ジャック・ラカン 転移(下)

制作 : ジャック=アラン・ミレール 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 9
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000240529

作品紹介・あらすじ

あなたが誰かを愛するとき、そこで何が起こっているのか。精神分析の最重要概念「転移」の再解釈を通じて、愛と欲望の根底に迫る。ラカンのセミネール第8巻。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻の終わりの方で出てきた「アガルマ」概念が下巻で大活躍するのではないかと予想していたら、言葉自体は出てこなかった(言葉が出てこないだけで、理論的にはつづいて展開されている)。その代わり、下巻ではいきなり「口唇期」だの「肛門期」だのという、精神分析の基礎概念のおさらいがのっけから始まって「なんで?」と思った。しかし要するに、「愛・欲望」の原初的な姿の呈示ということだろう。
    こんどはクローデルの読んだことない(どうも邦訳なさそう)戯曲が詳細に分析される。そこから神話論に発展する。
    このへん、下巻のこり3分の1あたりが俄然面白く、興奮した。神話と言うことでもちろんレヴィ=ストロースもちらっと参照されるが、無意識が形成する神話の論理というものは、恐らくニクラス・ルーマンの言うようなオートポイエティックな「システム」であるに違いないという気がした。
    そしてシステムにおいて特に注目されるのが小文字のa(対象としての他者)、大文字のS(に斜線が引いてある文字。消退する主体)といったキーワードである。
    ラカンは本書で得意の「鏡像段階」論ももちだすが、このへんの自我理論は、私には少し違和感があるので、保留しておく。
    結局、本書においてラカンが追究し尽くしたいとかんがえたのは「被分析者-分析者間の転移」という事態の特殊性そのものではなく、愛・欲望・対象関係の普遍的な構造であったのだろう。
    セミネールシリーズはいつもそうだし、ラカンの書くものも全部そうだが、末尾はやはりすっきりしない(言い足りない)感じで終わってしまう。
    けれども今回は後半の方に、「あ、これだ」とビリビリ来るような印象があったので、改めてラカン思想の面白さを感じた。セミネールシリーズを全部読み返したいくらいだ。
    だがそうなると、買いそびれて持ってない巻が惜しまれる。そもそも本国フランスでさえ、まだ全巻が刊行されていないようなのだが。

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