大陸へ――アメリカと中国の現在を日本語で書く

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000237987

作品紹介・あらすじ

アメリカと中国、二つの大陸の"現在"を日本語でつかみ取り、書くため、作家はノンフィクションという船で島国から漕ぎ出し、上陸を試みつづけている。オバマ大統領就任式の熱狂と歓喜の一日からはじまり、人種差別をめぐる少年時代の記憶が甦るアメリカ篇。上海や北京をとばして、中国の奥地、「河の南、一億人の省」に入り込み、過酷な近代を生きてきた農民、炭鉱夫、「外地人」のあふれる声に身をさらす中国篇。-二つの大陸を書くことが、現代の日本語の可能性をここまで広げた。鮮烈なる文学的ノンフィクションの誕生。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカで生まれ、少年時代を台湾・香港で過ごし、日米往還を繰り返した後、日本で作家として活躍する著者が、アメリカと中国について描いた一冊。
    全編を通してのキーワードは「黒」。アメリカ編の黒は黒人を指し、中国編の黒は炭鉱や農業で肌を黒くした黄色人や、黒ずんだ家並みを指す。経緯は違えど、共通するのは差別と格差。
    オバマ大統領の就任式で始まる序章から、徐々に内容は濃く、重く、「黒」を意識せざるを得ない流れになってゆく。圧倒的なマジョリティでありながら、黒いままであり続ける農民たちのもとへ「人民の生活が見たい」と、河南まで入っていく最終章には圧倒される。
    著者自身も現状を打破する策を持っているわけではないと思う。でも、彼らの横に立っていたいという意識はひしひしと伝わってくる。

  • エッセイのような、文学のような、まぁ随筆。オバマの熱狂と中国農村部。
    中国農村部の話がやっぱり重い。あなたたちと似た光景もあります。100年前の、南北戦争の、そんな頃にはって。彼らにも豊かになる権利はあるのか、それを僕らは受け入れられるのか、など、など。

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著者プロフィール

リービ英雄(1950・11・29~)小説家。アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ。少年時代を台湾、香港で過ごす。プリンストン大学とスタンフォード大学で日本文学の教鞭を執り、『万葉集』の英訳により全米図書賞を受賞。1989年から日本に定住。1987年、「群像」に「星条旗の聞えない部屋」を発表し小説家としてデビュー。1992年に作品集『星条旗の聞こえない部屋』で野間文芸新人賞を受賞し、西洋人で初の日本文学作家として注目を浴びる。2005年『千々にくだけて』で大佛次郎賞、2009年『仮の水』で伊藤整文学賞 、2016年『模範郷』で読売文学賞、2021年『天路』で野間文芸賞を受賞。法政大学名誉教授。

「2023年 『日本語の勝利/アイデンティティーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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