目的をここに論じる。人文学再生にむけたサイード最期のメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  •  読後の感想を二つほど。

    (1)サイードは、イスラームにおけるコーラン解釈の例を挙げながら、西洋の、というよりは人類的な伝統としての「人文学」について語ってみせる。そのことは、サイードがいかにアカデミズムの正統性において教育を受け、また、自らも教育を行ってきたかを物語る一方で、それを語るサイード自身が、根底から人文学者を・文学研究者のアカデミアをencourageしなければならないと考えるぐらい、危機感を募らせていたということ。

    (2)別の部分でサイードは、ヴィーコの『新しい学』を念頭に置きながら、「何かを知るということは、それがどう作られたかというあり方を通じて知る」ことだ、という意味のことを言っている。人文学が歴史性を手放せないことを語った発言だが、これは単に注釈や訓詁の必要を語っているだけではない。「いま・ここ」で現象するあるものの生成変化にかかわる政治的・社会的・経済的な葛藤それ自体を問題化することで、現在の問題に対する視座を拡張し、資本主義の時間とは異なる質の歴史を、時間の厚みを開示すること――。だから、サイードは書きつける。「真に文献学的な読みとは能動的なものだ」と。

  • サイード最後の書。
    敗北も勝利もない机に向かって、戦い続けた。
    ガザの良心。

  • 昨今の多文化主義の乱用やアイデンティティ政治に警鐘をならしながら、自己の土壌である文化を常に意識的批評をもって真摯にテキストに向かう伝統的な文献学手法の擁護。デモクラシーの自由の一形態として批判を位置づけ、多様な世界と伝統の複雑な相互作用についての感覚を養うこと、属しつつ距離を置き、受容しつつ抵抗すること、自分の社会や誰か他の社会や「他者」で問題になっている広く流布した考えや価値観に対して、インサイダーでありかつアウトサイダーであることが、ヒューマニズムたる人文主義に求められるとする。

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