敗北を抱きしめて〈下〉― 第二次大戦後の日本人

制作 : 三浦 陽一  高杉 忠明  田代 泰子 
  • 岩波書店 (2001年5月30日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000244039

作品紹介

敗北を抱きしめながら、日本の民衆が「上からの革命」に力強く呼応したとき、改革はすでに腐蝕しはじめていた。身を寄せる天皇を固く抱擁し、憲法を骨抜きにし、戦後民主改革の巻き戻しに道をつけて、占領軍は去った。日米合作の「戦後」がここに始まる。敗北からの蘇りと簒奪された改革を壮大に描いた20世紀の叙事詩、完結。ピュリツッァー賞受賞。

敗北を抱きしめて〈下〉― 第二次大戦後の日本人の感想・レビュー・書評

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  • 戦勝国アメリカによる 日本の非軍事化と民主化プロセスを整理した下巻。天皇制と憲法が民主化の柱

    天皇制を民主化の柱にしたのは、日本人にとっての天皇は アメリカ人にとってのキリストと同じだから。軍部を完全制圧できたなら、天皇を平和と善に役立つ存在にしようとした。相互の友好関係を構築する方が アメリカの長期利益になると判断した

    日本のアメリカ化だけでなく、日本にいるアメリカ人の日本化も進んでいたといている

    思ったのは、もし アメリカが 天皇制を廃止したら どうなっていたのか。もし 戦争に勝っていたら どうなっていたのか。今の民主主義は なかったかもしれない

  • ピューリッツアー賞を含め、複数の賞を受賞したに恥じない内容であった。豊富な資料をベースに、日本の様々な階層に焦点をあてながら、戦後の日本を写実的に描きだそうという努力には圧倒された。一方で、欧米やアジアの読者達の思いへの配慮も忘れない。特に、戦争責任が曖昧化されていく複雑怪奇な過程を、戦争の勝者・被害者の目からみても、ある程度、事実を事実として、つかめる様に描こうとする態度には感服した。

  • 下巻では、第四部「さまざまな民主主義」において、いかにGHQが天皇を利用することで日本の占領政策を有利に進めようとしたか、そのために国民主権と象徴性天皇という2つの概念を新たな憲法で両立させようとしたかという動きが克明に描かれていく。

    また、日本的経営を考える上で本書の最終章にあたる「成長を設計する」は様々な示唆を与えてくれる。戦後の日本的経営を形成する要素は数多あるが、そのうちの重要な要素として銀行を中心とする間接金融による企業の「系列化」というメカニズムがある。本書では、財閥がGHQの指令により解体させられた後、結果として旧財閥の果たした役割をいかに銀行が果たしたか、そして銀行に対する官僚のコントロールにより日本の国家資本主義(ケイジアン的資本主義)とも呼べる経済政策がどのように形成されたかというメカニズムを克明に理解することができる。

    戦後日本社会を考える上で、日本人ではなくアメリカ人が描いた歴史書として白眉な本書は、その極めて高いリーダビリティと日本社会に対する温かいヒューマニスティックな視線も相まって、傑作と呼ぶべき一冊。

  • これは持ってません 上巻は持ってます どこにあるか見つけるまで大変でした。
    安倍首相はこの本を読んでいるのでしょうか?歴史観は政治家にとって 重要だと考えます

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  • 日本人の来歴を戦後に探る。「日本人とはみんなだ」というスタンスを真摯に貫いた研究。それだけでなく、「負けた時、死者に対してなんと説明すればいいのか」という根源的な問いは僕にとって極めて重要な衝撃だった。

  • (2012.08.25読了)(2012.01.17購入)
    【8月のテーマ・[太平洋戦争を読む]その③】
    副題「第二次大戦後の日本人」
    アメリカ軍占領下で何が行われていたのかについて、詳細に記述してあります。
    統治のためには、天皇制の維持が必要と判断し、戦争責任からは除外するように動いたようです。憲法改正の草案は、日本側に任せると明治憲法の手直し程度にしかならず、民主化が不可能と判断し、自分たちで作成した草案を日本側に渡し、これを基に新しい憲法を作るように提案してきたこと。
    占領下では、検閲が行われ、検閲が行われていることが、読者に伝わらないように処理することがマスコミに求められていたこと。伏字とか、空白は許されなかったのです。事前検閲で、全面的に没になることもありました。
    東京裁判やBC級戦犯についても述べてあります。A級戦犯については、対象がかなり恣意的に選ばれていることなども記されています。

    【目次】
    第四部 さまざまな民主主義
     第九章 くさびを打ち込む 天皇制民主主義(一)
     第一〇章 天から途中まで降りてくる 天皇制民主主義(二)
     第一一章 責任を回避する 天皇制民主主義(三)
     第一二章 GHQが新しい国民憲章を起草する 憲法的民主主義(一)
     第一三章 アメリカの草案を日本化する 憲法的民主主義(二)
     第一四章 新たなタブーを取り締まる 検閲民主主義
    第五部 さまざまな罪
     第一五章 勝者の裁き、敗者の裁き
     第一六章 負けたとき、死者に何と言えばいいのか?
    第六部 さまざまな再建
     第一七章 成長を設計する
     エピローグ 遺産・幻影・希望
    下巻注
    訳者あとがき
    索引

    ●天皇は平和に役立つ(12頁)
    天皇にだけ責任を負う独立した軍部が日本にある限り、それは平和に対する永久の驚異である。しかし、天皇が日本の臣民に対して持っている神秘的な指導力や、神道の信仰が与える精神的な力は、適切な指導があれば、必ずしも危険であるとは限らない。日本の敗北が完全であり、日本の軍閥が打倒されているならば、天皇を平和と善に役立つ存在にすることは可能である。
    ●都市爆撃(16頁)
    1945年6月17日付の内部覚書のなかで、フェラーズはこの都市爆撃を「すべての歴史の中で最も無情かつ野蛮な非戦闘員殺戮行為の一つ」だと書いている。
    「ヨーロッパの戦争は政治的でもあったし社会的でもあった。それに対して太平洋の戦争は人種的であった」
    ●天皇であるがために(62頁)
    後水尾は水痘を患っていたが、「現御神」であったために灸療法を受けることが許されなかったので、退位したという
    支配する王として食べなければならない「聖なる」白米の代わりに、ソバを堪能したいために退位した天皇の話もあった
    ●天皇退位(71頁)
    1945年10月下旬、近衛公爵が天皇退位の可能性を公然と口にし、そのあと内閣の圧力によって訂正したために動揺が起きた。近衛は、日米開戦を回避できなかったこと、また戦争の早期終結を実現できなかったことについて、天皇は個人的に重大な責任を負っていると考えており、それをいつになく率直に語ったのであった。
    ●日本案内(109頁)
    この案内には、初期の明治政府は旧薩摩、長州藩出身の旧武士階級に支配されており、彼らは憲法のモデルを西欧に求めた結果、とんでもない雑種を生み出した、と記されていた。「明治憲法はプロシアの専制政治を父に、イギリスの議会政治を母に持ち、薩摩と長州を助産婦として産み落とされた、両性具有の生き物である」と、この案内は断じていた。
    ●広島・長崎(210頁)
    壊滅した広島と長崎の写真が一般国民の前に示されたのは、占領も終わり、原爆投下からちょうど七年たった、1952年8月だった。
    ●東京裁判(268頁)
    マッカーサー元帥は、レーリンクとの私的な会話の中で、自分としては、真珠湾のだまし討ち攻撃だけに罪状をしぼった略式軍法会議のような裁判をすれば正義は十分果たされると思う、と語っている。
    ●先例のない裁判(282頁)
    冒頭陳述でジョセフ・キーナン首席検察官は、国際法の下に国家の不法行為について個人としての罪を問う点では、この裁判が「先例のないものであることを率直に認め」た。
    ●勝者の裁き(359頁)
    バターン死の行進の「命令責任」を問われて有罪となった本間雅晴陸軍中将も、家族に宛てた最後の手紙の中で、「米国が公正な国だというのは真赤な嘘だ」と断言し、空襲や原爆で死んだ何十万人という人々に言及して、「宇宙上国際関係において正義というものは存在しない」と暗い指摘をした。

    ☆関連図書(既読)
    「昭和天皇独白録」寺崎英成著・マリコ・テラサキ・ミラー著、文春文庫、1995.07.10
    「憲法と私たち」憲法問題研究会編、岩波新書、1963.04.20
    「憲法読本 上」憲法問題研究会編、岩波新書、1965.04.27
    「憲法読本 下」憲法問題研究会編、岩波新書、1965.04.27
    「占領下の言論弾圧」松浦総三著、現代ジャーナリズム出版会、1974.01.30
    「秘録 東京裁判」清瀬一郎著、読売新聞社、1967..
    「パール判事の日本無罪論」田中正明著、小学館文庫、2001.11.01
    「日本無罪論 真理の裁き」パール著・田中正明訳、太平洋出版社、1952.05.03
    「落日燃ゆ」城山三郎著、新潮文庫、1986.11.25
    「BC級戦犯裁判」林博史著、岩波新書、2005.06.21
    (2012年9月7日・記)

  • 読み終えた感想としては、思っていたのと違ったなあということ。10年余りの積ん読の間、この本は戦争に敗れ打ちひしがれた日本の人々が、それでもたくましく這い上がってきた道程を描いた本だと思っていた。だから、3・11後のいま読もうという気になったのだ。
    だが読んでみれば、日本人とは……したたかで、軽佻浮薄な人々だったのだという印象。昨日までは鬼畜米英と言っていたのが、クルリとアメリカ礼賛に転じ、弱い国民の立場になって当時の指導者を糾弾する。まあ、これでいいのだし、どこの人々でもこんなものだろう。そもそも、日本人だけが特別に抑制の利いた秩序立った人々なんだと思うことのほうがおかしいよね。
    また、日本は戦後の範をアメリカにとったけど、占領軍も日本をいいようにしてくれたもんだなという気持ち。当初、理想郷を作ろうとした点は、満州での日本の振る舞いを髣髴とすらさせるし、その後、冷戦が深刻になった途端、軍隊をもつよう言い出すとは、それ以上のご都合主義だなあと。

  • 現代の日本がなぜこうなのか、疑問に思う人はこの本を繙くがいい。

    米国人が書いたこの本。日本にも米国にもどちらに対してもフェアー。

    新聞の投書から文学書から学術書からを縦横無尽に渉猟していて、なぜ外国人がこれだけ調べられたのだろうか。奥さんが日本人のためか。

    この本を読んで、戦後日本はまだ米国の呪縛から解放されていないこと、今の低迷は終戦時に起源を発していることがわかり、それだけに克服するのは容易でない。

  • 内容の濃い良心的な作品。
    終戦後の混乱期の日本を描いて、光の当て方に独自性があります。
    しんどい内容なので、読み込むのは大変。
    他に人はどう書いていることなのだろうかと思うが、とても調べきれない…
    占領期に官僚が強化された体制が、今日に至る問題に続いているという指摘には、考えさせられます。

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