人権を創造する

制作 : 松浦 義弘 
  • 岩波書店 (2011年10月14日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000234986

人権を創造するの感想・レビュー・書評

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  • フランス革命の歴史家リン・ハントによる「人権」の歴史。
    人権がどのように発明(inventing human rights)され、どのように発展し、どこでその流れが反転しつつも、徐々に実現していったか、いっているか、に関するなるほどな本。

    リン・ハントの1984年にでた最初の本『フランス革命の政治文化』は、衝撃で、すごく知的な刺激をうけた。さまざまな歴史的文書を地道に読み込んだ定性分析にくわえ、統計データの定量分析が組み合わされていて、で、こうしたしっかりしたベースの上に、するどい、大胆な解釈が乗っている感じ。定性と定量と創造力が一緒に発揮された本って、希有だと思う。当時、アメリカで政治学をお勉強中の私は、分析の理想として、尊敬していたな〜。

    というリン・ハントの2007年の著作。

    以前の本に比べると、学術書と一般向けの歴史書の真ん中くらいの位置取りかな?人権思想を著者の得意分野のフランス革命の前後を中心に分析していく。ここのプロセスは、お手の物という感じで、納得感は高いが、まあそんな感じかな、というか、やや、以前にくらべると、ツメが甘い感じも?(一般的な読者を想定している?)

    で、人権思想が急速に一般化すると同時にそれに対抗するためのパワーがでてきて、それがそれなりの理論をつくってくる、という流れの説明になってくると、かなり冴えてくる感じ。人権思想が、ナショナリズムや共産主義などの思想との対抗のなかで、二次的なものになっていく流れが説得力をもって分析されています。

    で、最後のほうは、その対象領域が、18〜19世紀の欧米世界から、その後、世界的な広がりと現在までの流れの説明になって、良い意味でのスピード感とパワーがあり、エキサイティングでした。

    後半のほうは、著者の専門領域から、やや外れているのだろうけど、なんというか、個人の思いをグッと語っている感じがしたな。

    今、ちょっと「自由」と「人権」みたいな西欧的な価値が個人的な関心テーマなんだけど、これまた昔から気になっていたナショナリズムの方面も読んでみようかな。

  • タイトルから想像される通り、1789年フランス人権宣言が中心的対象の研究。しかし、アプローチの仕方は従来の人権宣言史とはいささか異なるものである。ハントはアメリカ革命やフランス革命における「人権」の宣言が、当時の人々にとって説得力を発揮するための条件として、18世紀中葉から後半にかけての人間観の変遷をたどり直している。人間が譲渡し得ない権利を有することは「自明」であるという主張が受け入れられるためには、他人を自分と同じ人間と見なすことができるようになっている必要があるとして、ルソーの『ジュリ』やリチャードソンの小説などに対する人々の反応、カラス事件ごろからの拷問に反対する世論の高揚現象などを通じて、他人、女性や異端も同じ「人間」として見なすことができるようになった知的背景が丁寧に描き出される。さらに、人権宣言の当事者たちが抽象的な言語によって権利を規定したために、その論理的帰結を武器として、従来権利を享受できていなかった人々が権利を要求し、西洋諸国に承認させていく過程にも焦点が当てられる。オランプ・ド・グージュの「女性の権利宣言」だけではなく、ユダヤ教徒や植民地奴隷などが権利を正当に要求する運動が人権宣言のもたらした不可避的な帰結として描き出される。最後に、フランス革命後から世界人権宣言に至るまでの人権史を概括して閉じられている。スケールが大きいながらも、各章には明確な主題があり、大変読みやすい研究である。

  • 和図書 316.1/H98
    資料ID 2012100437

  •  「人権という力強い考えの誕生と発展を描いた、すばらしい歴史書」--アマルティア・センが本書の推薦の辞に掲げた一節が本書の概要を全て物語っている。
     人間の平等を謳うマニフェストは、西洋社会においては、「アメリカ独立宣言」と「フランス人権宣言」がそのさきがけとなろう。この両者に共通しているのはともに18世紀の事件だったということである。
     リン・ハントは、アメリカ歴史学会の会長も歴任したカリフォルニア大教授。専門はフランス革命だ。当時の小説から政治的パンフレットにいたるまで膨大な資料を駆使しながら、ひとびとの心と身体に生じた巨大な変化……これを「共感」(empathy)と指摘する……を浮かび上がらせる。共感を立ち上がらせるきっかけになるが読者を「泣かせる」小説という指摘だけでなく、女性の歴史家ならではといえばいいのだろうか……、男性が見落としがちな些細な出来事まで瑞々しく甦らせる筆致にも驚く。
     ハントによれば、「共感」という土壌が成立してこそ「平等」への心構えが可能となる。そして「人権」の概念も誕生する。思うに、人権とは、イデアのように先験的に実在するものではないのだろう。本書を読むと、具体的な歴史的プロセスのなかで徐々に「作り上げられた」ものだということがよくわかる。
     昨今の転倒した人権への眼差しをもういちど正視眼にしてくれる一冊ではないだろうか。

    以下はUCLAのリン・ハントを紹介したページ。

    http://www.history.ucla.edu/people/faculty?lid=535

  • フランス革命史の大家による「人権」概念についての歴史的考察。人権概念の創造において、「共感 empathy」が重要であるという指摘は面白い。「共感」が作り出されるプロセスにおいて、小説による感情移入がトリガーになっているという考察は、常に新たな歴史叙述の可能性を切り開いてきた著者ならではの発想かと思う。

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