バウドリーノ(上)

制作 : Umberto Eco  堤 康徳 
  • 岩波書店 (2010年11月11日発売)
3.85
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  • 49レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000244275

作品紹介

『薔薇の名前』で世界の読者を魅了したウンベルト・エーコが、ふたたび中世を舞台に放つ物語。神聖ローマ皇帝フリードリヒ・バルバロッサに気に入られて養子となった農民の子バウドリーノが語りだす数奇な生涯とは…。言語の才に恵まれ、語る嘘がことごとく真実となってしまうバウドリーノの、西洋と東洋をまたにかけた冒険が始まる。

バウドリーノ(上)の感想・レビュー・書評

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  • これ、面白すぎる!!これから下に突入~
    私みたいな一般的な知識しかなくても十分楽しめました!
    農民の子だったバウドリーノが神聖ローマ皇帝のフリードリヒ赤髭王に気に入られて養子になり、個性豊かな仲間と出会い、東のどこかにあるという「司祭ヨハネの王国」を探しに行くことに…という話。
    バウドリーノがコンスタンティノープルで助けた高官ニケタスに物語るという形式で書かれているので、途中で時々語っている時代に戻るのだけれど、その息継ぎが読んでいて心地いい。ニケタスも略奪されたコンスタンティノープルから脱出する途中で切羽詰っているはずなのに、最後かもしれないとか言いながら料理人にすごいご馳走とか作らせてたりするのが、らしいというか(笑)いっそリアルな感じがして面白かった。歴史上の人物も、フィクションの人物も生き生きしてて、ニケタスの隣でバウドリーノの話をもっと聴きたい!と感じながら読んでいた。
    読みやすくて方言とかも楽しい訳をしてくれた訳者の堤さんにも感謝!

  • エーコは自分にとってかなり特別な作家であると、思う(あやふやな言い方ですいません)。面白さを問うことはエーコの著作を読むことの自分にとっての第一義ではない。複雑さ、隠喩、そして文脈と切り離された言明。そんなものを常に期待しているのだと思う。例えば本書の最後に

    『あなたがこの世で唯一の歴史家だと思わない方がよい。遅かれ早かれ、バウドリーノ以上に嘘つきの誰かが、それを語ることになるでしょうから』-『バウドリーノはもういない』

    という文章がある。嘘と真が輻輳する物語を語るバウドリーノという主人公。その主人公以上の嘘つきが出てきてこの物語を語る筈だというのである。エーコはバウドリーノと同じイタリア北部のアレクサンドリーナ出身。その同郷の後世の嘘つきがエーコ自身という構図が小説の文脈からははみ出たところで示唆される。そういう読み方が強制されている訳ではないけれど、そう読むこともできる(というか読みたくなる)。そんな文章が溢れていることがエーコの著作の最大の特徴なのだろうと思う。だから読み手は心して掛からねばならない。たかだか読書といえども真剣勝負の意気込みにならざるを得ない。けれど、相手は碩学の人エーコである。しかも舞台は中世ヨーロッパという完全に相手の土俵である。最初から勝負になる筈はないのである。

    何もそんなに真剣になる必要もなかろう、という人もいるだろう。もちろん、この「バウドリーノ(上・下)」に関して言えばそんなことを気にせずに楽しんで読んでしまうこともできる。もっとも薔薇の名前にしたところで、推理小説を読むように読んでしまうことだってできるとは思う。もちろんそんな風に読んでしまうことはもったいないことだと思うけれど。それでも敢えて「バウドリーノ」を物凄く矮小化して要約するなら、これは中世版「フォレスト・ガンプ」+「ラ・マンチャの男」(ドン・キホーテ、ではなくて)。
    ところがそんな風に要約した途端にエーコの持ち味は失われてゆく。物語の骨子にエーコらしさがある訳ではなく、往々にしてエーコのドラマツルギーは王道的。時に何か別の物語を下敷きにしているともみえる。そこに載せられていくエピソード、引用、史実、空想などのごちゃまぜが、エーコの話を読むものの脳をぐちゃぐちゃとかき回し、興奮を生み出す。そしてあちらこちらにまぶされた謎かけ。時に引用される文章が敢えて古典語のままになっていたりする。それを目にする作中の人物が「意味は解らぬがこう書かれていた」というようなこと言うので放って読み飛ばしてしまうと、いつまでも説明されることがない。ところが、その意味が解っていると別の読みが立ち上がるということもある(そこへ自力で辿り着くには自分は少々古典の基礎が足りないけれど)。

    薔薇の名前が多くの注釈書や研究本を生んだように、この物語の中には数々の伝説的逸話とそれに対するエーコの解釈のようなものが含まれており、個別に取り出してそれが何を指しているのかを探ってみる人々が出てくるのだろう。自分の不勉強を思い切り棚に上げておいて告白するが、そういう注釈書が出ないかなと思う。

    もちろん、そういう一通りの読み方を待っているエピソードもたくさんある一方で、エーコは何と言って「開かれたテキスト」の著述家だ。中世の物語を借りた幾つものシニカルなメッセージも隠れている(筈!)。時を経て読み返す時に、きっとまた違った物語が立ちあがるのだろう、という予感がする。

  • プレスター・ジョン伝説を背景に第4次十字軍で廃墟と化したコンスタンティノープルで、赤髭フリードリヒの容姿たる主人公が虚実定かならぬ半世紀を語る。

  • 最初のシーンは印象的。第四回十字軍によって略奪されるコンスタンティノープルで主人公バウドリーノが歴史家ニケタスを救出するところから始まる。
    そこからバウドリーノが神聖ローマ皇帝の養子となった生涯を記録に留めるよう語り出す。
    淡々と話が進んで行く調子で、今まで読んだエーコの作品とは大分趣きが異なる作品。

  • 感想は下巻で

  • 中世イタリア、ドイツの話が中心。史実とフィクションが混じっていてちょっと難しい。物語として単純に読んでも大丈夫だけど、日本人には馴染みが薄くて分かりにくい。
    世界史詳説という本を片手にしながら、Wikiを眺めながらどこまでが本当の話かを確かめながら読んだ。

  •  13世紀、ほぼ野蛮人に等しい十字軍の乱入で陥落したコンスタンティノープルでビザンツ帝国書記官長ニケタスはギリシャ語を流暢に話すバウドリーノというラテン人に助けられた。バウドリーノは歴史家であるニケタスに、彼自身の歴史を聞いてくれと頼む。
     バウドリーノは神聖ローマ帝国の治下で同盟と対立を繰り返すイタリア自治諸国の狭間の寒村の農民の子だが、類い稀な言語能力を示し、しばらく聞いているとその言語を話すことができてしまうのだった。神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ赤髭王は、この寒村でドイツ語を流暢に話す少年をみつけ、聖人も皇帝側についたというお告げとして陣営に連れ帰る。それを端緒にバウドリーノは皇帝の養子として学問の道を歩み始めるのだ。

     バウドリーノは言語の天才。そして言葉というのは嘘をつくためにあるのだ。

     「語る嘘がことごとく真実となってしまう男」という本書の紹介文を読むと『ほら男爵の冒険』を思い浮かべるが、ちょっとそうではない。バウドリーノは政治的言説を生み出す天才で、時宜に適った言説は真実になるというのが正しいのではないか。上巻ではイタリアを平定しようとする赤髭王の苦闘と、彼の宮殿でのバウドリーノの師匠オットーの「司祭ヨハネの国を探せ」という遺言に突き動かされていくバウドリーノの話が展開する。「司祭ヨハネの国」の権威をフリードリヒの統治に使うのだ。そこにさらに聖杯伝説が絡んでくる。
     『薔薇の名前』に比べたら確かに軽い味わいだが、エーコが描く中世世界はそんな薄っぺらなものでもない。バウドリーノの生まれた村が要塞を築き、フリードリヒに楯突き、バウドリーノはそれを仲裁するのだが、これも「アレッサンドリア」と名付けることで都市ができるのだ。ちなみにそこはエーコの故郷。『バウドリーノ』はバウドリーノ並みの嘘つきエーコが書いた物語。

     司祭ヨハネの国は東方にあると信じられた、ほとんど楽園に近いキリスト教国であるが、インドにあるとも言われ、われわれ読者はそんなものはありはしないと知っていて読むのだが、さてエーコ先生はどんな罠を仕掛けてくることか。
     ともあれ、帯にもあるようにある種の冒険小説として、どんどんページをめくってしまう。

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介
    ローマ帝国フリードリヒ1世の養子となった農民の子バウドリーノの破天荒な生涯。

  • 上巻はわりと、史実に則ってかっちりと展開していく。このまま終わったらつまんないな、と思っていたけれど、下巻に入ってから一挙にファンタジーの世界へ。しっかりと期待に応えてくれた。「一角獣と貴婦人」の貴婦人とバウドリーノとの恋のくだりはうっとりとしながら読んだ。中世だけにどれだけ残酷な場面も、エーコならではのユーモアがまぶされていて、そのぶんよりいっそう懐の深い物語になっている。

  • 中世美学も創作も「なんでも」できるイタリア人哲学者兼作家の一作。東方・ジパングを目指すヨーロッパ人の精神の一端も描かれ、マルコ・ポーロの東方見聞の動機もより鮮明に想像できます。

    九州大学
    ニックネーム:天神(あまがみ)ルナ

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