客人(ソンニム)

著者 : 黄皙暎
制作 : 鄭 敬謨 
  • 岩波書店 (2004年4月27日発売)
4.20
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000237086

作品紹介

故郷への旅の途中で次々と現れる亡霊たち。彼らが呟くのは、半世紀前、朝鮮半島で起きた凄惨な戦争の生々しい姿である。それは南北米中の軍同士の戦いであっただけでなく、村人同士、隣人同士の血で血を洗う殺し合いでもあった-ピョンヤン、ニューヨーク、ベルリンで実在の人物に取材し、ソウルの獄中で構想した、衝撃の小説作品。

客人(ソンニム)の感想・レビュー・書評

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  • 世界の小説を読む第12冊目韓国
    「客人」黄晳暎
    朝鮮戦争時に北朝鮮のある村で起きた村民同士の大量殺戮事件を丁寧な取材を元に描いた、事実に基づく本作。朝鮮戦争から何十年も経った後、ニューヨークに移住していたヨセフ牧師が生まれ故郷である北朝鮮に帰郷する。そこでは大量殺人を犯した兄の亡霊と、彼の被害者の亡霊達が次々と現れては立ち消え、それぞれの物語を語る。作者のあとがきが一番分かりやすいので引用するが、元々韓国で「客人」とは一刻も早くたち去って欲しい天然痘の事を指していたが、同様に西から来たある種の「病」であるキリスト教とマルクス主義の対立が引き金となって起きた事件を表すに相応しいとしてつけたそう。小説全体も天然痘の厄災から逃れるための儀式の十二の形式に基づいて展開される。全く知識のない歴史的事件の話だったので、興味深く読めた。それにしても今の所世界を読むシリーズでピックアップした本がどれも、戦争の悲惨さを扱っていたり、ガルシア・マルケスに影響を受けていたりしているのが面白い。

  •  『客人』という題名に、作者のやるせない思いが溢れている。むかし西域から渡ってきて災厄をもたらした天然痘を一刻も早く帰ってもらうべき存在として、朝鮮民衆は「客人(ソンニム)」と呼んだ。朝鮮の近代化の中で入り込んできたキリスト教もマルクス主義も、天然痘と同様、朝鮮の民にとっては「客人(ソンニム)」であった。
     条件のないところに外来種が生育することはない。キリスト教が朝鮮社会に入り込み、マルクス主義が根付く条件はあった。キリスト教もマルクス主義も植民地下の強権支配に抵抗する拠り所となった。自生のものではなかったが、自家中毒を起こすほどの劇薬ではなかった。事情が変わったのは戦後である。南にアメリカ軍は進駐し、北にはソ連軍がやってきた。自家育成されていた種が大量の人口肥料を与えられて、醜悪なものへと変異を遂げた。
     南において、この変異は反共集団(キリスト教徒を含む)の蛮行を引き起こした。保導連盟事件、済州島事件。そして北側でも反共キリスト教集団が虐殺に手を染めた——この小説で描かれた信川虐殺事件がその一つだ。もちろん虐殺の汚名は南の集団の専有物ではない。北の共産主義者も同じように蛮行に走った。同族が相食むおぞましさを、著者は一人の登場人物の口を借りて次のように表現している。
     「どうしてこんなにまでお互いに憎み合うようになったのか、それが不思議でね。植民地時代の日本人でもあれほど憎んではいなかったはずよ」
     この小説が、信川事件の凄惨さをこれほど生々しく強烈に読者に伝えることができたのは、この世にいない亡霊を登場させ、それも互いに対立し合っていた「人民」側と「クリスチャン」側の人物同士を語り合わせるという手法をとったからだ。非リアリズム手法がリアリズムを際立たせる効果を生んでいる。
     小説の内容といい形式といい、読む者を鷲掴みにする見事な作品だ。

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