戦争と罪責

  • 岩波書店 (1998年8月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784000236065

みんなの感想まとめ

戦争の残酷さや罪責について深く考えさせられる内容が展開されており、特に日本軍の行動に関する詳細な記録が印象的です。過去の戦争に対する理解が不足している中で、著者は兵士や軍医、憲兵の視点からの体験談を通...

感想・レビュー・書評

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  • 兵士、憲兵、軍医とそれぞれの中国大陸での日本軍兵士として、さらに捕虜での撫養収容所での個人的体験の聞き取りの記録であった。撫養収容所での話は他の書籍ではあまり詳細には記載されていないので読むべきものである。

  • 沖縄の戦争のこころの本を読んで、積読本であった本書を思い出し読んでみた。何と20年前の出版であった。この20年の間に更に過去と向き合わない兆候が進んでいる現在、改めて過去と向き合い、その事実を個々人がどのように見つめるかが、これからの私達だけではなく、後に続く人にとっても大事であることを実感する読後感であった。

  • ショッキングな本です。私は今までに過去の戦争に関する本をほとんど読んできませんでした。日本軍も中国でかなりひどいことをやってきたということを漠然と知ってはいましたが、これほどとは考えてもいませんでした。そしてその犯罪行為に関わってきた多くの人が罪の意識を持っていない、逆に反省して悔い改めている人たちが反感をかっている、という現状も知ることができました。被害を受けた人あるいはその家族、犯罪を犯した人々がどんどん少なくなっていきます(亡くなっていく)。だからといって戦争があったという事実は消えないのです。ぜひ全ての人にこの本を読んでいただき、戦争中どのような残酷なことが行われていたのかという知識を身につけておいてほしいと思います。決して忘れてはいけないことだと思います。そして二度と同じ過ちを犯さないようにしたいものです。本書は岩波「世界」(という雑誌)で連載され、後に単行本になったものです。定価は2300円になりますが、ぜひ読んでみて下さい。(2015年現在、文庫になっていないのだろうか。岩波さん しっかりお願いします。すみません、えらそうで。)2022年岩波現代文庫になっていたようだ。良かった。

  • 図書館で借りてきた本。

    6月の終わりに新宿・ニコンサロンで行なわれた「重重‐中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の女性たち」写真展を観に行った感想をブログ及びmixi日記に「わたしはどうしてこの人たちが個々に取り残されたかということを全く知らない」と書いたら、マイミクさんの一人が「このような本がありますよ」と言って教えてくれたうちの一冊だ。

    この本を書いたのは野田正彰という精神科の医者が、元軍医、将校、特務、憲兵だった人たちに対して、中国で自分が行なってきたことはどういうことだったか、戦争が終わって中国に戦犯として収容されていたときにこの人たちがどのような経緯で自分の行なってきたことに対して反省したか、その後日本に帰ってきてどのような生活を送っているのかを丹念に取材し、そしてときには厳しく加害者の精神分析を行ないながら加害者とぶつかっていく、そのような本である。

    1冊17章あるのだが、一人の話がおおよそ1章~3章に渡って書いてある。わたしは本を読むスピードは結構早いのだが、この本に限っては、1人のエピソードを読むたびに頭がいっぱいになって、胸が苦しくなるので、途中何回も休みを挟まなければならなくなったり、日を改めたりしなければならなかった。それくらい「濃い」本だった。

    http://rontako.blog39.fc2.com/blog-entry-1621.html

  •  バブル経済に酔い痴れる人々を精神科医特有の視線で巧みにスケッチしている。「多幸症」とは言い得て妙。確かに浮かれていた。騒々しいほどに。若い女性は何も考えずに、ワンレン、ボディコンというスタイルで踊り狂っていた。ああ懐かしや、ディスコのお立ち台。まさに、精神のメタボリックシンドローム。

     <a href=\"http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20090118/p1\" target=\"_blank\">http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20090118/p1</a>

  • 日本人として読んでおくべき本。

  • きつかった。とってもきつかった。
    精神病理学者である著者が、将校・軍医・憲兵など当時さまざまな立場で従軍した当事者たちへの聞き取りをもとに、彼らが罪の意識をほとんど「持っていない」という愕然とする事実を解明していく。

    聞き取りの対象と内容
    主な聞き取り対象は、遼寧省撫順市にあった中華人民共和国の撫順戦犯管理所に収容された戦犯認定された人々である。
    個人としての告白を読んでいるのだが、中国を侵略したときの虐殺、拷問、生体実験の描写があまりにも凄惨で何度も読む手が止まった。「ムカムカしたから」という理由だけで村人を機関銃で撃ったり、女性と見るや仲間と連れ立って強姦したり。あまりにも野蛮な行為の数々に、「信じられない」という言葉しか出てこない。

    撫順戦犯管理所という場所
    収容されていた戦犯たちは、自分たちが中国人に対して行ってきたことを知っているがゆえに、今度は自分たちがどんな仕打ちを受けるのかと戦々恐々としていたという。自分たちがやってきたことを棚に上げて、いったいどの面を下げて、と言いたくなる。だがそういう認知のあり方こそが、戦時中に作られてきたものなのだろう。
    実際の撫順戦犯管理所は、人道主義政策に基づいた場所だった。強制労働はなく、食事・運動・文化・学習あらゆる面での保障があり、「相手の文化を尊重せよ」という方針から、中国人たちが食べ物に困っている状況の中でも収容者には白米が与えられていた。肉親や友人を日本軍に殺された職員たちが大勢いたにもかかわらず、人間としての尊厳を奪いつくした日本人に、尊厳を保ったまま生活できる環境が整えられていたのである。

    罪の意識の欠如 なぜ彼らは「悪い」と思えないのか
    最も衝撃的だったのは、聞き取りに応じた当事者たちに罪の意識がほとんどないことだった。正確に言えば、「悪いことをしたとは思っているが、あれは命令されてやったことだ、状況的には仕方なかった」という主張をする人が多かった。
    著者はこれを「行為者としての責任の放棄」として批判する。「上官の命令を承ることは、直ちに朕の命を承る義なり」という軍人勅諭を盾に、「悪いのは命令者であり、自分たちはむしろ被害者だ」と言う。
    この構図は旧兵士だけの問題ではないと著者は指摘する。敗戦後の日本人の多くも、戦争中の残虐行為を知るたびに「悪いことをした」と一瞬思いながらも、同時に「それが戦争というものだ」と思考の上で防衛線を張り、「それ以上言わせないぞ」と過剰に身構えてきたのではないか。
    「寝た子を起こすな」「国益を損なう」「賠償を請求されたらどうなる」
    そうした感情的な過剰防衛を、戦後世代もそのまま引き継いで生きてきたのではないか。そしてこの論調は最近すごく聞き覚えがある。

    感情を取り戻すということ
    著者は、撫順戦犯管理所での収容者たちの変化にひとつの手がかりを見出している。自分が殺した相手に「顔」があること、その人が1人の人間であり個人であると認識して、その苦しみや悲しみを想像できるようになること。それは同時に自分自身も苦しみや悲しみを感じる人間であることを取り戻すことだと著者は分析する。
    一方で著者は日本人には悲しい、苦しいという感情が鈍麻しており、相手に対して「かわいそうだ」「むごい」と感じる力も自分自身が「つらい」「苦しい」と感じる力も弱いという結論を出している。自他の悲痛に対して無感覚になってしまっている。

    現代への問い
    これはウィークネスフォビア、自分自身の弱さやダメさを直視することへの恐怖と呼べるものではないだろうか。弱さを見ないようにする、そんなものはないと思い込もうとする思考が染み付いた先にこの感情鈍麻があるように思える。
    著者は戦争に直接かかわらなかった世代も老兵たちが犯した過ちと、それによって背負った罪悪や苦しみに共感することで、感情をより豊かに耕すことができると言う。知識と同様に、いや知識以上に感情は大切に育てられなければならないと主張している。
    当時の日本人だけの問題ではない。おそらくこれは今の日本社会にも続く性格だと思う。だとすればこの本が問いかけていることは、過去の清算にとどまらず、今を生きる私たち自身への問いでもある。
    この本が刊行されたのは1998年である。2026年のいま、さらにその問いが重要な情勢になっている。
    他者の痛みや悲しみを知覚するには自分の痛みや悲しみを知覚できなければならない。
    自分の感情を耕すことがまずその一歩になる。

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著者プロフィール

野田正彰(のだ まさあき)
1944年、高知県出身、北海道大学医学部卒業。長浜赤十字病院精神科部長、神戸市外国語大学教授、ウィーン大学招聘教授、京都女子大学教授、関西学院大学教授など歴任。精神病理学者、作家。文化変容、戦争と革命のなかで生きる人間を精神医学者として考察してきた。著書『狂気の起源をもとめて』(中公新書)、『コンピュータ新人類の研究』(文藝春秋、大宅壮一ノンフィクション賞)、『戦争と罪責』『犯罪と精神医療』『喪の途上にて』(講談社ノンフィクション賞)、『災害救援』(以上、岩波書店)、『庭園に死す』(春秋社)、『戯曲 サビーナ』(里文出版)、『虜囚の記憶』(みすず書房)、『社会と精神のゆらぎから』(講談社)他。

「2025年 『過ぎし日の映え 続 社会と精神のゆらぎから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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