日露戦争 起源と開戦 上

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 23
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000242677

作品紹介・あらすじ

司馬遼太郎の『坂の上の雲』が描いたように、日露戦争はロシアの極東侵略熱によって引き起こされたものなのか。ロシア側には日本軍の力量を正しく見極めた人物が本当にいなかったのか。著者が渉猟した膨大なロシア文書館資料の分析からは、これまでの日露戦争観とは異なる実相が見えてきた。日本とロシアの対立のあいだに、戦争の主な対象、主な舞台となった朝鮮という存在をおいて、開戦へ向かう動きの全貌を描く。上巻では、千島樺太交換条約と江華島事件のあった一八七五年から、朝鮮国王高宗のロシアへの接近、朝鮮をめぐる戦争としての日清戦争、ロシアと清国の秘密同盟条約、ロシアの旅順・大連の租借、露清戦争と韓国中立化案、そして日英同盟締結の頃までを詳細にたどる。

感想・レビュー・書評

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  •  「日本人は日露戦争を司馬遼太郎の『坂の上の雲』で知った」という言葉があるように、「坂の上の雲」は実に面白くそして痛快な歴史小説であったと思うが、本書は「和田春樹」の「坂の上の雲」である。
     しかも、司馬の小説よりもはるかに史実を詳細に知ることができ、且つ面白く、真実に迫るものであると思えた。
     本書は、司馬「坂の上」執筆以降に明らかになった膨大な資料も駆使し、詳細に当時の東アジアを再現している。
     私たちは、「日露戦争後」に日本が「韓国併合」から「満州国建国」への大陸政策へと突き進み、昭和20年の「帝国の破綻」を迎えることを知っているが、本書で明らかにされている「日清戦争」前後の経過や「日露戦争」へと突き進む過程の「清国」・「韓国」・「ロシア」・「日本」の詳細な外交的動きは、決してその後の日本の「帝国主義的侵略政策」が「歴史的必然」ではなく、当時それぞれの国家の真剣かつ必死の努力の末に、まるで転がるように進んで行ったことがよくわかる。
     また、その詳細な各国外交官の動きを知る中で、「国家の外交」とは、どのようなものでどのようにして行われるのかをよく知ることができるとともに、歴史を読む面白さを実感できるという意味でも、司馬「坂の上」をはるかに凌駕すると思えた。
     本書を読むと、朝鮮半島は「ロシア」・「清国」・「日本」に囲まれた小国として、各国の力がせめぎ合う係争地とならざるを得ない地なのがよくわかるが、「韓国」の指導層が周辺大国別の「派閥」に分かれて政争を繰り広げることは、朝鮮半島の地政学的位置によるものなのか、それとも「韓国」の民族的文化的要因によるものなのか、読みながらいろいろ考えてしまった。
     また、日本が「日清戦争」を勝ち抜く中で影響力を強め、次に大国「ロシア」とせめぎあいを繰り広げる風景を読むと、ほかの選択枝はなかったのかとの思いを持ちつつ、物語を読むような興奮する思いさえ感じた。
     それにしても、当時の日本の「韓国」に対する政策の稚拙さである。王妃であった「閔妃殺害」1985年(明治28年)や、当時の「大院君」をめぐる日本の外交的動きはとても正視に耐えないとしか言い様がない。
     本書(上巻)で描かれている世界は1902年(明治35年)までである。日露戦争は1904年(明治37年)。下巻を読むのが実に楽しみである。歴史を知る楽しさを堪能させてくれる本書を高く高く評価したい。

  • 2010.03.21 朝日新聞で紹介されました。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授。1938年生まれ。東京大学文学部卒業。歴史家。日朝国交促進国民協会事務局長。
著書『金日成と満州抗日戦争』(平凡社、1992年)、『朝鮮戦争全史』(岩波書店、2002年)、
『朝鮮有事を望むのか』(彩流社、2002年)、『北朝鮮本をどう読むのか』(共編著)(明石書店、2003年)、
『検証日朝関係60年史』(共著)(明石書店、2005年)、『日露戦争 起源と開戦』(上下)(岩波書店、2009-10年)、
『拉致問題を考えなおす』(共編著)(青灯社、2010年)、『北朝鮮現代史』(岩波書店、2012年)、
『平和国家の誕生』(岩波書店、2015年)、『スターリン批判1953~56年』(作品社、2016年)、『アジア女性基金と慰安婦問題』(明石書店、2016年)

「2017年 『米朝戦争をふせぐ 平和国家日本の責任』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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