総合検証 東日本大震災からの復興

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感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000237444

作品紹介・あらすじ

東日本大震災から10年。甚大な被害からの復興の道のりは、生活や産業の再建だけでなく、人々の意識や災害へのビジョンの変化をもたらした。10 年を経た復興の現状、そして、阪神・淡路大震災からつながり発展し続けてきた危機管理と災害対応、復興政策のあり方を示す決定版。危機管理・防災担当者必携。

感想・レビュー・書評

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  • 「津波からの復興は50%にすぎない」3・11から10年…復興構想会議の御厨貴が語る日本復興のリアル | 文春オンライン
    https://bunshun.jp/articles/-/43855

    3.11から10年 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/news/n39628.html

    総合検証 東日本大震災からの復興 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b556123.html

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/542168

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/757193

  • 東2法経図・6F開架:369.3A/I61s//K

  • 東日本大震災復興構想会議の中心メンバーをはじめ、防災工学、都市工学、社会学、福祉、教育など様々な分野の専門家が、大震災の被害、避難や発災直後の被災地支援から、その後の復興事業、産業や生活の再建、さらに震災の記憶の保存に至るまで、各々の専門分野から震災とその後の10年を振り返り、検証した研究が集められている。

    これほどの広域にわたり甚大な被害を及ぼし、さらに津波による都市基盤の破壊、原子力発電所の事故による放射能汚染といった複合的な要因を含む災害であるだけに、様々な観点から分析し、その結果を後世に残すことが大切であろう。

    また、復興のプロセスが10年で終わったとは言えず、いまも道半ばであることは間違いないが、ここまでに何が進み、何が進んでいないのか、また初動からその後の計画、実施に至る一連の過程の中で、何が上手く行き、どのような点は改善していく必要があるのかといったことを、客観的に振り返ることは、復興のプロセスを進めていくために必要なことであると思う。

    そういった意味で、このような専門的な視点からの振り返りがきちんと公表されることの意味は、非常に大きいと感じた。

    2016年から4年間にわたって行われた研究の成果をもとにしているということで、それぞれの研究はダイジェストとして紹介されているものの、全体を概観し、この複合的な災害とその復興を振り返るためには、とても参考になる本だった。

    いくつか、印象に残った指摘があった。まず、福島第一原子力発電所の事故に対する初動においては、リスクコミュニケーションに課題があったということがよく分かった。

    これほどの規模の事故を想定していなかったということはあるであろうが、SPEEDIによる放射性物質拡散のシミュレーションが避難者への情報提供に使われなかったこと、政府が「メルトダウン」という言葉を使うのを避けたことにより、実際の危機が正確に伝えられなかったことなどは、結果的に避難者を危険にさらし、その後の政府との信頼関係においても、禍根を残すことになった。

    そもそもシビアアクシデントを想定外にするべきではないし、安全神話を作ってきた政府と東京電力の立場が、リスクコミュニケーションの重要性を軽視する結果につながったのであるとすれば、この点は今後根本的に取り組み方が見直されるべきであると感じた。

    都市基盤と生活基盤の復興においては、ハードの復興とソフトの復興の間での達成度の格差が印象に残った。

    都市基盤の整備については、過去の震災の教訓を踏まえ、様々な復興支援メニューや制度の運用がなされ、高台移転、現位置嵩上げ、旧市街地の復旧など、様々なタイプの復興事業が、被害の状況、防災上の特性、地元の意向を踏まえて取り組まれた。また、みなし仮設や住宅再建支援の制度など、被災者への住宅の供給の面でも、以前より柔軟で多様な手法が試みられている。

    過去の大規模災害からの復興の教訓を踏まえ、これらの制度が少しずつでも改良されてきているのは、よいことであると思う。ただ、これらの事業は非常に時間がかかり、特に嵩上げ工事については着手するまでにも、そこからの工期においても、非常に時間がかかっている。そして、新しく整備された市街地に帰還する人の割合は、やはり事業の期間に反比例していくのは厳然たる事実である。

    これらの結果を踏まえて、時間軸の中で復興メニューを考えて行くこと、そして適正な事業の規模や整備のメニューを決めていくことが、大切であると感じた。これまでの大規模災害でも知見が積み重ねられてきたことではあるが、今回もしっかりとした反省の積み重ねが必要であろう。

    都市基盤の上に整備される様々な施設については、地元自治体の首長のビジョンが非常に大きいように感じた。生活の拠点として住宅をどのような形で整備するか、また商業施設は働く場をどのように整備するかというのは、その地域の人口構成や生活圏、産業のあり方をよく知る地元のリーダーシップのもとに決めていくべきなのではないかと感じた。

    ベッドタウンと漁村と中心市街地では、どのような施設が求められるのかは異なる。地元に暮らす人々にとって生活のリアリティのある都市の姿を描く力が求められていると感じた。各首長へのヒアリングなどからも、それぞれの首長の独自の考えが伺われた。

    また、産業の再生という意味では、特に農業・漁業を中心に復旧までの時間がかかり、その間に市場を他の地域に奪われたり、担い手が各地に散らばってしまうなど、産業の基盤が決定的に失われてしまった部分が大きいと感じた。産業の再生はハードの再生とは異なり、まだ緒に就いたばかりという印象を受けた。

    最後に、東日本大震災からの復興は、それまでの大規模災害からの復興とつながっているのだという点が、大きな教訓であると感じた。特に阪神淡路大震災からの復興過程で得られた教訓やネットワークをどれだけ活かすことができたかは、今回の復興において大きな影響を与えていると感じた。

    被災地自治体に対する全国からの自治体職員の支援においても、過去に震災を経験した兵庫県をはじめとする関西圏の自治体や、中越地震の経験を持っている自治体からの支援は、迅速であり有効なものが多かったようである。また、それらの災害を踏まえて日ごろから防災協定を結んだりして交流をしていた自治体との間での協力が、効果的に働いていた。

    また、義援金の配分、政府と県庁、基礎自治体の間の連絡調整といった点についても、引き続き課題はあるが、阪神淡路大震災を踏まえて作られた総合調整の制度がなければ、より大きな混乱が生じていただろう。

    日本が、災害が多発する期間に入ったと言われている中で、それぞれの災害から得られた教訓を制度の改良やネットワークの構築といったかたちで、次の災害時に機能する備えづくりに活かしていくことが、非常に大切であると思う。

    災害はつねにやってくることであり、災害への備えや発生後の復興のための研究は、たえざる蓄積が必要であると思う。また東日本大震災の復興は現在も道半ばである。そのため、このような研究が今後もしっかり継続され、公表されることを期待したい。

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