チャップリンとヒトラー――メディアとイメージの世界大戦

著者 : 大野裕之
  • 岩波書店 (2015年6月26日発売)
4.11
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  • レビュー :22
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000238861

作品紹介

一八八九年四月-二〇世紀の世界で、もっとも愛された男ともっとも憎まれた男が、わずか四日違いで誕生した。やがて、二人の才能と思想は、歴史の流れの中で、巨大なうねりとなって激突する。知られざる資料を駆使し、映画『独裁者』をめぐるメディア戦争の実相をスリリングに描く!

チャップリンとヒトラー――メディアとイメージの世界大戦の感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りた。
    これは、よくできた本だね。いっぱい付箋貼りながら読ませてもらった。

    チャップリンとヒトラー。
    チョビ髭という共通点しかないこの二人が、同じ時代を、別々の場所で生き、ファシズムとコメディーというまるで異なる武器で闘った記録。

    フランツ・カフカもプラハで、チャップリン映画の上映を待ちわびていた。
    p.23

    チャップリンは世界旅行中に、ヨーロッパにおける通貨統合の必要性を訴えてた。
    p.32
    ・・・・すごい先見性にビックリ。

    1931年、ロンドンで、チャップリンはガンディーと機械文明について論争してる。
    チャップリンは機械文明を、人類を幸福にするものとして肯定的に論じ、ガンディーは、それが人類を不幸にしたと否定的に論じた。
    しかし、その後、チャップリンは『モダン・タイムズ』で、機械文明の否定的な側面を描いた。これは、ガンディーの影響かもしれない。
    p.38

    オレも、チャップリンはユダヤ人だと誤解してたんだけど、違う。
    それにしても、チャップリンというのはスゴイ人物だったんだと改めて感心した。

    アメリカ人も、反ユダヤ主義者が多くて、ヒトラーの支持者が多く、チャップリンの『独裁者』製作時に様々な脅迫、嫌がらせ、圧力をかけてくるんだけど、まったく屈せずに、作品を仕上げるチャップリンの闘争心がすごい。

    メディアがメッセージである。 p.251
    チャップリンはそれを知り抜いていた。

    チャップリンは「warmonger戦争扇動者」という言葉をもじって「peacemonger平和扇動者」という言葉を作って使った。
    平和を唱えたところで、戦争扇動者には勝てない。
    ならば、平和を煽れば良い。
    p.260

    「私は国家主義者ではなく国際主義者です。だから市民権をとらないのです」

    コメディとペーソスは密接に結びついていて両者を分けることはできません。多くの人から「どうやって痛ましさや人々の苦しみからコメディをつくれるのだ?どうやって世界の最も大きな悲劇を笑うことができるのだ?」と聞かれます。私はこう説明します。
    私たちが生き延びることができる唯一の方法は、私たちの困難を笑うことなのです、と。
    p.229

    すごく、良い言葉だね。
    これって、ニーチェも同じことを言っていたよね?????
    それから又吉も、太宰の小説は暗くて絶望的だけど、見方を変えれば、マヌケすぎて笑える、って話してた。実際、彼は太宰のペーソスをコメディーに変換する。

    チャップリンは哲学者でもある。
    彼は、天才コメディアンであり、優れたミュージシャンであり、平和の扇動家であり、誰よりも、実際に闘い抜いた人だった。

  • 最近、軽めの本ばかり読んでいましたが、こちらはいろんな意味で、ずっしりと読み応えがありました。何度も確認しながら、ゆっくりと読みました。


    ***
    ヒトラーとチャップリン。
    恥ずかしながらわたくし、どちらもほとんど知りません(恥)。
    ヒトラーは学生時代、授業で習ったっけ???というほど(テストに出る歴史的事実以外は)知らない。(恥。涙)。
    手塚治虫の「アドルフに告ぐ」のヒトラーのイメージでしかありません。

    チャップリンは、大学1年生、とある教授のゼミにお邪魔したとき、話しの流れで、映画を見せていただいたことがあります(多分「モダン・タイムズ。」)近代化の光と闇、みたいな話でした。
    ・・・ただそれだけです。観たのって。

    なので、「独裁者」は観ていません。
    (10代のころ、テレビでラストの演説だけチラリと見たことがありますが、ただ退屈なだけでした。
    今、この本を読んだ後に観たら、また違った気持ちになれるかもしれません。)
    必ず探して観なくては!と思いました。

    一番驚きなのは、まさにヒトラーが権力に上り詰めているそのとき、チャップリンはこの映画を作成した。
    ということでした。
    世相、チャップリン、ヒトラー。様々な資料を読みながら
    歴史を「眺める」ことができます。このまま映画になり得そう。

    全然関係ない映画ですが「戦場のピアニスト」をもう一度観たくなりました。生きることに、勇気を与えてくれますよね。


    良書です。時間があるときに、じっくり読むことをおススメします。(通勤の合間に読むのはおススメしない本です。休日に、じっくり読むことをおススメします)

  • イソップの「北風と太陽」を
    思った

    今でも
    ドイツ、フランス、ポーーランド、イタリア
    の 国々から
    第二次世界大戦をテーマとする映画が
    産み出されている
    つい先日も
    「パリよ、永遠に」(独、仏 共同製作)を
    観たばかりだ

    反戦 とか
    非戦 とか
    むろん みんな いわずもがな
    のことである
    声高に叫ぶのではなく
    淡々とその抵抗の事実を学ぶ
    その 手法に 学びたい

    ユーモアという戦争に対する
    最大の武器を見事に
    その人生の一部に織り込んだ
    チャップリンに
    あらためて敬意を表したい

    こんなすてきな作品を
    著した大野さんにも
    むろん 敬意を表したい

  • フォトリーディング後、高速を交えて熟読。
    良書。

    ただ、私が考えていたチャップリン=ユダヤ人が冒頭で否定されたので、当初予定していた情報収集を軌道修正させられてしまい、そんな個人的な理由で気分が乗らない読書であった。他の人が読めば、チャップリンとヒトラーの奇妙な運命の偶然に目を見張ることと思う。

    (チャップリンはイギリス人。母にはジプシーの血が混ざっている。異母兄弟の兄は、彼らが信じるところでは、ユダヤ人の血が混ざっている。チャップリンはナチスから激しくユダヤ人差別を受けるが、それを意図的に無視。相手の土壌で戦うことは、ユダヤ人差別に荷担すると考えたため。)

    下記に付箋を貼った箇所の要約をのせる:

    9-10:第一次大戦中のフランスの野戦病院では、寝たきりの患者が鑑賞できるようにと床に映写機をセットし、チャップリンの喜劇を見せていた。戦後多くの人がチャップリンに感謝を伝える。

    16:ヒトラーのちょび髭はチャップリンのまねという説があるが、記録からそれは否定できる。どちらも同じ時期に自発的にちょび髭をつける。生まれも4日違い。(後にヒトラーのパリ凱旋と、「独裁者」撮影開始がほとんど同慈悲である事を、著者は運命的な者と指摘。)

    39:515事件で犬養毅が暗殺されたがそれは実行犯による、チャップリン歓迎の食事会への参加者とチャップリン本人を狙った犯行であった。すんでの所でチャップリンは参加をキャンセル。

    76:フランスの映画雑誌にチャップリンは「リズム」という短編小説を発表。1938年四月。ここの思想信条や政体よりも、リズムが時代の流れや人の行動を決めるという示唆的、暗示的小説。(著者は他にもチャップリンの予言的指摘として、「ユダヤ人の強制収容」などを記す。:86)

    124-126:戦前のアメリカはヒットラーを好意的に捉え、ユダヤ人に対する感情は厳しかった。チャップリンに対する批難も高まる。

    128:一方ヨーロッパではチャップリンに対して希望を抱いていた。

    138:「独裁者」撮影時、衣装がチャップリンの言動を変えた。チャップリン自身も尊大な、イライラした言動を、独裁者の衣装のせいであると自覚。運転手を怒鳴りつけて反省する。

    180-181:チャップリンとヒトラーの戦いのクライマックスは、独裁者の最後の演説のシーンにきわまる。

    210-211:独裁者はアメリカ参戦前に公開。米国批評家は酷評するも民衆は大喝采。またヨーロッパでは官民が諸手を挙げて公開を大歓迎。(参戦したい米国首脳部による民衆操作が、米国批評家の酷評になったのかも?しかし民衆は正直)。

    230:チャップリンの独裁者ラストシーンの演説が、世界中に行き渡った時期に、ヒトラーの演説が急速になりを潜める。かつて精力的に演説活動をした独裁者は、実権を握り敵をユダヤ人と定め、戦争を開始したが、全てをユダヤのせいにする彼の政策は、戦争の配色もユダヤの性にする苦しい状況になる。演説がもう出来なくなっていたヒトラー。

  • めちゃくちゃ面白かった。チャップリンの思想・先見性・プロフェッショナルとしてよ姿勢だけじゃなく、「メディアがメッセージである」という主張に基づきヒトラーとの比較をしながら丁寧に説明されているところが、とても興味深い。

  • 読み物として非常に面白かった。
    チャップリンとヒトラーという二十世紀の同時期に存在した天才。片や光、片や影として歴史に名を残した。
    歴史ロマンや必然としか言いようのない歴史の偶然を垣間見ることが出来た。
    マイナスの力は所詮プラスの力には勝てないのだと思った。

  • 同時期に一世を風靡したちょび髭の2人を対比させ、彼らを繋ぐ映画「独裁者」が焦点になっている。個々の人物伝の交差というよりは、チャップリン的なものとヒトラー的なものの対立構造、すなわち抑圧に対する笑い、が主題。その答えの最たるものとして「独裁者」が位置付けられ、本書ではその製作経緯が丹念に追われている。2人の評価に善悪の線引きが明確過ぎる筆致は気になったが、毒の要素を含むメディアを大いに利用した一点においては、チャップリンとヒトラーはむしろ同類。ただどちらが最終的に人々を幸せにしたか、となると勝者は確かに明らかだろう。ヒトラーを「最高の役者」と評したチャップリンは、それに対抗するものを生み出さずにはいられなかったように思え、チャップリンを真に偉大にしたのはヒトラーだったかもしれない、と考えると出来の悪い喜劇だろうか。

  • やはりチャップリンは偉大である。もう一度『独裁者』を見直そう!

  • チャップリンの独裁者の引用が良かった。

  •  『独裁者』をそのアイデアの始まりから、台本の成立過程、さらにはコールシート等で撮影の進行を辿りつつ、その都度メディアや当時の英米独政府の神経質な対応を挟み込んでいるので、まことに臨場感あふれたドキュメンタリーとなっている。チャップリンは大戦後、アメリカのレッドパージで国外追放されたが、その種はすでにこの『独裁者』制作の時点で撒かれていたのがよく分る。
     それにしても日本公開が1960年だったという事実には驚かされた。当時、筆者は小学生で、3学年ぐらいがまとまって映画館にこの映画を見に行った記憶があるが、それは初公開のときだったようである。地球儀のダンスが飛びぬけて面白く、最後の演説がずいぶん長いなと思ったが、それが6分ほどのものでしかなかったという点にも、驚かされた。
     いろいろな点で、発見の多い労作である。

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