ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く

  • 岩波書店
4.19
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000234931

感想・レビュー・書評

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  • ショック・ドクトリンとは、戦争や大災害などで国民がショック状態にある時に通常では受け入れられない大きな改革を強行することで、本書ではフリードマンに代表されるような新自由主義がいかに新興国の経済を破壊し尽くしたかが徹底的に批判されています。

    南米に始まり、南アフリカからロシアまでが新自由主義によって蹂躙されていく描写は圧倒的で、特にアパルトヘイトから脱却するべく希望に燃えた南アフリカのマンデラ大統領が外圧に負けて挫折への道を歩む部分などはいろいろと考えさせられました。

    本書の原書は2007年に出版されており、非常に話題になったにもかかわらず今まで日本語訳が存在しなかったのは出版社の怠慢だと思いますが、震災後の今出版されたのは最高のタイミングとも言えるかもしれません。

  • タイトルもズバリで、新刊を入手。
    数年前ネットでこのワードを目にしたときはスキップしたが、この状況では看過はできない。
    猜疑心が増すかもしれないが、人災を天災に転換しようとする発想とはきちんと対峙していかなければならない。

    • watanabe3tipapaさん
      やっと読了。
      3ヶ月かかってしまった。
      やっと読了。
      3ヶ月かかってしまった。
      2011/12/17
  • これは読み進めるのが辛い本だ。単に、ページ数が多いからではなく、内容があまりにもショックだからだ。でも、読者はそれに耐えなくてはならない。でないと、"どうせテレビの向こう側の話で、自分達には影響無いし"みたいな"安心感"に包まれそうで、読んでいる意味が無くなるので。
    ショックドクトリンを実施するに当たって、はじめに出てくる事柄に、CIAのマニュアルがあるがそのなかに拷問に関することがある。拷問は口を割らない人間への"尋問"する方法だったが、もはや"黙らせる"頭を「白紙状態」にするものになっている。ナチスの実験を連想させるー。
    クラインもいっているが、問題が起こると、その原因はなにか、誰かと暴こうとするが、短絡的にすることは危険だ。本書ではふたりの「ショック博士」が出てくるが、彼らだけでこんなにも遠大なショックドクトリンは成し遂げられないのはいうまでもないし(誤解の無いよう。彼らのしたことは、人間として赦されない)、また、イデオロギーを追求しても、資本主義や社会主義は完璧ではない(しかし、追求されないイデオロギーの問題が、うまく逃げおおせた人を生んだことも指摘されている)。
    人は「経済」となると、"攻め"が甘くなる。暴力には果敢に立ち向かうが、それとなると「専門家」に任せてしまった南アフリカの例は印象深い。経済と暴力はイコールにならないと普通は思う。本書の意義は、決してそんなことはないと告発することにある。
    月並みだが、まず本書でその歴史を概観し、事実、何が起こったのかをよく知るべきだ。すると、現在の日本のある"姿"が浮かんでくる気がする。

  • 原理主義って怖い、と思った。いわば「べき思考」。この本で紹介されてるシカゴ学派は、弱肉強食の自由経済主義こそが民主主義よりも優先すべき原理だと主張する。彼らは自らの生命を信奉者に守らせ、安全な第三国から世界を「浄化」する。あくまで漁夫の利なのだ。

  • 資本主義が生き残ったのは優秀だからじゃないって話ですね

  • 2023/9/10
    読み始めはユーリン・キャメロンの行ったおぞましい事実に何とも言えない不快感を感じて止まりがちだった。しかし引き続いてのミルトン・フリードマンに共通点を感じてからは、現実をきちんと認識しなければいけないと自分に言い聞かせながら読み進めた。
    あまり政治経済、特に経済に関しては好んで読むことはないのだが、政治と切り離せないものであり、なおかつ政治の主導者が専門家に任せておろそかにしがちな経済が実は政治・国家を混乱させる最大の要因であることもよく判った。
    国家の危機に際して乗り込んでくる経済の指南役たちがまるで消防士に扮した火事場泥棒のように思えてくる。まとめは下巻読了後に。

  • 100分で名著で紹介された本である。読んだ気でいたがまだ読んではいなかった。ミルトン・フリードマンに代表されるシカゴ学派が経済の自由化を政治体制が崩れたときにすすめ、その国を貧困化に導く、という説明である。唯一逃れたのは中国であったといえるような書き方である。最後がソ連の崩壊とそれに伴う経済の混乱が新自由主義にを目指す条件としての西洋からの債務である。政治と経済は一体化していることが主張されている。上巻では日本は出てこないが下巻では出てくるのであろうか。感覚遮断実験がCIAが利用して拷問と自白と洗脳を行う手段となっている経緯が示された。それを読むと心理学で簡単に感覚遮断実験を紹介するのもはばかられる。

  • 自民党の改憲案に『緊急事態条項』がはいっているのは、「ショック」の後に一気呵成にやるためなのか。
    アベノミクス失敗でハイパーインフレ、大量失業、台湾危機、北朝鮮、大震災、、、、次のショックは色々あり得る。

    ミルトン・フリードマンの新自由主義は、何でも自由化し市場に任せれば、すべてうまく行くという教義。ケインズの政府主導の開発主義を敵視する。政策を用意して時が来る(ショックが起こる)のを待って、100日とかで(国民がショック状態にらあるうちに)一気に政策パッケージを制定して実行する。
    民営化、規制緩和、公的保証の削減。
    一部のエリートや多国籍企業が儲かり、貧富の差が拡大する。
    米国では(他の民主国家も)遣りきれなかった(選挙で落とされる)ので、南米のエリートをシカゴ大学に留学させ、国に帰って政策担当者になり、ショックを待つ。多くは軍クーデターを伴い、左派は逮捕や誘拐で拷問(電気ショック)監禁、死刑や行方不明に。ショック、恐怖。
    結局失敗して元の政策に戻って、貧富の差が残った。
    民主的に進めたと強弁する場合でも、裏の事情は説明されない。
    イギリスさえ、サッチャーはフォークランド紛争を利用した。
    イラクもアフガニスタンも失敗。

    日本について本書では言及されないが、100分で名著では、中曽根が国鉄、電電公社など民営化、小泉は郵政民営化、派遣の規制緩和、アベノミクスで国が壊されている。

  • 今の自分には知識が足りない
    また時が来たらよもう

  • 急進的な民営化や規制撤廃、社会支出の削減など自由市場改革推進をShockDoctrineと呼び、社会的緊張の増大につながると鋭く批判したナオミ・クラインの名著。

    政変、戦争、災害など過去広範囲に及ぶケースを検証する。

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著者プロフィール

1970年、カナダ生まれのジャーナリスト、作家、活動家。デビュー作『ブランドなんか、いらない』は、企業中心のグローバリゼーションへの抵抗運動のマニフェストとして世界的ベストセラーになった。アメリカのイラク戦争後の「復興」に群がる企業の行動に注目したことがきっかけとなった大著『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』は、日本でも多くの読者に受け入れられた。『これがすべてを変える――資本主義 vs。気候変動』は、「『沈黙の春』以来、地球環境に関してこれほど重要で議論を呼ぶ本は存在しなかった」と絶賛された。2016年、シドニー平和賞受賞。2017年に調査報道を手がける米ネット・メディア「インターセプト」に上級特派員として参加、他に『ガーディアン』『ネーション』などさまざまな媒体で記事を執筆している。

「2019年 『楽園をめぐる闘い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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