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Amazon.co.jp ・本 (222ページ) / ISBN・EAN: 9784000237451
作品紹介・あらすじ
「イエスは黒人なのだ! ブラックパワーは福音だ」黒人神学の泰斗、ジェイムズ・H・コーンに学ぶため、二七歳の筆者はNYにあるユニオン神学校の門を叩いた。教室にさざめいたハレルヤ。ブラック・ライヴズ・マターという仲間たちの叫び。奴隷制以来、四〇〇年に及ぶ苦難の歴史に応答することはできるのか? 魂をゆさぶる言葉の旅。
みんなの感想まとめ
多様な視点から黒人神学を探求する本書は、著者のニューヨーク留学を通じて得た深い洞察と感動を伝えています。ジェイムズ・H・コーンの教えを受け、著者は「ブラック・ライヴズ・マター」運動の核心に触れ、その歴...
感想・レビュー・書評
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2015年、ニューヨーク。ジェイムズ・H・コーンの著作を通して黒人神学から強烈な影響を受けた著者は、コーンが所属するユニオン神学校の門を叩く。トランプの大統領就任やブラック・ライヴス・マター運動でアメリカ社会が激動に揺れるなか、黒人差別とキリスト教の歴史を学び、神学の意義を問うた日々を綴ったエッセイ。
コーンの問いかけはキング牧師とマルコムXの対比から始まり、マルコムを理解しなければキングをも捉え損ねるとゼミ生たちに忠告する。本書はキングかマルコムかと言えば完全にキング的方法論で書かれている。どこまでも己の学びと反省に話が収斂していって、読者には居心地の悪い思いをさせない文章だ。
だがそれでいいんだろうか。私は黒人差別に関する本を読むたびに、藤本和子の『塩を食う女たち』でトニ・ケイド・バンバーラから、アジアン・コミュニティはブラックカルチャーから言葉を借用して済ませてしまっている、と指摘されていたことが頭をもたげるのだ。他のアジアの国のことはわからないが、日本においては様々なマイノリティの問題について自分たちで言葉を創りだすことができていない現状がある。著者は勿論そういう問題意識を持っているからこそ、コーンの言葉から「それで君の声はどこにあるんだ?」をタイトルに選び、自分自身に問いかけ続けているのだろうけれど。
本書に登場するもう一人の教授コーネル・ウェストは、私にはコーン以上に鮮烈だった。黒人霊歌の「グローリー、ハレルヤ!」をめぐる問い、アメリカにおける黒人の歴史を表す「土曜日の霊性」という概念、十字架にかけられたキリストと木に吊るされた黒人奴隷の共通性。ヤロスロフ・ペリカンの『イエスの二千年』では南北戦争、インド独立、公民権運動では「解放者としてのイエス」が掲げられたとしていたが、つまりはイエス自身が虐げられ苦しめられる弱者だったからこそ、同じ苦しみのなかにあるコミュニティの解放のシンボルにもなれるという逆説がここにはある。
極限状況で神学に何の意味があるのか。教会に通っていた子ども時代から不思議に思っていた問いではある。けれどコロナ禍を経て、私自身は宗教を持つ共同体と持たない共同体の差を歴然と感じた。神とは内なる他者だ。人間がいつも神の声を正しく聞き取れるわけではないが、その努力によって目の前の人に手を差し伸べられるようになることもある。他者の声に耳を澄ますことと自分の声を見つけだすこと。二つを高い次元で両立させるには宗教が必要なのだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
27歳でニューヨークの「ユニオン神学校」に留学し、「黒人解放の神学」の提唱者ジェイムズ・H・コーンに師事した著者が、コーンから学んだことを振り返るエッセイ集である。
私は黒人神学どころか神学そのものに無知だが、それでも本書には感動した。
留学記としても、風変わりな青春文学としても楽しめる。が、それだけではない。
これは、「ブラック・ライヴズ・マター」運動の盛り上がりのなか、その重要拠点となったユニオン神学校に身を置いた著者が書いた、ヴィヴィッドな“現場報告”でもあるのだ。
「ブラック・ライヴズ・マター」に影響を与えた神学者であったジェイムズ・H・コーンの思い出を通して、あの運動が持つ重い意味も浮き彫りにされていく。
著者は沖縄の伊江島で、米軍基地を巡る土地闘争の中で「沖縄のガンジー」と呼ばれた阿波根昌鴻に可愛がられて育ったという(阿波根昌鴻が設立した「わびあいの里」で父親が働くため、1989年に家族で伊江島に移住)。
日本人の著者と「ブラック・ライヴズ・マター」を結ぶのは、伊江島で語り継がれた反米闘争の記憶なのだ。
そして、幼き日の著者が「おじい」と呼んで慕ったという阿波根昌鴻と、師であるジェイムズ・H・コーンの姿が、おのずとオーバーラップしていく。
著者の文章が素晴らしい。
一文一文が詩のように清冽で、心地よいリズムを持ち、メモしておきたいようなカッコいいフレーズも随所にある。
黒人神学について書かれた書ではあるが、日本人が「ブラック・ライヴズ・マター」を理解するための重要テキストになるだろう。 -
著者はNYのユニオン神学校で、ジェイムズ・H・コーンのもと黒人神学を学んだ神学者。黒人神学ってどんなものなのか学べるし、留学記としても興味深く読める。この本を通して著者が読者に分け与えるのは、黒人差別の歴史やBLM運動のあらましといった知識だけでなく、心に降り積もった静かだけど熱い思い。その沁みわたるような語り口から、自分もより善く生きたいという気持ちになった。いずれ発表されるであろう沖縄・伊江島の土地闘争についての本も是非読みたい。
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作者の熱量と真摯な探究心によって、キリスト教や神学に疎い読者にも、その言わんとしているところを垣間見させるような本。
西洋や白人の神学が歴史的にどれだけ残酷だったかを知っていれば、黒人の神学が形成されるのは必然だと感じる。黒人にとっては、自分たちを虐げてきた白人神学に対抗するには、黒人から見たキリストの視点以外に無く、聖書をもって迫害してきた相手には、聖書で対抗するのだ。
一方で、神学の乱立…自らの信条を裏付けるために聖書を利用する危機感を読後に持ってしまった。現在の仏教のように、ブッダが説いていない事柄が仏教には多すぎる。同様に、イエスや聖書当時の歴史文化的文脈を無視した神学も存在することを、クリスチャンとして危惧してしまった。
色々考えさせられる内容ではあったが、日本に馴染みのないキリスト教(日本の人口の1%未満)、ましてや黒人の神学者コーンの教えが日本の一般読者に届くのは驚くべきことだ。コーンの教え子は数多いだろうが、白人や黒人などのアメリカ人が感じて受け止める思いは、きっと日本人には馴染みづらいと思う。
しかし白人でも黒人でもアメリカ人でもなく外国人として、また日本人とは言え沖縄の伊江島で表現し難い境界線を感じて育った著者だからこそ感受し出力した文章だから、届くものが多くある本だと感じた。 -
黒人神学という馴染みのない分野がテーマと思いきや、著者の真実な姿勢に引き込まれしみじみと読んだ。「この闘いは自分を愛する闘い」「土曜日を生きる人々」などの著者の言葉と共に、アメリカにおいて黒人差別が脈々と続くことを知る。そう、マルコムXの命日も、この本を読んでいる時に迎えたのだった。また、著者が沖縄で土地を米国に奪われた人々の無念さ、諦念の前に無力な自分の立ち位置と米国で黒人神学を学ぶ立ち位置が同じだったことを思い至り、「自分の声」を求めて生き続ける決心をするところはとても心に残った。私の声はどこにあるのだろうという問いが、読後にエコーしてやまない。
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黒人神学者の元で学んだ日々の回顧録。
これほど純度を保ってまっすぐ届く言葉には滅多に出会えない。 -
神学に、あえて「黒人」と冠せなければならない不条理を感じながら読んだ。キング牧師、マルコムX、そして僕には初めての名前だったが、ジェイムズ・H・コーン。彼らの名前を辿って行きたい
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エッセイとしての成分が多めで、神学に関する部分に集中して理解することができなかった。
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金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=46942
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BC1466624X -
文章の熱にアジテートされる。だが作者が知的に誠実なため、ナルシスティックな左翼本、ポリコレ本にはならない。マイノリティに憑依してルサンチマンに溺れたいのに溺れることができない葛藤として読んだ。いま研究しているという沖縄についても結局は同じ越えられない矛盾にぶつかるのではないかと懸念するが、その矛盾に苦しむこと自体が彼の生きる目的なのかもしれないとも思う。
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自分のルーツを知り、それが歴史的になにをして、なにをされたのか、一度立ち止まり考えて、自分が今どこに立っているのかを認識しないといけないと思った。
第5章の「アリマタヤのヨセフ」で著者からヒントをいただいたような気がする。 -
あまり馴染みのない神学の話。
ちょっと文章に稚拙なところもあるけど、アツい想いは伝わってくる。
アメリカ社会に対する思いは、いろいろあるのだけれど、考えさせられるものがある。 -
女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000058098
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構成がまとまっておらず読みにくい。
アメリカで黒人神学を学んでいた著者
それは留学であり観光ではないが400年の間苦悩し続けてきた黒人の人々と恵まれてきた日本人のひとりである著者との間には境界線がある 。 境界線の手前で自分は何者かと悩む姿に共感する。
彼は台湾でのフィールドワークや育った沖縄の小さな島でのそこに代々生きてきた人々との間にもあった簡単に超えていってはならない境界線をも思いだし思考する。
神学の素養がなくてもプリンスやサッチモ、ビリーホリデーの唄やあるいは著名すぎるほどのキング牧師 マルコムXの引用に助けられながら読める。
師事したコーン教授への深い敬愛の念が終始熱く語られているためにやや空回り気味なのが気になるし残念である。ただ最後まで読ませる力はある。コロナ禍でのアジア人としてのアメリカ生活の一端が垣間見られるのは興味深い。
ところどころに美しい一文がある。
著者プロフィール
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