敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人

制作 : John W. Dower  三浦 陽一  高杉 忠明  田代 泰子 
  • 岩波書店
4.02
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本棚登録 : 425
レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000244213

作品紹介・あらすじ

敗北を抱きしめながら、日本の民衆が「上からの革命」に力強く呼応したとき、改革はすでに腐蝕し始めていた。身を寄せる天皇をかたく抱擁し、憲法を骨抜きにし、戦後民主改革の巻き戻しに道をつけて、占領軍は去った…新たに増補された多数の図版と本文があいまって、占領下の複雑な可能性に満ちた空間をヴィジュアルに蘇らせる新版。

感想・レビュー・書評

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  • 象徴天皇制と戦争責任、東京裁判、新憲法制定など今尚、議論の対象となりながらも明確な答えを見いだせていない課題とGHQの下で急ピッチで進められた民主主義改革を扱った下巻。
    GHQによる徹底した検閲や憲法草案作成の過程など興味深い内容がいくつもある中でも「天皇制」について日本人では踏み込めないような鋭く痛烈な指摘が展開されている。
    教科書には載っていない戦後史の真実を知ることができて現在の日本の在り方についても考えさせられる非常に価値ある名著。

  • やっと読み終わった日本の戦後。客観的といえばそうだけれど占領国側の視点といえばまたそれもそうだ。結局のところ、何とも言えない。一言で言い表せないのが戦後の日本だということか。

  • 上巻を読み終わったとき、「どうして日本人にこういう戦後史が書けないのだろう?」と思っていたが、下巻の天皇制を扱った章を読んで、確かにこれは日本人には書きにくかろうと納得した。
    天皇は、何らかの形で戦争責任を取るべきであったという筆者の主張は明確だ。そして、なぜ天皇の戦争責任が問われなかったのかということを丹念に検証している。今上天皇の慰霊の旅は、そうした経緯を踏まえてのことなのかもしれない。
    日本国憲法の制定に関しても、この著作を読むことでかなり克明にその経緯を知ることができた。憲法改正の動きが活発になりつつある今だからこそ、これらの章の持つ意義は大きい。
    「平成」と年号が代わって早29年。「戦後」は本当に終わったのだろうか?それとも、まだ戦後を引きずっているのだろうか?
    現在の日本を考える上で、この著作はまだまだその輝きを失ってはいない。

  • 上巻に引き続き一気読み。天皇制がなぜ維持されたか、なぜ戦争責任を一切負わなかったのか、天皇のために死んだ国民に対する謝罪は、終戦直後の飢えた国民のために天皇家の財産を利用することはなぜなかったのか。占領軍の検閲と情報統制のため、世界が冷戦状態になっていることなどつゆ知らず、非武装がいきなり解除されるなどの「逆コース」が急速に進行、外交とはしょせん二枚舌であり、力のないものは敗者となるのが必然。占領解除後の日本の経済力について「紙ナプキンでも作っておれば良い」

  • 構成がわかりにくい

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介
    敗戦後、普通の人々はどう暮らしていたのか?貴重な写真と本文でたどる。

  • 原題:Embracing defeat
    著者:John W. Dower
    翻訳:三浦陽一 高杉忠明 田代泰子


    【目次】
    凡例
    下巻 写真・図版出典一覧

    第4部 さまざまな民主主義
     第9章 くさびを打ち込む――天皇制民主主義(1)
     第10章 天から途中まで降りてくる――天皇制民主主義(2)
     第11章 責任を回避する――天皇制民主主義(3)
     第12章 GHQが新しい国民憲章を起草する――憲法的民主主義(1)
     第13章 アメリカの草案を日本化する――憲法的民主主義(2)
     第14章 新たなタブーを取り締まる――検閲民主主義
    第5部 さまざまな罪
     第15章 勝者の裁き,敗者の裁き
     第16章 負けたとき,死者になんと言えばいいのか?
    第6部 さまざまな再建
     第17章 成長を設計する

    エピローグ 遺産・幻影・希望
    下巻注
    増補版への訳者あとがき
    訳者あとがき
    索引

  • 戦後史を膨大な文献とあらゆる階級の人の聞き取りをもとに外国人の立場からまとめた本。あまりのおもしろさと内容の新鮮さに一気に読んでしまった。特にマッカーサー元帥が天皇制民主主義をとことん維持しようとしたこと、日本国憲法はたった1週間で限られた外国人スタッフにより作られたものであること、戦後の出版物はほぼ全てがGHQの検閲のもとにあったこと、等といった絶対に学校では教わらないようなことが多く記載されている。天皇制や東京裁判の評価をここまで深く書くことができるのは外国人ならでは。GHQは多くの改革を行ったが、本質的に日本は変わっていないのではないか、という著者の考察には頷ける。戦後70年を迎えるにあたって、全日本人に読んでいただきたい名著であることは間違いない。

  • 占領から独立にかけて、当時の遺産がいかに現在を規定しているのか。

    特に日米被害者意識、歴史認識に与えた影響を描くのはおもしろい。

  • ○この本を一言で表すと?
     第二次世界大戦直後の日本のいろいろな階層で起こったことを描き出した本


    ○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
    ・敗戦後の日本についてかなりの文献を集めて検討され、かなり踏み込んだ本だと思いました。その本がアメリカでも様々な賞をとったというのは興味深い話だなと思いました。

    ・昭和天皇の名前「裕仁」がこれほど何度も登場する本を初めて読みました。

    ・増補版になって写真の掲載を増やしたそうですが、そのおかげで当時の様子が視覚的にもわかってよかったです。

    ・敗戦直後の様子が写真とともに紹介されていて、かなり迫力があるなと思いました。特に日本人・外国人捕虜の痩せっぷりが想像以上にすごかったです。1945年8月15日の玉音放送で敗戦が確定した後も、海外に出ていた日本人が戻ってくるまでにいろいろあったり、待っている人にもいろいろあったり、戦争の影響が終戦後にピタッと止まるようなことはないのだなということがよくわかりました。敗戦後、日本人が勝利した連合国側が想像もしていなかったほどの受け入れっぷりをみせ、民主主義化などの占領政策をむしろありがたいもののように受け取ったというのは、日本人の国民性というものなのか、上層部や前提条件が変わればコロッと態度が変わるところが出ていて印象的だなと思いました。(第一部 勝者と敗者)

    ・戦後のそれまで目指していたものが虚像だと感じた脱力感、生活苦による絶望などがあり、子どもたちの遊びも自虐的な大人を真似たものになっているというのは、その時代を知らない現代に生きている人には実感が得られにくいことだろうなと思いました。米軍の兵隊を慰めるために国家として積極的に慰安婦を集めたこととその経緯は初めて知りました。「パンパン」と言われる人たちがいたことは別の本で知っていましたが、自然発生的に生まれたものと考えていました。闇市が当時大いに発展していたことも本やマンガで知っていましたが、その闇市を取り仕切る組を政府側も頼みにしていたり、そこで動く金額が大きかったりすることなどは、現代の発展途上国で見られる姿と似ているなと思いました。生きることが必死な中で明るい歌が好まれたり、英会話の本が売れるはずと見込んで大ヒット商品を生み出したり、英会話のラジオで国民に明るさを取り戻そうとした名物アナウンサーがいたり、大変な状況の中でも何か成果を生み出していく人たちはすごいなと思いました。(第二部 絶望を超えて)

    ・急速に様々な制度が導入され、実施されていく中で、それらをかなりの速度で受け入れている日本人の姿や、改革を実施する側の米国側が日本で過ごす姿などが印象的でした。数年前には戦争をしていた間柄でのそれぞれの姿は、客観的には非常に考えにくい状況でしょうし、当時の日本を直接見ていない人にとっては聞いても信じられないような話だったのだろうなと思いました。アメリカ人の受け入れられっぷり、尊敬されっぷりがアメリカ側のマンガや芸者等がアメリカ人を迎える写真などでよく伝わってきました。(第三部 さまざまな革命)

    ・天皇が戦犯になるかならないかという話で、今まで読んできた本では日本人側が積極的に天皇を守り通したということで一貫していましたが、この本ではかなり違った視点で書かれていて印象的でした。日本人がこの時代の話を書くことと違ってタブー等を感じないからか、天皇自身の責任を様々な文献で証拠づけていて、これらの証拠が存在したにも関わらず、マッカーサーの意向や統治上の利便性などからかなりあからさまに偏った形で天皇が無罪とされた経緯は初めて知りました。天皇本人が意図的に責任から逃れたのか、そうせざるを得なかったのか、日本ではかなりデリケートな話題で、今までとは違った踏み込んだ話を知ることができてよかったです。日本国憲法成立の経緯について、ある程度は他の本でも知っていたものの、かなり詳しい経緯が書かれていてよかったです。日本側がかなり甘く見て明治憲法を少し修正する形で案を出していたことは知っていましたが、そうするに至った当事者の考えや感情的なものまでかなり生々しく書かれていて興味深かったです。憲法案をアメリカ側で一週間で作り上げた経緯も、見方によってかなり集中的に力を入れて書き上げたと見るか、その程度しか手間を掛けなかったと見るか、かなり変わってきそうだなと思いました。案が出された後にアメリカ側で原案が作成された経緯があっさりと世間に広まったり、邦訳する段階でかなり意図的に意味を曲げて行ったりする日本とアメリカとのやりとりはかなり臨場感があり、いろいろな思惑が絡んでいたのだなとよくわかりました。検閲については江藤淳の「閉ざされた言語空間」でかなり詳しく載っていましたが、この本では少し違った視点で、そのタブーの中でどう出版活動が行われたのかなどが描写されていて当時の感覚がある程度つかめるなと思いました。(第四部 さまざまな民主主義)

    ・東京裁判についてもいろいろな本で書かれてあってある程度は知っていましたが、その経緯が他の本とは違った視点で書かれていて興味深かったです。東京裁判の戦犯以外の当事者についてかなり詳しく書かれていて、東京裁判とその周辺の話まである程度理解できたように思いました。他の本だと「考えるまでもなく不当で問題外」という書き方がされていることが多いですが、国際法との関係について法律学的にどの点については正当でどの点については不当なのかなどが詳しく説明されていました。一人パル判事だけが反対していたという印象がありましたが、他の判事もいくつかの点については反対していたり、判断を留保していたりして、かなり複雑な裁判だったのだなと感じました。(第五部 さまざまな罪)

    ・いくつかの「パージ」による影響や、占領後の日本について書かれていました。マッカーサーが日本をドイツに比べて少年扱いした聴講記録が日本に伝わると、あっという間にマッカーサー神話が崩れて名誉都民とする話や銅像を建てる話が立ち消えになったことは初めて知りましたが、この転換ぶりも戦後の転換ぶりと合わせて大きな転換で、ここまで大きく何度も変わっていく日本人のよく言えば柔軟さ、悪く言えば流されやすさが際立っているなと思いました。いろいろな本で日本軍にかなりの被害を出したとされる辻政信が占領終了後の人気が出て国会議員になったというのは驚きました。戦後に帰還兵がかなり雑に扱われていたことも「空気」なら、占領後に戦犯として捕まったものがよく扱われていたことも「空気」で、同じような条件でもどのような「空気」にあるかによって扱いが全く変わってくるというのは、日本だけの話ではないでしょうが、興味深く、また怖い話でもあるなと思いました。(第六部 さまざまな再建)


    ○つっこみどころ
    ・様々な文献等で証拠付けられていながら、それらを判断する著者の視点にどこか一方的なものを感じ、客観的な内容が書かれているという印象は少し弱かったように思いました。

    <上巻のレビューと同じ>

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