中国が愛を知ったころ――張愛玲短篇選

著者 :
制作 : 濱田 麻矢 
  • 岩波書店
3.67
  • (0)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 41
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000238922

作品紹介・あらすじ

「公平?人と人との関係に、公平なんて二文字はもともとありえないわ。」逃れえぬ想いの先に、彼女たちは何を見たのか。家族制度と自由恋愛。経済と感情。せめぎあう愛のかたちと、そのゆくえ。日本占領下の上海に彗星のように現れ、今なお世代を超え、中華圏で熱狂的に読み継がれている張愛玲。本邦未訳の三作品からなる短篇選。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 1920年、上海に生まれ、
    日本占領下の中国で創作活動を開始し、
    戦後、香港を経てアメリカへ渡った作家、
    張愛玲(1995年没)自身の体験、
    思い出が細かく編み込まれたと思しき短編三作。

    「沈香屑 第一炉香」
     タイトルに「第一」とあるのは、訳者あとがきによると
     一話完結シリーズの第一弾だったため、らしい。
     イギリス植民地時代の香港が舞台。
     家の経済事情が苦しくなったが、
     学校をやめたくない娘が、
     伯母を頼って身を寄せたものの、
     自分を都合よく利用しようとする人たちに翻弄される。
     息の長い、緻密で端麗な文章が、
     派手な暮らしに馴染み、それを満喫しながら、
     同時に自らの堕落を恐れる少女の心の揺動を
     繊細に描出する。
     時代や社会の状況によって、
     経済的にも精神的にも自立を阻まれていた女たちの
     精一杯の足掻き。
     読んでいて、彼女らの屋敷に忍び込んで
     帳の陰から物語の進行を
     盗み見したいような気分になった。

    「中国が愛を知ったころ」
     英題は"Stale Mates"で、
     訳者あとがきによれば「古馴染み」の意。
     1924年、杭州での自由恋愛の模様。
     惚れた女と一緒になるために妻と別れるべく奔走する男、
     意趣返しを食らわす女、そして、話は二転三転。
     タイトルがstalemateなら、意味は「膠着状態」で、
     チェスにおいてはゲームの続行が不可能になる、
     対戦相手双方がそれ以上、
     駒を動かしようがなくなった局面のことで、
     思わず苦笑してしまうオチはまさに「詰んだ」状態か。

    「同級生」
     上海の女学校での友情と、
     卒業し、社会人になってからの薄い付き合い。
     相手はどんどん上昇していくのに、
     自分は一向にパリッとしないままだが、
     それを認めて静かに生きていこうとする主人公。
     時代と場所が違っても、やはり女同士の交際は
     死ぬまで続くマウンティング合戦なのかと
     身につまされる部分があった。

    中国人は面子(メンツ)を重んじる人々だ――と、
    何かの本で読んだ記憶があるが、
    この三編に共通するキーワードも「面子」かもしれない。
    自分の都合で女性を振り回しながら
    体面を気にする男が出てくるかと思えば、
    女同士の交友においても、
    相手のちょっとした言動にプライドを傷つけられたり、
    傷つけてしまったのではと気に病んだりする様が描かれる。
    しかし、作者と、その分身のようなヒロインたちは、
    その「常識」に逆らおうとしていたように読める。

    細部の描写の丁寧さ、
    特に女性のファッションの詳述ぶりに唸らされた。

  • 最高に面白かった。張愛玲の他の作品も読んでみたい。中国語はわからないけど、「沈香屑 第一炉香」での屋敷の調度品や衣服などの描写は、原語でもさぞ美しい文章なのだろうなあと思う。

  • -

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=10787

全4件中 1 - 4件を表示

張愛玲の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
佐藤 亜紀
高石 宏輔
サルバドール プ...
ミシェル ウエル...
イアン・マキュー...
村田 沙耶香
ジョン・ウィリア...
アメリア・グレイ
ピエール ルメー...
エイミー・ベンダ...
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする