都市のイメージ 新装版

制作 : Kevin Lynch  丹下 健三  富田 玲子 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 314
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000241380

感想・レビュー・書評

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  • ケヴィン・リンチの本はわかりやすい。

    5つのエレメントによる解説も良いのだが、
    付録A オリエンテーションに関して
    の、各民族によるオリエンテーションの捉え方の違いが面白い。

    例として、ティコピア島では、「山側」「海側」という表現を使う。
    「お前の海側のほっぺたに泥がついてるよ」なんて、
    なんとも、自分とは遠い世界があるのだなぁと思い知らされる。

  • もっと早くに読むべきだったと反省している。都市計画を学ぶ上での王道の著書。アメリカのボストンやマンハッタン等々の都市計画についての特徴が書かれている。また、都市計画において必要な5つの要素や10の事項が書かれている。ボストン(多分)はとても栄えている街なのであるが、これといって訪れる人に薦められるところが無い、と記述されていた説は印象に残っている。東京でも同じことが言えるからである。そういった具合なのだろうと推測する。20代の内にアメリカに行ってみたい、と刺激を受ける。

  • 紹介文
    そこで暮らす人々にとって、「良い都市」とはなんだろうか?彼はそんな疑問に対して、実際の都市を舞台にしたフィールドワークにもとづき、「イメージアブルな都市こそが良い都市である」との結論に達した。「都市の風景にはいろいろの役割があるが、そのひとつは人々に見られ、記憶され、楽しまれることである。都市のデザインは時間が生み出す芸術である」。そんな彼の「都市での人々の生活そのものがひとつの芸術である」という思想を実現するための土台(=環境づくり)。それを構築するための理論を提供してくれるのが本書。都市デザイン理論の歴史において、欠かすことのできない1冊にして、リンチ思想はじまりの1冊。
    本書におけるリンチの功績
     それまでの都市計画の理論においては、「良い都市」とは、基本的に、設計図の上で幾何学的に美しいもの、各地域の同士の関係や位置づけが合理的に配されているもの、あるいは権力者の実力の誇示、宗教的象徴性が実現されているもののことを指していた。つまり、都市(づくり)を評価する際には、実際にそこに住んでいる住民が不在で、専らそれまでに受け継がれてきた理論と基準をそのまま援用していたのである。これに対してリンチは、その都市に実際に住む人々、その都市を使う人々にとって「良い都市」とはどのような都市であるかを明らかにしようとしたのである。そしてその結果、わかりやすさ(legibility)を有しており、イメージアブル(lmageable)な都市を目指すべきではないかとの結論に至り、そのイメージの構成要素として、パス、エッジ、ノード、ディストリクト、ランドマークの5つの要素を抽出した。このような、ある意味で当たり前とも思われるようなことをはじめて検証したところに、彼の業績がある。
    環境イメージの成分と5つのエレメント
     リンチはまず、都市のイメージ=都市像とは、1.アイデンティティ(個性・単一性/Identity)、2.ミーニング(意味/Meaning)、3.ストラクチャー(構造/Structure)の3つの成分にもとづいて認識されていると述べ、具体的な脳内のイメージマップは(1)パス(Path)、(2)エッジ(Edge)、(3)ディストリクト(Districts)、(4)ノード(Nodes)、(5)ランドマーク(Landmarks)の5つのエレメントによって構成されていると言う。なお、ここでいう1.アイデンティティ(個性・単一性/Identity)とは、2.ミーニング(意味/Meaning)とは、「自分の職場」、「現在通っている学校」、「ダイエットのためにランニングしている公園」、「子どもの頃よく遊んだ空き地」などその場所や建物がその人の中で持っている意味、3.ストラクチャー(構造/Structure)とは、上の5つのエレメント同士の位置関係や配置、つながりのことである。また、5つのエレメントの定義と具体例は以下のようなものということができる。
    (1)パス(Path)とは、とは、街路、散歩道、運送路、運河、鉄道など「観察者が日ごろあるいは時々通る、もしくは通る可能性のある道筋のこと」であり、「多くの人々にとっては、これらがイメージの支配的なエレメントになっている」と同時に、こうしたパスに沿ってその他のエレメントが配置され、関連づけられているという。
    (2)エッジ(Edge)とは、「観察者がパスとしては用いない、あるいはパスとはみなさない、線状のエレメント」、つまり「海岸、鉄道線路の切通し、開発地の縁、壁など、2つの局面の間にある境界であり、連続状態を中断する線状のもののこと」である。人々はこのエッジによって、地域の輪郭や切れ目、境界などを判断している。
    (3)ディストリクト(Districts)とは、オフィス街や住宅地、歓楽街など、「中から大の大きさをもつ都市の部分であり、2 次元の広がりをもつものとして考えられ、観察者は心の中でその中に入るものであり、また何か独自な特徴がその内部の各所に共通して見られるために認識されるもの」である。
    (4)ノード(Nodes)とは、「都市内部にある主要な地点」、「観察者がその中にはいることができる点であり、彼がそこへ向かったり、そこから出発したりする強い焦点」のことである。具体的には、交差点や駅前の広場、大きな公園などがノード(Nodes)となり得る。とりわけ寄合い所とか因われた広場のように、なんらかの用途または物理的な性格がそこに凝縮されているために、重要性をもつものであるノードはディストリクトの焦点とも縮図ともなることがあり、その影響力はディストリクト全体に広がり、そのディストリクトの象徴の役割も果たしている。これらはコア(核)とも呼ばれる。
    (5)ランドマーク(Landmarks)もやはり点を示すものであるが、ランドマーク(Landmarks)の揚合、観察者はその中には入らず、外部から見るのである。具体的には建物、看板、商店、山など、どちらかといえば単純に定義される物理的な物を指すが、ほかのものと明確に区別し得る、相対的な個性を有していればどんなものでもランドマークになり得る。例えば、高さ10[m]の建物群の中にひとつだけ30[m]の建物があれば、それはランドマーク(Landmarks)になり得るが、逆に40~45[m]の建物群の中の42[m]の建物は、ランドマーク(Landmarks)として認識される可能性は低くなる。
     このような5つのエレメントが互いに関係しあうことで、都市のストラクチャーを構成し、その全体像がイメージにほかならない。そして、そうしたイメージを頭の中で思う浮かべやすい都市=イメージアブルな都市こそが、実際にそこで過ごす人々にとって良い都市だと彼は言うのである。
    リンチの都市観
     しかし、そもそもなぜ、彼はこのような研究をしようと思ったのだろうか?いいかえれば、リンチの都市に対する問題意識とは何だったのだろうか?この点、本書をざっと一読しただけでは、どうも判然としないところがある。思えばケヴィン・リンチという人は、一見するととらえどころのない人物であるように思われる。著作の雰囲気を一言で評するならば、「分かるようで、分からない」、さりとて「分からないようで、分かる」。そんな「ふわふわとした」人だ。それは彼が、科学者であると同時に、ひとりの文学者でもあり、都市デザインの理論家であると同時に、実践家でもあり、思想家でもあり哲学者でもあるからなのだろう。彼はいつも、強烈な個性、強烈な主張を見せることはない。彼は生涯を通して、我々に問いかけるように、自らの思索を深めていった。彼は世界中どこでも通用するような一般的な都市デザイン理論など存在しないことに気付いていた。だからこそ、個別具体的な都市デザインに携わる度、そこで考えたことは一般化し得ないことは知っていた。しかし彼は、それでも「都市」というもので暮らす以上、人々が共通して求めているものを実践の中で探そうとした。彼はたしかに本書の中で次のように言っている。

    「〔…〕この視覚的な特質の中でも、とくに都市の眺めの外見の明瞭さあるいはわかりやすさlegibility ということに焦点をしぼることにしよう。これは人々が都市の各部分を認識し、さらにそれらをひとつの筋の通ったパターンに構成するのがたやすいということである。鮮明なイメージは、人間の行動をなめらかにし、すみやかにするにちがいない。たとえば、友人の家や、巡査や、ポタン屋をさがす揚合にしてもそうだ。しかし、秩序ある環境には、それ以上のことができるのである」。

    このような言葉を読めば、リンチの基本的な態度は都市工学者のそれであって、科学者のそれであるように思われる。たしかに本書において、彼がやろうとしたこととそれを明らかにするための手法は、科学的と言ってもいいものである。環境イメージを構成する成分のうち、各エレメントの持っている1.アイデンティティ(個性・単一性/Identity)と2.ミーニング(意味/Meaning)は各個人によって全く異なってくる。「自分の母校や職場、通勤・通学路」は、その人にとって非常に重要な意味を持つし、それは一目見ればほかの建物や道からは区別される。だが、自分が普段通らないような道、使わない建物については、ある意味で本人の中の世界には存在しないも同然である。しかし、年齢や性別、職業などさまざまな属性を持った人々が同時に併存している空間たる都市においては、それを「良く」デザインするためにはある共通項に基づいていなければ、「みんなのための都市」ではなく、「一定の誰かのための都市」になってしまう。それゆえに、本書においては、1.アイデンティティ(個性・単一性/Identity)と2.ミーニング(意味/Meaning)についての言及を避け、ある程度客観的になることのできる「形態」と「構造」に焦点を絞り、工学者として科学的な議論をしようと思ったのだろう。
     しかし、本書を含めた彼の著作のすべてに目を通してみると、彼が生涯工学者として、自分の都市デザイン理論を構築していったのではないことに気づく。いやむしろ彼は、科学者というよりは、ひとりの思想家だった。彼は、「すぐれた環境のイメージは、その所有者に情緒の安定という大切な感覚をもたらす。彼は自分と外界との間に調和のとれた関係を確立することができる」と言い、彼は人間の情緒や都市での日常的な生活を重視した。そして、「都市の風景にはいろいろの役割があるが、そのひとつは人々に見られ、記憶され、楽しまれることである。都市のデザインは時間が生み出す芸術である」と述べ、都市とは人間が織りなす芸術であると言った。こういった言葉の中にこそ、リンチ思想の本質を見ることができるような気がする。科学が人間の理性の表現であるとすれば、芸術とは人間の情緒や情熱、あるいは「生」そのものの表現にほかならない。
     リンチが本書を書くためにフィールドワークをした1950年代のアメリカは、W・H・ホワイトが『オーガニゼーション・マン』で描き出したように、大量生産・消費社会の中で、確固たる自分を持たずに、周囲との一時的な調和を守ることを旨とし、なおかつひとつの土地に縛られずに、アメリカ中を転々とする中層階級が一般的なライフスタイルであるような時代であった。そして、そんな人々を収容する都市といえば、経済的合理性にもとづいた、科学的で人工的な理論、あるいは無計画によって構築されていた。ジェイン・ジェイコブズはそんな都市のあり方に対して強烈な批判を浴びせたわけだが、リンチの問題意識にもジェイコブズに近いものがあったのかもしれない。
    「没個性的で特徴のない都市の乱立し、人工的に作り出されたものに溢れている。それは果たして人間にとって居心地の良い場所であるのか?その場所に対して愛着を持つことができるのだろうか。自分のアイデンティティの核となる「故郷」になることができるのだろうか?」
    彼は、そう、彼の哲学者としての顔をのぞかせながら、語りかけている。


  • 改めて新装版で復習

    都市の姿を、あるがままの形態とその背後にある固有のイメージだけをたよりに、そこに住む人々によって感じられるものとして捉える。

    都市は変化が絶え間なく、部分の積み重ねの上に全体を構築しようとしている。

    イメージアビリティ
    パス、エッジ、ディストリクト、ノード、ランドマーク

    パタンランゲージは誰もが心地よく感じる空間の質という価値判断を基本とするもので、目に見えるものを中心に据えた都市のイメージとは考えが異なる

    都市の見える化に向かう実際的な技術は、4章に軽くふれ、a theory of good city form でさらに考察。

  • 「都市のイメージ」が建築計画に与える意義について、建築計画を行う人間の立場の変化という点から論じる。
     本書は、都市の視覚的要素のうちとくに外見の明瞭さ・都市居住者にとってのわかりやすさに焦点を絞り、それをイメージアビリティという独立変数として定義し、外的操作による発展させることのできる可能性について探っている。これは、かつて大きな問題とされた都市の無性格なスプロールによるスラム的拡大の中では、都市の美しさ・プロポーションの良さより、わかりやすさ・印象の強さが人々にとって重要になってくるという思想に基づいていると考えられる。
     注目すべきは、都市の捉え方がかつての計画者や為政者が考えたような建物と街路の意図的な配置の問題から、あるがままの形態とその背後にある固有のイメージだけをたよりに、そこに住む人々によって感じられるものとなっている点である。これはそれ自体興味深い分析結果を生むものであると同時に、以後の計画者のあり方を都市の判断基準を個人の主観として都市を分析し計画する立場から、基準を都市居住者のイメージに据えそれを分析しまとめあげる立場へと変えることを要請するものである。
     また、Ⅳ章後半においては都市を分析した結果得られた5つの要素(パス・ランドマーク・エッジ・ノード・ディストリクト)において共通して現れてくる10の操作可能な特質、およびそれらを統合した「全体としての感じ」の重要性について記述されている。これは今後本書における研究をベースにして都市デザインを行っていく際の展望を示すものとなっており、前述のようにイメージをまとめあげた上でデザインをする事が可能であったことを示している。
     サンプル数の少なさや地域の偏り、また研究目的をスプロールによる不明瞭な都市の発生を受けてのイメージアビリティの向上のみに絞っていることから、この研究から得られた結果を現代において直接適用することは必ずしもよいとは限らないが、都市や建築をはじめとした構造を計画するにあたって重要となる立場を示したという点で本書は計画学上意義深いものであるだろう。


    …という批評もできるし、都市の要素の切り出し方や研究手法、またそれぞれの要素について考えるべきことが記述されているので単純にそれを参考にするだけでも非常にためになります。内容は平易。
    付録が未読なのでまた読みたい。

  • 【配置場所】工大一般図書【請求記号】518.8||L【資料ID】10702179

  • 斬新、というのが一番の感想になる。というのも筆者の造語やその後の論理・調査展開が適応されている事例をほとんど見たことがないからだ。
    それでいてここでいうイメージアビリティやイメージマップ、5つのエレメント(パス、ノード、エッヂ、ディストリクト、ランドマーク)はどんな都市を読み解くにも使えそうに思える。何よりも都市の「分かりやすさ」に焦点を当てた本だけあって非常に分かりやすい。

  • 仏訳版で読みました。
    http://amzn.to/epkijA

  • 「都市とはイメージされるものである」。配置を云々する計画者や為政者の都市論を、住民がもつ印象の巧みな分析でひっくり返した名著。景観論の出発点。読みやすく50年を経てなお色褪せない。付録・解説がまたいい。

  • 18ページまで

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