『諸君!』『正論』の研究――保守言論はどう変容してきたか

著者 : 上丸洋一
  • 岩波書店 (2011年6月29日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000234894

作品紹介・あらすじ

約四〇年前、「左翼」運動全盛の時代に従来の総合雑誌とは異なる切り口から「保守」に言葉を与えた雑誌が創刊された。以来、『諸君!』『正論』は、時代の中で、何をどう主張し、日本の言論空間をどのように塗り変えたか。主要な論争点を中心に、両誌の論調の変遷を実証的に分析。これまで見すごされてきた戦後の思想状況の一断面を描き出す。

『諸君!』『正論』の研究――保守言論はどう変容してきたかの感想・レビュー・書評

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  • 今日ではイロモノ扱いされている『諸君!』(2009年休刊)・『正論』の両誌について、全記事に目を通し、その創刊から今日に至るまでの変遷について「実証的かつ批判的に解明」することを試みた一冊。両誌の歴史的経緯を明らかにした上で、過去には林健太郎氏や猪木正道氏などを中心として、多様な「保守」論壇が形成されていたという指摘は興味深い。

    一方で、著者は冒頭で「「右」か「左」かの二項対立思考が、いかに不毛であるか。これは、本書を貫く一つの重要なテーマである」(p.18)と述べる。しかし、結局は著者も、この思考の枠組みにはまってしまっているというのが読後の感想である。例えば、本書の大半は、特定のテーマ(靖国参拝問題、北朝鮮報道問題など)について、両誌の主張の破綻や矛盾を指摘することに費やされている。もちろん、それらの指摘が間違っているとは思わないが、これほどの多くの紙面(411頁×上下二段組み)を費やすほどの意義があるのかと問われれば、それは疑問である。

    むしろ重要なのは、そうした「論理」ではなく「情念」に訴える主張を採るようになった過程(≒イロモノ化)やその時代背景の解明である。そうでなければ、結局は、本書が批判の対象とした「朝日新聞批判の構造」(「右」から「左」に対する批判)の裏返しに過ぎないと言えよう。確かに、著者自身が分析視角の偏りに対して言及することが全くないわけではない。しかし、多くの場合、それは両誌ではなく「朝日」を擁護する文脈で用いられていることが多いように思われる(「右端から左をみて「左だ、左だ」と言っても「偏向の度合い」は測れない」〔p.329〕など)。

    やはり、両誌のメディア史的位置付けをするのであれば、他に「左」の雑誌(例えば、著者が編集長を務めた『論座』など)を含めて、当時の「論壇」の全体像を把握した上で、改めて両誌の位置付けを考察することが必要であろう。

  • ええっ、あの人が・・・というがっかりする経験を随分しました。

    この2誌に書くということは、私はりっぱな正真正銘の保守反動です、と宣言すること以外の何ものでもないのですが、とかく世の中どうしたことか自らの政治的立場に無自覚な文筆家が多く、たとえば、かつてPHPから、わが平岡正明が本を出したことを知った時は、仰天以上に激怒したものです。

    元ブントですから新左翼ですよ、それがこともあろうか、たとえ企業の社会的責任を律し、利益の社会還元を唱え、製品の安全性と大衆的廉価を追究し、働く人の労働疎外抑止とやりがい作りに専念したとはいえ、資本家の最たる人物である松下幸之助の創設した出版社から、本を出すなど言語道断、新左翼にあるまじき行為です。

    もっともPHPの原稿料は、他と比べて破格の高額なので、生活かかっている売れない売文業の身では、いたしかたないのだと思いますが。

    それはともかく、靖国神社参拝とか天皇讃美や、大東亜戦争肯定論や南京大虐殺事件はなかったとか、中国・北朝鮮排斥などおきまりの話題以外にも、多くの問題性を取り込もうとして懸命になってきた彼らが行き着いた先は、明確な対象を失って実証性のない空疎な言説、つまり空理空論を弄んでいると指摘されます。

    いまではこの2誌以外に随分多くの保守反動雑誌が見受けられますが、その本質を熟考するのにこの2誌以上に相応しいものはないと思います。

  • 上丸洋一『「諸君!」「正論」の研究 保守言論はどう変容してきたか』岩波書店、読了。本書は戦後保守の代表的オピニオン雑誌を材料に、戦後の言論・思想状況の変遷を明らかにする。核武装論や靖国と東京裁判のほか、それぞれの創刊者の対比(池島信平と鹿内信隆)など話題は多岐にわたる。

    興味深いのは、二誌にも「まとまな」時代があったこと。『諸君!』は09年休刊になったが、ここ二十年来の論調は、論敵への無理筋ともいえる根拠なき過剰な批判が殆どで、もともとあった柔軟性とは対照的。著者は休刊は「堕落の果て」と批判する。

    ためにする過剰な噛みつきは、やがてバランスを欠き、「オピニオン」の看板とは裏腹に下品な雑誌に成り下がった。しかしこの二誌の軌跡は雑誌空間に限定されるものではなく、今やちまたに溢れている。安倍首相と同年の著者の描く本書は時代の鏡だ。

  • 保守言論を よく 研究していると おもいました。

    ただ、A級戦犯や 昭和天皇の 戦争責任を 問題にすると 朝日新聞の 戦争責任は さけては とおれないはずなのですが、そのことについては ほとんど ふれられていないのは 「なかのひと」の 限界なのかなと おもいました。

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