セネカ 現代人への手紙

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 60
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000236461

作品紹介・あらすじ

古代ローマから現代日本へ贈られた精神の治療薬。善く生き、善く死ぬために-。

感想・レビュー・書評

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  • これは中野孝次の遺書である。

    あとがきを読んだ感想です。
    彼がセネカ現代人への手紙にあとがきを書いたのが2004年4月。食道ガンで亡くなったのがその三ヶ月後、7月の事でした。

    死の影が忍び寄る中、本著セネカの哲学を思い起こし、その恐怖を飲み込む姿。知識を知識として終わらせず、知恵として活かしている姿に感服します。
    この本はセネカの軽快な語りと、中野さんの絶讃。そして、最後のあとがき。この三本どれにも価値があります。ぜひ読んでいただきたい。

    前作、セネカの言葉を読んだときには彼の熱さに辟易していました。
    しかし、二冊目に至る頃にはそれも慣れ、いっそカジュアルで情熱的な文体を楽しめるようになりました。
    岩波書店といえど、アカデミックなものだけではないのだ。もやっとした先入観が晴れる思いです。


    セネカの入門書として。そして、その哲学を最期に実践した文学者の軌跡を追う一冊として、私の本棚に加えます。

  • 自分自身への嫌悪を引き起こすのは常に何もしないのらくら暮らしである。

    私はその日その日が我が最後の日と覚悟して生きている。

    哲学は理論的でもあるが実践的でもある。なので私はそれを探求しているのであって、君たちに忠告したり、警告したりするだけで満足する者ではない。

    何であれ、欲望によって得たものは全て他人のものであると考えよ。また運命が君のためにしてくれたことも君のものではない。他者から与えられたようなものは直ぐに取り戻されるものなのだから。

    精神的に自由になりたいなら、貧乏になるか、貧乏の真似をせよ。

    奴隷状態が人間を捉えていることは滅多にない。大抵は人間自らが奴隷状態でいることを掴んで放さないのだ。

    荷物を背負ったまま泳いで助かる可能性は限りなく低い。

    富の軽蔑こそ富へと達する最短の途である。

    どんな処に死が待ち受けているか誰にも判らない。ならばこちらから待ち受けるべきである。

    人は誰でも真に自分のもの~それは魂とそこから成熟した理性~以外は自慢してはならない。

    私は大きくて何の不安もない智慧の大国を知っている。そこでは所有物はすべての人のものであるという意味において全てを所有している。

    争いは獲物が存在するから起こる。しかしそれを得た者が最後まで幸福だった試しは一度もない。

    運命に身を委ねたる者は大いなる魂である。運命には逆う者、世界秩序について悪しく思う者、自分自身でなく世界を改良しようと思う者は墜落した人間である。


  • 我々が意を用いねばならぬことは、長く生きるということではなくて、満足して生きるということだ。
    なぜなら、君が長く生きるには運命が必要だが、満足して生きることは君の心次第だからだ。

    充実したものであるなら、人生は十分に長い。
    人生が充実したものになるには、心が心特有の善を発達させ、自分が自分自身の主とならねばならない。

    無為にただ過した生ならば、八十年生きたとて何になろう。
    そんな人間は生きたのではなく、人生に滞在していただけだ。
    遅く死んだのでなく、とうに死んでいたのだ。
    八十年彼は生きた。問題は、どの日から彼の死を数えるかだ。


    人生はその長さではない。
    己の所有するものは本当は自分のものではなく、肉体すらも運命に左右される。
    奪われることもなく与えられることもないもの、自分の魂、理性、自分自身に向かって、一日一日を生きること。
    そのような人生こそが生きるということなのだと学んだ。

  • ローマに生きた人なのに、「そうそう!」って共感しちゃう箇所がいっぱいある。

  •  
    ── 中野 孝次《セネカ 現代人への手紙 20040528 岩波書店》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4000236466
     
    …… 当分は、新しい革袋にむらがって、みんなが古い酒を酌み交わす
    だろう。新しい酒は、たぶん僕の生存中は開発されないにちがいない。
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19960605 早くセネカ!
     
    (20100727)

  • 梨木香歩さんの「村田エフェンディ滞土録」を読んで、セネカの言葉が印象に残っていたので、書店でこの本が目に入ったとき、思わず買ってしまいました。
    哲学というととっつきにくくて、小難しいという印象があるけれど、セネカの言葉は実際的でおもしろく、なおかつ深遠です。キャッチコピーにも似て、まっすぐに人の心を捉える言葉ばかりで、お勧めです。

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著者プロフィール

1925-2004。千葉県生まれ。東京大学文学部卒、國學院大學教授。作家、評論家。『実朝考』『ブリューゲルへの旅』『麦塾るる日に』『ハラスのいた日々』『清貧の思想』『暗殺者』『いまを生きる知恵』など著作多数。


「2020年 『ローマの哲人 セネカの言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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