チャップリンとヒトラー――メディアとイメージの世界大戦

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000238861

感想・レビュー・書評

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  • 知らなかったのですが
    チャップリンとヒトラーは 
    4日違いに生まれたそうです。

    同じ歳 同じ星座でも 
    こんなにも 性格が違うのですね~~(まぁ当たり前ですが)

    見た事がありませんが 
    「独裁者」という映画を作ったのが 第二次大戦の頃とはとても驚きです。
    戦時中にこのような映画を作るとは。

    日本に来た時も 暗殺されそうになったチャップリンですが この「独裁者」という映画を作る事で 暗殺されそうになったそうです。

    命をかけてまで 作った映画。
    一度は見ないといけませんね。

    ラストの 演説のシーンは you tubeなどでも見られます

  • チャップリンとヒトラーの人生と運命の交錯、偶然、様々な角度から2人を比較するのは興味深かったです。

    キャラクターイメージを全世界に行き渡らせたメディアの王様チャップリンと、イメージを武器にメディアを駆使して権利を持ったヒトラー。
    この比較は今後も様々な形で存在し続けることを心に留めておきたいと思います

    ★3.5 2019/5/19

  • フォトリーディング後、高速を交えて熟読。
    良書。

    ただ、私が考えていたチャップリン=ユダヤ人が冒頭で否定されたので、当初予定していた情報収集を軌道修正させられてしまい、そんな個人的な理由で気分が乗らない読書であった。他の人が読めば、チャップリンとヒトラーの奇妙な運命の偶然に目を見張ることと思う。

    (チャップリンはイギリス人。母にはジプシーの血が混ざっている。異母兄弟の兄は、彼らが信じるところでは、ユダヤ人の血が混ざっている。チャップリンはナチスから激しくユダヤ人差別を受けるが、それを意図的に無視。相手の土壌で戦うことは、ユダヤ人差別に荷担すると考えたため。)

    下記に付箋を貼った箇所の要約をのせる:

    9-10:第一次大戦中のフランスの野戦病院では、寝たきりの患者が鑑賞できるようにと床に映写機をセットし、チャップリンの喜劇を見せていた。戦後多くの人がチャップリンに感謝を伝える。

    16:ヒトラーのちょび髭はチャップリンのまねという説があるが、記録からそれは否定できる。どちらも同じ時期に自発的にちょび髭をつける。生まれも4日違い。(後にヒトラーのパリ凱旋と、「独裁者」撮影開始がほとんど同慈悲である事を、著者は運命的な者と指摘。)

    39:515事件で犬養毅が暗殺されたがそれは実行犯による、チャップリン歓迎の食事会への参加者とチャップリン本人を狙った犯行であった。すんでの所でチャップリンは参加をキャンセル。

    76:フランスの映画雑誌にチャップリンは「リズム」という短編小説を発表。1938年四月。ここの思想信条や政体よりも、リズムが時代の流れや人の行動を決めるという示唆的、暗示的小説。(著者は他にもチャップリンの予言的指摘として、「ユダヤ人の強制収容」などを記す。:86)

    124-126:戦前のアメリカはヒットラーを好意的に捉え、ユダヤ人に対する感情は厳しかった。チャップリンに対する批難も高まる。

    128:一方ヨーロッパではチャップリンに対して希望を抱いていた。

    138:「独裁者」撮影時、衣装がチャップリンの言動を変えた。チャップリン自身も尊大な、イライラした言動を、独裁者の衣装のせいであると自覚。運転手を怒鳴りつけて反省する。

    180-181:チャップリンとヒトラーの戦いのクライマックスは、独裁者の最後の演説のシーンにきわまる。

    210-211:独裁者はアメリカ参戦前に公開。米国批評家は酷評するも民衆は大喝采。またヨーロッパでは官民が諸手を挙げて公開を大歓迎。(参戦したい米国首脳部による民衆操作が、米国批評家の酷評になったのかも?しかし民衆は正直)。

    230:チャップリンの独裁者ラストシーンの演説が、世界中に行き渡った時期に、ヒトラーの演説が急速になりを潜める。かつて精力的に演説活動をした独裁者は、実権を握り敵をユダヤ人と定め、戦争を開始したが、全てをユダヤのせいにする彼の政策は、戦争の配色もユダヤの性にする苦しい状況になる。演説がもう出来なくなっていたヒトラー。

  • 同時期に一世を風靡したちょび髭の2人を対比させ、彼らを繋ぐ映画「独裁者」が焦点になっている。個々の人物伝の交差というよりは、チャップリン的なものとヒトラー的なものの対立構造、すなわち抑圧に対する笑い、が主題。その答えの最たるものとして「独裁者」が位置付けられ、本書ではその製作経緯が丹念に追われている。2人の評価に善悪の線引きが明確過ぎる筆致は気になったが、毒の要素を含むメディアを大いに利用した一点においては、チャップリンとヒトラーはむしろ同類。ただどちらが最終的に人々を幸せにしたか、となると勝者は確かに明らかだろう。ヒトラーを「最高の役者」と評したチャップリンは、それに対抗するものを生み出さずにはいられなかったように思え、チャップリンを真に偉大にしたのはヒトラーだったかもしれない、と考えると出来の悪い喜劇だろうか。

  • チャップリンがイメージ戦争でヒトラーに打ち勝ち、滑稽極まりない独裁者のイメージをヒトラーの上に永遠に焼き付けたというのは確かに。やはりチャップリンは天才である。

著者プロフィール

1974年大阪生まれ。脚本家・演出家・日本チャップリン協会会長。大阪府立茨木高校卒。京都大学総合人間学部卒、同大学院人間・環境学研究科博士課程所定単位取得。国内外のチャップリン関連企画やブルーレイ等を監修するなど、遺族の信頼もあつく日本でのチャップリンの権利の代理店も務める。著書に『チャップリン 作品とその生涯』(中公文庫)、『チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦』(岩波書店、第37回サントリー学芸賞)他多数。映画『太秦ライムライト』(第18回ファンタジア国際映画祭最優秀作品賞)、『葬式の名人』『ミュジコフィリア』他のプロデューサー・脚本を担当。2006年ポルデノーネ無声映画祭特別メダル、14年京都市文化芸術産業観光表彰「きらめき賞」受賞。

「2022年 『ビジネスと人生に効く 教養としてのチャップリン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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