- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000242615
作品紹介・あらすじ
歴史意識の衰退した現在の日本社会のなかで、歴史研究の存在意義が問われている。日本古代史学の最先端に立つ著者は、この危機にみずからのフィールドから応えようと本書を編んだ。日本古代史研究の現在の到達点を整理し、古代史を志す者が持つべき「大きな問題意識」を、石母田正ら先学の仕事から学びつつ提示する第1部。古代国家論のためのいくつかの視角を示す第2部。そして第3部として、7世紀から10世紀にわたる古代日本の文明化過程を、東アジア世界の豊かな文化交流史として描いて、古代史の魅力をあますところなく示した、著者のジュネーヴ大学での講義を収める。
感想・レビュー・書評
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古代史研究の現在の状況について、初学者向けに書かれたサーヴェイ的な性格をもつ、著者の論文や講演などをまとめた本です。
本書は三部構成となっていますが、初学者にとって一番とっつきやすいのは、著者がジュネーヴ大学でおこなった講義の記録である第三部です。ここでは、とくに中国を中心とする東アジアの世界の秩序のなかで、冊封体制から離れた日本がどのように自国のアイデンティティを形成してきたのかということに焦点があてられて、古代史の流れが叙述されています。また後半では、律令体制における政治的および財政的構造についての著者自身の研究成果などが簡潔にまとめられています。
第一部と第二部は、著者がこれまで発表してきた論考などをまとめています。とくに第一部「日本古代史を学ぶ」は、この分野を学びはじめた学生などが読者として想定されている文章で、石母田正の『日本の古代国家』以来の古代史研究の諸成果がわかりやすくまとめられており、初学者にとってはたいへん有益な内容になっています。詳細をみるコメント0件をすべて表示