旅に溺れる

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000237888

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  • 本来は詩人である著者の旅をめぐる随想など、これまで各種メディアに発表されてきた種々のエッセイを集めたものだが、これまでの著者の幅広い活動を物語るかのように、多種多様なエッセンスが詰め込まれている。 第1章で取り上げられているのは、著者が民俗学的な探究心を発揮する紀行文めいたエッセイが中心。サントリークォータリーに寄稿された何編かは、珍しい日本の祭りを追った記録で、私自身も知らなかった興味深いものが多々照会されており、実にユニーク。500年来続く山形県・鶴岡の「黒川能」は、わずか100人の観光客しか観覧出来ない内輪だけの希少な祭事で、戦時中の徴兵さえ免れたという希少なもの。一方、町の人がみな狐に扮して2日間を過ごす、新潟県・阿賀町の「狐の嫁入り行列」もホントかなと思うようなお祭りだ。これらのシーンを捉えたプロ顔まけの著者の写真も素晴らしい。 第2章は、著者のメインフィールドであるアジアをめぐる思索の旅の断片。第3章は、身近な家族への思いを込めたエッセイが中心。第3章の中で、自らの文章術について語った「うどんの作り方から学ぶ文章の『引き算』」は、なるほどと思える内容で興味深かった。

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著者プロフィール

詩人。1947年奈良に生まれ大阪で育つ。同志社大学文学部哲学科中退。
ミシガン州立オークランド大学客員研究員、東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文芸非常勤講師を歴任。
詩集に『蜂蜜採り』(書肆山田、第22回高見順賞)、『明日』(思潮社、第20回萩原朔太郎賞)など。
評論・エッセイ集に『中原中也』(筑摩書房、第10回サントリー学芸賞)、『アジア海道紀行』(みすず書房、第54回読売文学賞)、『やわらかく、壊れる』(みすず書房)、『雨過ぎて雲破れるところ』(みすず書房)、『旅に溺れる』(岩波書店)、『瓦礫の下から唄が聴こえる』(みすず書房)、『東北を聴く―民謡の原点を訪ねて』『中原中也―沈黙の音楽』(ともに岩波新書)など。『新編中原中也全集』全6巻(角川書店)責任編集委員。
最新刊に、共著『大正=歴史の踊り場とは何か── 現代の起点を探る』(講談社選書メチエ)、詩集『鏡の上を走りながら』(思潮社)、英訳詩集『Sky Navigation Homeward』(Dedalus Press)。
第1回大岡信賞受賞。

「2020年 『猫には負ける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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