検証 バブル失政――エリートたちはなぜ誤ったのか

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000244794

感想・レビュー・書評

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  • 副題のエリートたちとは、大蔵官僚と日銀の面々。アメリカ政権、FRB、日本総理大臣、大蔵省と日本銀行の関係。外圧と政治的圧力、官公庁で圧倒的な権限をもつ大蔵省。タイトルの失政とは、そういうことが含まれている。

  • アメリカがめちゃくちゃ圧力をかけるぐらい日本に勢いのあったのだなということを痛感。そしてアメリカはいまそれを中国に対してやってるんだろうなー。トランプ大統領が搭乗するまでもなく、ずーっとアメリカはアメリカファーストなのですね。

    日銀のとりあえず中央値の5%に戻すべしという考えもよくわからないね。今となっては。0だしね。内部の論理を外部に押し出すときには大体失敗するものなのだなと痛感。なんとなくで数字を決めることの恐ろしさですね。

  • ボリュームあるが良書。

    小学3-4年の頃だったか、親に「どうして日本がアメリカと戦争をした時、みんな反対しなかったの?」と尋ねたが、回答が得られず、首を傾げた。昭和一桁生まれの、WW2で疎開した世代の親である。

    後半(p.286)1989年4月には「米国に進出している邦銀の数は事務所も含めて総数で69行(…)2年半で30行増えた。」とある。
    現在、都銀5行、信託3行、地銀64行までを合計して72行…のほぼ全ての銀行が海外に進出していた規模という、凄まじい数だ。

    自身はこの当時、既に大学生だったが、もし子に「どうして日本の地価や株価が上がり続けるなんてバカなことを、いい大人がみんな信じていたの?」と問われても、答えられる自信はない。

    本書では、アメリカからの圧力、大蔵省を巻き込めなかった、生え抜きプリンスを守りたかった…等、バブル発生および崩壊の芽を未然に防げなかった言い訳をひとつひとつ丹念に潰してゆく。

    「検証バブル失政」(岩波書店、軽部謙介著)
    Day221


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  • 時事通信のジャーナリストである著者は、1980年代末の資産バブルの対応に、大蔵省、日銀の俊英達が何故遅れてしまったかを本著で描き出しています。

    当時の米国、そしてその意を介して動く日本の政権からの内需拡大のための金融緩和要求という圧力による日銀への呪縛、日銀法改正前にその独立性が弱かったことや、土地融資総量規制導入に長らく逡巡した上、いざ導入に際しては以降の不動産価格の下落による銀行のバランスシート毀損の予想を全く欠いていた銀行当局。資産バブルが隆盛を極めていく中で、その対応が後手に回る様子を、当事者達が囚われていた制約を軸に抉り出して行きます。

    円高による輸入物価の下落などで物価がそれほど上昇していなかったため、不動産などの資産価格の暴騰に対処するための公定歩合の利上げに機動的に動くことができず、結果として1980年から1989年まで金融緩和を継続してしまったことや、BISの自己資本比率導入に際して日英米での邦銀の自己資本に株式の含み益を参入するかどうかで激論をたたかわす場面を興味深く読みました。結局、45%の株式含み益の参入が認められるのですが、当時の株高により自己資本比率を達成した邦銀が、ノンバンクなどを通じて不動産融資を一層拡大させてしまったのもバブルの助長となってしまいました。

    日銀は89年5月に公定歩合を3.25%へと、87年2月に2.5%に下げてから実に2年3か月ぶりにあげるのですが、この利上げは後々まで遅すぎたと評されます。この間に資産バブルは膨らみ続け、破裂後の痛みが増すことになってしまいます。更に、この後矢継ぎ早に利上げが行われたため、金融引き締めが強化されたためバブルからの経済回復が遅れることとなったと一般に説明されています。本書では、総量規制の導入までで、その後のバブル処理や失われた20年には触れられていません。

    著者は、米国の利下げ圧力に抗して利上げを断行した西独を引き合いに出し、日本の金融行政当局にそうした気概を持った人間がいなかった点を、現在にも続く日本の統治構造の問題の一つとして指摘しています。日本では、一つの方向に大きな力が働いて進むとき、体をはってでも異を唱える人が少ないともよく言われます。日本ではそれがゆえに選良となれるのかも知れませんが。

  •  1985-1990年「バブル経済」期の金融政策決定過程を検証したノンフィクション。バブル生成の直接要因となった低金利政策、バブル加速の要因となり後に日本の金融システム崩壊のとどめとなるBISによる銀行の自己資本比率規制導入、そしてバブル終焉の引き金となった不動産融資総量規制について、内外の公文書・私文書や日米政策当局者へのインタビュー、オーラルヒストリーなどを駆使して、それぞれの政策決定プロセスを緻密に再現している。1つの優先課題に囚われてマクロな見通しを欠く(バブル生成期には円高対策、バブル末期には地価急騰)日本の政治家の欠陥や、硬直した官僚機構(部署間の力関係の固定化)なども問題だが、やはり何といってもアメリカ政府の「圧力」に左右される国家構造が最大の問題であったことがよくわかる。

  • バブル経済期に日本の金融政策の舵取りをになった日本銀行・大蔵省に着目し、バブル崩壊までの軌跡を描いた。

  • 時事通信の記者による、1980年代のバブル生成、崩壊に至るノンフクション。日銀を中心に綴られている。
    著者は10年以上前に「検証バブル失政」で同時期のノンフィクションを共著で著わし、読んだ記憶がある。
    本書は、ジャーナリストらしく、丁寧な取材に基づき、臨場感溢れる筆致でテンポよく綴られ、真に迫るものがある。
    日本の意思決定は今も実は変わっていないのではないだろうか。
    でも読みながら、なぜ今あの時代のバブルの話なのか、既に語りつくされたことではないのか、という思いを禁じ得なかった。

  • 一日で読み終えた。バブルはアメリカの圧力によって形成された、その中で日銀は翻弄され続けた被害者であって決して悪玉ではないという論旨で書かれた本。巻末の注を見ていると、かなりの資料を集め、当事者にも会って書かれたものであるように思う。一件、ファクトの積み重ねで書かれているように見えて、著者の評価が多分に入り混じっているところに注意が必要である。この本に書かれているのは、著者の評価済みの「事実」であることを見逃して、あたかもこれが真実であるかのように全面的に受け止めるのには注意を要するきがする。とりわけ、当時の日銀、大蔵省関係者が、どこまで本当のことを話しているかは判断が難しいところがあるような気がする。ただ、読み物としては面白い。少なくとも西村吉正「金融行政の敗因」(文春新書)よりは読み応えがある。

  • アメリカの外圧、官僚の無誤謬性指向、政治家のポピュリズム等で、利上げ、総量規制等の対策が遅れた事が、バブルの膨張とクラッシュを招いた。これらは今も変わっていない。
    今はデフレからの脱却が最優先となっているが、そこにバブルの発生が潜んでいないか、過去の経験が活かせるか、注意して見ていく必要がある。

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著者プロフィール

軽部 謙介(カルベ ケンスケ)
時事通信社解説委員
1955年生まれ。早稲田大学法学部卒業。時事通信社入社。社会部、福岡支社、那覇支局、経済部、ワシントン特派員、経済部次長、ワシントン支局長、ニューヨーク総局長等を経て、現在、同社解説委員。主な著書に『日米コメ交渉』(中公新書)、『官僚たちのアベノミクス』(岩波新書)など。

「2019年 『政策をみる眼をやしなう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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