- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000234955
作品紹介・あらすじ
世界中で愛されているアニメーション映画を、どのように作ってきたのか。そこには人との出会いがあり、大好きな映画を観てきた日々があり、プロデューサーとしての「戦略」がある。さらに、異分野・異世代の人たちと頻繁に語りあい、堀田善衛、加藤周一など時代をつくった人たちからも、直接に多くのことを学んできた。そして宮崎駿監督、高畑勲監督との日常の何気ない会話から生まれてきたことも…。ものづくりの愉しさと、著者の熱い思いが伝わってくる、ドキュメントエッセイ。
感想・レビュー・書評
-
ジブリブームが続いている。
ジブリの教科書を読んでいて1番面白いのは鈴木敏夫プロデューサーの語る裏話だった。
鈴木敏夫さんの文章は読みやすくて分かりやすくて、しかも対象への愛にあふれていると感じた。
どうして鈴木さんの語る宮崎駿監督と高畑勲監督が魅力的なのか分かる気がした。
この本にはジブリ以外についての文章も載っている。
でも全て興味深く読むことが出来た。
逆に他の人が鈴木敏夫さんのことをどう見ているかも知りたくなってきた。
なんだか変な迷宮に迷い込んでしまったのかもしれない。
1本道だと思ったらどんどん枝分かれして、しかもどの道もずっと先に続いていそうで…
さて、どの道から進んでみようかと悩んでしまう。
今、最高にワクワクしている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鈴木敏夫プロデューサーによるジブリ本。
彼のインタビューを時折目にすることはあっても、分厚い一冊の本にまとめられたものは初めてです。
鈴木氏はなかなかアクが強いプロデューサーだという印象ですが、宮崎駿氏の作品を世間のニーズに合わせてプロモートしていくには、彼と渡り合えるくらいの強い個性と信念を持っていないと釣り合わないことが、読んでいくうちにわかってきます。
自分の世界を自在に繰り広げる宮崎氏の作品を、いかに世の中に浸透しやすいように広めていくか。きちんとビジネスとして成功しないと、会社の存続はなくなるため、そこをうまく折り合わせるのが鈴木氏の腕の見せ所です。
彼も内部の人間のため、作品の興行成績以上に「いい作品を作る」ことを目的としていると、はっきり語っています。ジブリ全体が同じ理想を掲げた上で、それぞれの担当仕事を進めているために、まとまりよいものとなっているのでしょう。
そもそも「ジブリ」とは、砂漠に吹く熱砂のことで「日本のアニメーション界に旋風を巻き起こそう」という信念があるとのこと。
世界中で、アニメ映画のトップ・シェアを握り続るのはディズニー・グループで、ソフトの大半を、フォックス、ワーナー、ディズニーの3グループで分けあっているそうですが、ディズニーがアニメ映画で興行成績でトップに立てない唯一の国が日本なのだそう。
つまり、日本ではジブリが一位ということです。
それを、鈴木氏は「いいものを作るには小さい会社の方がいいに決まっているからだ」と評します。
自らの会社を「町工場」と称するだけあって、ジブリは職人としてのこだわりを持っています。
例えば「日本の子どもたちに見せる作品は日本人自らの手で作るべきだ」という宮崎監督の哲学から、創立以来、海外への外注を一切行っていないのだとか。
それだけ職員の抱える負担は大きなものになりますが、すべてに納得のいくものを手掛けたいというポリシーを崩さないのでしょう。
もともとアニメでは縦の動きや画面の奥から手前に来るような動きを表現するのは難しいのだそう。その動きに挑戦してきたのが、高畑勲と宮﨑駿で、それをディズニーは学んでいるそうです。
同業者同士、作品を見ればわかるようで、『ノートルダムの鐘』には、ほとんど『カリオストロの城』じゃないかというシーンがたくさんあるとのこと。
ディズニーの古典のテーマは「差別とその克服」だそうで、そこはやはりアメリカ的だと思いますが、ジブリはディズニーのようなグローバル・スタンダードにはこだわらずに、時代性と普遍性が見える作品を目指しているそうです。
だからこそ、大人も子供も純粋な気持ちでワクワク楽しめるのでしょう。
ディズニー映画とジブリ映画の女性キャラクターの話が興味深かったです。
ディズニー映画のヒロインが、かつての作品に比べて魅力に欠けているのは、ハリウッドのプロデューサーもディレクターもアニメーターもゲイばかりだからだ、という意見が上がりました。
これは一意見ですが、確かに『アナと雪の女王』も、男性キャラがいまいちのこともあって、ヒロインを超えたヒーローのような凛々しさを感じます。
それに対して宮崎アニメに登場する女性キャラは、男性に人気が高いですが「クラリス、シータ、千尋のように一途で健気で一所懸命でひたむきな娘は現実にはいない。
だからこそ、男はこういう女性を描く」のだそう。
制作側にそう言われてしまうと、何も言えなくなります。
宮崎氏が理想化された女性を描くのは、男系家族のためだそうです。
逆に、わがままで自分勝手なポニョのような現実的なヒロインも登場します。
そういう女性に惚れて振り回されるのも男だからだとか。
さまざまな女性像に翻弄される正直な男性目線から、魅力的な女性キャラクターが生まれているんですね。
ほかにも、日本人は「過去、現在、未来」というトータルの流れではなく、「現在」のみを切り取る伝統があるとか、日本人の文化は感覚と主観の文化だといった深遠な話題になったり、糸井重里に「『紅の豚』というのは、これだけでもう十分に名コピーですね」と言わしめた話や、フランス語版『紅の豚』の主人公ポルコ・ロッソの声は、ジャン・レノがやっている話といった、楽しいエピソードも紹介されており、最後までおもしろく読み通せました。
ジブリファンの方は、読むとさらにジブリが好きになること請け合いです。 -
スタジオジブリの名物プロデューサーとして宮崎駿・高畑勲両監督らと共に世界中で愛されているアニメ映画を筆者はどのように作ってきたのか。あの飄々とした外見からは想像もつかないくらい「熱い」ものがあります。
これはスタジオジブリの名物プロデューサーである筆者が自ら筆を執って書いたドキュメントタッチのエッセイです。
内容をざっとかいつまんで申しますと、第1章はスタジオジブリ草創期から千と千尋の神隠しの頃までのジブリの考え方。第2章では今までのジブリ作品と制作者達の紹介やエピソードの披露。第3章ではジブリに関わり、影響を与えてきた人達の紹介、4章では鈴木氏の遍歴といったところになります。
その一つ一つが非常に示唆に富んでいて、なおかつ面白い。僕は久しぶりに大笑いを何度もしました。やはり真剣であるからこそ、それが逆に滑稽になっていく、という感じでしょうか?特に徳間康快社長をはじめとする各界著名人との交遊録や、スタッフの何気ない会話たとえば「千と千尋の神隠し」ではキャバクラ好きのスタッフの話した何気ない話を宮崎駿監督と膨らませて「300億円の話」にしていくくだりは読んでいて非常に面白かったです。
さらに、自らが私淑する堀田善衛、加藤周一などから受けた衝撃や、実際にあって受けたインスピレーションも氏の軌跡を物語るもので、欠かせないものなんだということを知りました。筆者の持つあの飄々とした外見からは想像もできないくらいに熱い「思い」というものを感じ取っていただければ幸いに思います。 -
読んでみたい本やキャリアの歩み方、世の中の捉え方など興味の幅が広がる本
-
鈴木敏夫さんの思想や生き方が詰まっている本。エッセイ?だと知らず読み始めたが、とても面白く読む手が止まらなかった。
違う世代の方の思想や人生を知ること。私自身も成長し考え方が広がった。素敵な引用文や作品、映画が登場し、この本を図書館に返してしまうのが惜しい。
ジブリ映画の発案過程、製造過程、関わった人々。音楽や映像を含めて今すぐ観たくなった。
本の厚さが気にならないくらいスラスラ読み進められた。私も色々な本を読み、吸収したくなった。ここに登場する作品を私も読んでみたい。 -
何かやってやろうという今の私達の世代にはない様な気概やその時代の雰囲気を感じた。その気概により今のジブリがあるのだろう。
-
タイトル借りした本。
鈴木さんという方の考えとか経験が読めて興味深かった。 -
ジブリプロデューサーの鈴木敏夫の記事や、インタビュー、日記等をまとめたもの。
宮崎駿、鈴木敏夫とジブリについての話が大半だが、両人が常人ではないことが再認識できた。狂人。
人生と命を賭けて作品を生み出すというのはこんなに大変で素晴らしい日常なのかと羨ましい気持ちが生じる一方で、私には耐えられないそうにないとも思う。ジブリが好きな人には必読書な一冊。 -
他の鈴木さんの本と比べると少し難しいです。
元々出版社にいた事あってさすがに文才ですね -
感想
黒子の目線。光が当たっている面にばかり注目が集まる。しかしその裏では調和を保ち全体を調整する人がいる。派手じゃない役割も大事。