日本経済を問う―誤った理論は誤った政策を導く

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000242431

作品紹介・あらすじ

バブル崩壊後の長期停滞から抜け出た日本経済。一〇年以上にわたった長期不況の原因を八〇年代末のバブル期まで遡って考察し、その全体像を描き出す。長引く不況のさなかに深刻化した経済格差の拡大、財政破綻、日本型経営の崩壊…。政府はいま何をなすべきなのか。経済理論と現実経済を架橋し、市民のための提言を行なう。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は筆者が小泉総理フィーバーに沸いていたときに、時流に抗して考え、執筆した書物である。
    官僚制を批判することが何かと受ける日本であるが、根本的な官僚制度を考察するとともに、郵政民営化について批判的に論じている。筆者は長期的視点で「市場が縮小していく赤字事業を民間企業がやっていいのか?」という理由で国有化を維持したアメリカと、集荷から通関まで一貫して国際物流事業にまで拡大させたドイツ型の民営化を論じている。しかし、評者にとって日本の郵政民営化について将来の方向性は全く分からない。
    また、バブル景気とその後の20年不況に関して丁寧に検証を行っており、安定の20年と不況の20年をしっかりと見つめ、量的緩和政策・インフレターゲットが国債に向かったのであり、銀行に資金不足が無い状態を観念の産物と皮肉交じりに論じ、その功績を不況の責任を日銀に求め、政府の責任を免れていると指摘するところは流石と言わざるを得ない。
    また、筆者は批判のための批判ではなく、執筆時以上の円高は秩序ある産業構造の変化を崩すとして必ずしも望んではいない。また有効な政策として、治療よりも予防が大事であると説いている。それはアメリカの大恐慌のように投機を抑えるには不況が発生した時では困難であるとの認識からによるものである。
    そして、超高齢化社会に対しては増税以外の解決策はないとしており、経費の削減、公務員の何%カットなどマスコミの論調に対して”卑しい”と批判する。
    本書はタイトルこそ煽り立てるものであるが、内容は決して煽り立てるものではない。一つ一つ丁寧に筆者なりの考えをまとめ上げ、株主資本主義に警鐘を鳴らしている。
    立場のいかんにかかわらず一読する甲斐のある一冊である。

  • 図開架 332.107:I89
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