生成文法の企て

制作 : 福井 直樹  辻子 美保子 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000236386

感想・レビュー・書評

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  • 1980年と2002年に行われたインタビュー。
    専門的な内容を含むので、生成文法に関するある程度の知識は必要。
    チョムスキーの科学観が率直に語られているので、生成文法や統語論の入門を修めた学生が読むのにちょうど良いと思う。チョムスキーの論文を読む前に本書を読んでおけば、いっそう理解を助けてくれるはず。
    特に1982年に行われたインタビューでは、標準理論から原理・パラメター理論に至るまでの主要な研究が取り上げられているので、生成文法理論の歴史を概観することができる。

    “なぜエレガントな答えを求めるのかと。……我々が持っているエレガンスという概念には何か真理に通じるものがある、というほとんど神秘主義的ともいえる信念のせいでしょうね” pp88-89

    “『諸相』第一章において、方法論に関する全体的な議論がありますね。もし私がいつか『諸相』を書き直すとしても、この部分の議論は、ほとんどいかなる面においても書き直すことはないと思います” p152

    “説明ということの方がデータの範囲を全体に拡げることよりも、ずっと重要であるというように感じてはいます” p192


    “一九七〇年代後半頃になってパラメータ化された原理を用いるアプローチの形を取ってきたわけですが、このアプローチは、おそらく、何千年にもわたる長い言語学の歴史において唯一の真に革命的な発展なのだと私は思っています。生成文法の誕生に関わる初期の研究よりもずっと革命的なのです” p270

  • *****
     現代における脳科学と生成文法との関係は,正にメイナード=スミスが言う,脳への神経生理学的アプローチとモデル論的アプローチの関係に他ならない。生成文法は言語機能についてのモデルを作ってその内実を明らかにしようとしているのであり,脳科学は主に神経生理学的レベルで脳が持つ言語機能にアプローチしているのだと言える。こう考えれば,生成文法と脳科学との「関係」という言い方は不正確あるいは誤解を招きやすいいい方であり,生成文法は正に総合的脳科学の一部門に他ならず,既存の脳科学とは脳に対するアプローチがことなっているにすぎないのである。(p.26)

    生成文法は,数多く存在する神経回路のうちの言語機能という回路に関して,一種の計算論的モデルを提出しようとしているのであるが,個々の回路を構成している成分について完全に明確な理解が得られているとはとても言えない現状では,生成文法が提起する膨大な経験的発見を脳回路に関するモデルとして直接的に援用しようとするのは難しいかも知れない。現時点において,生成文法研究者と脳科学研究者との間の意思疎通があまりうまく行っていないように見えるのは,(日本の大学の硬直的な学部・学科制度の影響を大きいのかも知れないが)脳科学研究者が,今述べたような事情により,生成文法の成果にほとんど注意を払わないということが主要な原因であるように思う。結果として,生成文法を中心とした言語学の成果に全く無知な脳科学的研究が言語に関しては多々見られることになり残念である。また逆に,生成文法研究者の側でも,自分たちの分野が全体として脳の一側面(言語機能)に関するモデルを提出しようとしているのだということを,脳科学者に向かって積極的に発信せず,言語学内部の技術的な研究にのみ集中しているという傾向が見られる。このような傾向も,生成文法と脳科学との有意義な相互交流を妨げている一因であろう。
     このように,生成文法と言語を扱う脳科学とが順調に交流を深め相互に補完し合いながら言語機能の本質を探究しているとは,現段階では言いがたいが,右でも強調したように,この二つは決して相反するものではなく,同じ研究対象についての二つの異なるアプローチにすぎない。メンデルの研究と現代遺伝学との関係を見てもわかるように,あるいは十九世紀の化学とボーア等の量子論の関係によっても例示されているように,抽象的モデルから得られる洞察は,その「物理的基礎」を追及する上での重要な指針を与えてくれるものである。言語学と脳科学のように,伝統的な学問区分及び研究文化を異にして発展してきた分野同士の交流・相互理解は,データの提示方法や「実験」のやり方を初めとする種々の「研究習慣」の相違ゆえにそう簡単には行かない。自らの分野の「習慣」に捕われることなく,相手の分野の成果を学ぼうとする態度が双方に要求されよう。言語を研究する脳科学者が,生成文法が発見し理論化してきた言語事実から深く学び,また生成文法研究者が,脳科学者が明らかにした神経生理学的過程の現実をモデル作成の参考にするような共同研究体制を構築することが,今,何よりも求められている。(pp.26-28)

    本書収録の二つのインタヴューにおいて,チョムスキーは,科学者としての自らの側面に関してはほぼ語り尽くしていると言ってよく,そうすることによって,人間を対象にした科学に携わる者にとっては滅多に得られないインスピレーションを与えてくれる。そこから何を学ぶかの選択は,もちろん,個々の読者に委ねられている。(p.34)

  • 1982年と2002年に行われた、チョムスキーへのインタビューで構成された本。ノーム・チョムスキーは以前ちらっと読んだけど、よくわからなかった。
    今回は巻頭に、訳者によるチョムスキー思想の概略が載っており、これで少し理解できた。
    インタビュー本文を読んでいくと、言語学の専門的な術語が嵐のように繰り出され、やはりよくはわからないものの、生成文法なるもののイメージが漠然とながらつかめてきた。
    人文科学の一分野である言語学は、チョムスキーの脳科学への接近により、一気に自然科学と融合しようとしているかのように見える。
    「自然科学主義」を、ひとつの考え方に過ぎないとして批判したメルロ=ポンティ(なお、彼は自然科学を不要だとも役に立たないとも言ってない。ただ単に、自然科学的世界観の中に閉じこもることを批判していただけだ)とは時代が変わっているのか。
    チョムスキーの思想(学問)は、なかなか凄いのかもしれない。もうちょっと勉強してみたいと思った。

  • 内容忘れたけどよかったよ。(笑)

  • 訳者による序説が特に優れていると聞いて読んだ。
    噂通り、序説で生成文法の歴史から一体何を最終目標に目指しているのかが一通り分かる。
    本章の方は生成文法の初期から計三回に渡って行われたチョムスキーとのインタビューの翻訳。
    話題が多岐に渡っている点もあって、全部は分からなかった。

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