- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000234931
作品紹介・あらすじ
本書は、アメリカの自由市場主義がどのように世界を支配したか、その神話を暴いている。ショック・ドクトリンとは、「惨事便乗型資本主義=大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革」のことである。アメリカ政府とグローバル企業は、戦争、津波やハリケーンなどの自然災害、政変などの危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人びとがショックと茫然自失から覚める前に、およそ不可能と思われた過激な経済改革を強行する…。ショック・ドクトリンの源は、ケインズ主義に反対して徹底的な市場至上主義、規制撤廃、民営化を主張したアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンであり、過激な荒療治の発想には、個人の精神を破壊して言いなりにさせる「ショック療法」=アメリカCIAによる拷問手法が重なる。
感想・レビュー・書評
-
これは読み進めるのが辛い本だ。単に、ページ数が多いからではなく、内容があまりにもショックだからだ。でも、読者はそれに耐えなくてはならない。でないと、"どうせテレビの向こう側の話で、自分達には影響無いし"みたいな"安心感"に包まれそうで、読んでいる意味が無くなるので。
ショックドクトリンを実施するに当たって、はじめに出てくる事柄に、CIAのマニュアルがあるがそのなかに拷問に関することがある。拷問は口を割らない人間への"尋問"する方法だったが、もはや"黙らせる"頭を「白紙状態」にするものになっている。ナチスの実験を連想させるー。
クラインもいっているが、問題が起こると、その原因はなにか、誰かと暴こうとするが、短絡的にすることは危険だ。本書ではふたりの「ショック博士」が出てくるが、彼らだけでこんなにも遠大なショックドクトリンは成し遂げられないのはいうまでもないし(誤解の無いよう。彼らのしたことは、人間として赦されない)、また、イデオロギーを追求しても、資本主義や社会主義は完璧ではない(しかし、追求されないイデオロギーの問題が、うまく逃げおおせた人を生んだことも指摘されている)。
人は「経済」となると、"攻め"が甘くなる。暴力には果敢に立ち向かうが、それとなると「専門家」に任せてしまった南アフリカの例は印象深い。経済と暴力はイコールにならないと普通は思う。本書の意義は、決してそんなことはないと告発することにある。
月並みだが、まず本書でその歴史を概観し、事実、何が起こったのかをよく知るべきだ。すると、現在の日本のある"姿"が浮かんでくる気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原理主義って怖い、と思った。いわば「べき思考」。この本で紹介されてるシカゴ学派は、弱肉強食の自由経済主義こそが民主主義よりも優先すべき原理だと主張する。彼らは自らの生命を信奉者に守らせ、安全な第三国から世界を「浄化」する。あくまで漁夫の利なのだ。
-
資本主義が生き残ったのは優秀だからじゃないって話ですね
-
2023/9/10
読み始めはユーリン・キャメロンの行ったおぞましい事実に何とも言えない不快感を感じて止まりがちだった。しかし引き続いてのミルトン・フリードマンに共通点を感じてからは、現実をきちんと認識しなければいけないと自分に言い聞かせながら読み進めた。
あまり政治経済、特に経済に関しては好んで読むことはないのだが、政治と切り離せないものであり、なおかつ政治の主導者が専門家に任せておろそかにしがちな経済が実は政治・国家を混乱させる最大の要因であることもよく判った。
国家の危機に際して乗り込んでくる経済の指南役たちがまるで消防士に扮した火事場泥棒のように思えてくる。まとめは下巻読了後に。 -
もっと早く読むべきだった。中国やロシアの現在に至る原点がここにある。必読の書だと思う。
-
100分で名著で紹介された本である。読んだ気でいたがまだ読んではいなかった。ミルトン・フリードマンに代表されるシカゴ学派が経済の自由化を政治体制が崩れたときにすすめ、その国を貧困化に導く、という説明である。唯一逃れたのは中国であったといえるような書き方である。最後がソ連の崩壊とそれに伴う経済の混乱が新自由主義にを目指す条件としての西洋からの債務である。政治と経済は一体化していることが主張されている。上巻では日本は出てこないが下巻では出てくるのであろうか。感覚遮断実験がCIAが利用して拷問と自白と洗脳を行う手段となっている経緯が示された。それを読むと心理学で簡単に感覚遮断実験を紹介するのもはばかられる。
-
今の自分には知識が足りない
また時が来たらよもう -
急進的な民営化や規制撤廃、社会支出の削減など自由市場改革推進をShockDoctrineと呼び、社会的緊張の増大につながると鋭く批判したナオミ・クラインの名著。
政変、戦争、災害など過去広範囲に及ぶケースを検証する。