日本冷戦史――帝国の崩壊から55年体制へ

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000242844

作品紹介・あらすじ

冷戦の起源は、「大日本帝国」崩壊後の空間をめぐる米ソ英中の地政学的なせめぎあいの中にこそあった-第二次大戦後の東アジアから始まった冷戦がグローバル化していく過程と、その冷戦構造が日本政治に「内部化」され、最終的に五五年体制が成立するまでの過程とを、旧ソ連の膨大な史料を駆使しながら鮮やかに描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 【301冊目】

    本書の内容の評価とは別だが、誤字が多すぎる。米ソの関係者の名前があべこべになっているなどし、意味が通じない文章も散見される。岩波書店はまともな校閲がいないのか?なお、読んだのは、2011年10月の第1刷。

  •  ソ連政治史の研究家として高名な著者が、近年になって大量に公開された旧ソ連の史料をふまえ、日本と冷戦の関わりを改めて検証した論文集。

     従来はもっぱら日米関係の枠内でのみ論究されてきた日本の冷戦史を、著者はより多角的に捉え直す。ソ・英・中の日本への関与などにも目を向け、戦後日本を舞台とした大国間の複雑なパワーゲームの模様を活写するのだ。

     日本人の冷戦観を一新する論考である。

  • 2011年刊。著者は法政大学法学部教授。

     戦後日本占領下の政治史は、一般には日米関係からのみ捉えるだろう。変化球ならば日ソ関係(陰謀論に近いが、ソ共産党によるコミュニズム浸透)からの見方もあるかもしれない。
     が、本書は、占領下政治史のステークホルダーに、米ソはもとより、英・豪他の英連邦・中国国民党・中国共産党も含まれるとしつつ、占領下日本の動向には、米英ソ中の外交関係と冷戦過程の進展が影響したものと見て、米ソ(副次的に英中)間の外交関係の分析を通じ、アジア冷戦構図の展開を解読しようとする。

     幾つかある視点では核兵器が興味深い。
     なるほど、スターリンが米の原爆実戦配備を異常に怖れ、その開発製造に懸命となった点は、さほど新奇ではない。が、スターリンの東欧重視の理由が原爆製造開発のために必要とされるウラン鉱脈を抑える点だったこと、ウラン鉱脈の点で北朝鮮も同様の位置づけだったこと、事実上米単独の日本占領政策と東欧の支配圏構築とをバーターにした点や、その施策も人民中国成立までである、などは、なかなか興味を引く。

     加えて、外交現場の臨場感、刻々変動する情勢に即した方針変更や、英米の思惑の違いだけてなく、米国内・ソ連内でのメンバー間の方針の違いも浮き彫りにされ、かような緊張感ある叙述は買いである。

     他方、本筋とは離れるが、徳田球一書記長下の日本共産党がシベリア抑留者の解放を、強く積極的にソ連共産党に求めていた点も新奇。
     もっとも、本書で日本共産党の占領下での活動を詳述する点は腑に堕ちぬところもないではない。
     そもそも、政権獲得可能な議席を取れず、また、後の武装闘争路線も現実的な方法論ではなかった中で、日本の冷戦史の中核を構成したとは考えにくいからだ(ただし、日本共産党の戦後史として見れば、それ自体は間違いなく面白いのだけれど…)。

  • ロシア資料を用いて冷戦史の再構築。

    従来の日米関係史との違いを明確にしながら論じれば、より良いものになる可能性が多いにある。今後やる価値のあるテーマ。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:319.1038//Sh54

  • 319.1:Sh

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著者プロフィール

法政大学法学部国際学科教授。
1948年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学法学博士。成蹊大学教授をへて1988年より現職。専門:ロシア政治、ソ連史、冷戦史。
主な著書:『ソビエト政治と労働組合─ネップ期政治史序説』(東京大学出版会、1982年)、『ソ連現代政治』(東京大学出版会、1987年/第2版、1990年)、『ゴルバチョフの時代』(岩波新書1988年)、『「ペレストロイカ」を越えて─ゴルバチョフの革命』(朝日新聞社、1991年)、Moscow under Stalinist Rule, 1931-34(Macmillan, 1991)、『スターリンと都市モスクワ─1931~34年』(岩波書店、1994年)、『独立国家共同体への道─ゴルバチョフ時代の終わり』(時事通信社、1992年)、『ロシア現代政治』(東京大学出版会、1997年)、『ロシア世界』(筑摩書房、1999年)、『北方領土Q&A80』(小学館文庫、2000年)、『ソ連=党が所有した国家─1917~1991』(講談社、2002年、2017年文庫版『ソヴィエト連邦史』予定)、『アジア冷戦史』(中公新書、2004年)、『モスクワと金日成─冷戦の中の北朝鮮1945~1961年』(岩波書店、2006年、露版、2010年)、『図説 ソ連の歴史』(河出書房新社、2011年)、『日本冷戦史─帝国の崩壊から55年体制へ』(岩波書店、2011年)、『ロシアとソ連 歴史に消された者たち─古儀式派が変えた超大国の歴史』(河出書房新社、2013年)、『プーチンはアジアをめざす 激変する国際政治』(NHK出版新書、2014年)、『日ロ関係史─パラレル・ヒストリーの挑戦』(共編著、東京大学出版会、2015年)、『宗教と地政学から読むロシア─「第三のローマ」をめざすプーチン』(日本経済新聞出版社、2016年)。論文に「クバン事件覚え書」(『成蹊法学』No.16、1982年)、「労働組合論争・再論─古儀式派とソビエト体制の視点から」(『法政志林』No.1-3、2016年)など。

「2016年 『ロシアの歴史を知るための50章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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