はじめての八十歳

著者 :
  • 岩波書店
3.00
  • (1)
  • (1)
  • (10)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 55
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000244862

作品紹介・あらすじ

膝の手術のため、はじめての長期入院。「ブラック・アングル」などの雑誌連載も、はじめて休載。そして、入院中に迎えた八十歳の誕生日。-おや、今までとは違う世界が見えてきた。若いころは気付かなかったこと、思いがけない発想など、脳裏に浮かぶあれこれを、筆の向くまま綴り始めたら止まらない。入院中に蓄積された創作エネルギーを放出するかのごとく、一気にこの一冊を書き下ろした。曰く「好き嫌いで書きました」。御存知ヤマフジ節は健在である。八十歳の本音を綴る、論より感覚、御意見無用のエッセイ集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2020年1月9日読了

  • ふむ

  •  1970年代の『ブラックアングル』からの愛読者。著作も何冊か、過去読んでいるが、文章だけは久しぶりかな。
     バッサバッサと世相を切る痛快さは、老境に入ってますますご健在、というか切れ味を増している。

     もとより、古風な、昔ながらの頑固オヤジ的な視点だったものが、まったく遠慮がなくなってきていて痛快であるに加え、本当に「はじめての八十歳」という視点から発せられる所感には、実感が籠っている。

    「人間の五感は、ある部分が弱くなると他の感覚がそれを補ってくれる。つまり、定員制なのだ」

     特に、こうした身体的な感覚は、実体験に基づいてのものだろう。
     その他、大所高所からの所感、意見もいろいろ参考になる。

     “長寿の秘訣は「知らぬが仏」と。つまり今の、これからの人間、ともに過剰情報時代に入ってしまっているから、必要でない情報に一喜一憂するのはつまらんぞと言いたい。”
     と、情報過多の時代に寄せる感慨も多い。スマホも、“煙草なんかより悪質だろう。ココロを病むという意味で。”とバッサリ好き放題。

     こうした好き放題も、齢80になってこそか。「好き嫌い」の正体も、

    ”その正体は「虫」ではないのか —。
    「虫が好かない奴だ」
    「虫の居所が悪かった」
    「腹の虫がおさまらなかったんだから仕方ない」などなど、「虫」という正体不明なるもののせいにすることが多い。”

     しかし、これを「老化」のせいではなく、“「虫」というものに仮託”した、“昔の人の知恵”と喝破する。
     まだまだ、ご健在ぶりを拝読できてうれしい限りだ。

  • 表紙を見て、、、あれ?!
    作者は、似顔絵のイラストの有名な人では・・・と、。
    どんなことを書かれているのか、と、興味をを持って、読んでみた。

    膝関節の手術そして、80歳の誕生日は、入院中。
    理解できる。
    入院したら、することが無い。
    まして、膝の手術だと、院内を歩き回ることも出来ない。
    その不自由さのなかで、思いついた事柄を書かれたのだろう。

    病院での先生は、大概、年齢を知ると不調を訴えても、、、、「それは、老化です!」と、、、しか言わない。
    今まで、してきたことが否定されるようで、悲しいが、脚が悪くなると、外出も、旅行も、、、敬遠。
    腕や手が、悪くなると、荷物を持つのも億劫に。
    小動物を飼っても、毎日の世話と、どちらが、病気もせずに長生きできるかと。
    耳が、遠くなれば、人との会話も少なくなり、目が悪くなると読書も出来にくくなる。

    一つづつ、当たり前のように暮らしていたことが、出来なくなって来るのは、、、、悔しいのだが、若くなることは出来ない定めなのだから、、、、一つ一つ受け入らなけれはならない。

    山藤氏も、思いついた事柄を編集者のすゝめで書かれたのだろう。
    でも、私は、エッセーより、似顔絵イラストが、好きである。

    八十歳の本音を語られているのだろう。
    私も、この年になったら、こんな風に思えるのかも・・・と、思いながら本を閉じた。

  • エッセイ集 話があちこち徘徊する。徘徊老人。初めての80歳、虫の目で見、鳥の目で見る
    あの世にも次の世があるかしら  老人の共通の敵は「孤独」

  • 膝の手術で長期入院し四十年つづいた「ブラック・アングル」を休載

    入院中に八十歳の誕生日を迎えると
    これまでと世の中を見る目が変わっているのに気がついた

    これにとびついた岩波書店の編集部

    「好き嫌いで書きました」

    一気に書き下ろすとヤマフジ節てんこもり
    しあがったのは「浮遊感」「徘徊感」の「自分でもよくわからん」エッセイ集

  • 人生は砂時計。砂が落ち始めたら、もう果てるまで見守るしかない 人間の受容できるロッカーは無限に広いわけじゃない。適当なところで、もう腹いっぱいだから遠慮します、と言っていいはずだろう 遊びの心がわかったら日本語と大いに遊ぼう。それにはたくさんの本を読み、たくさんの会話をすることだ 島国でほぼ単一民族だから、簡単に他人を信用して、とことん理詰めでガードするということはなかった。日本全体が文系と言えば言えなくもない 余談だけど、野暮と言うのは実は大切なことで、みんながみんな、鋭角的に枠に話を進めていくと、大衆はわからないので作者は孤独になる

  • 年齢って考えてみれば全部”はじめての”が付くんだね。
    その年をはじめて迎えて一年経ったら二度ともう経験できない。
    著者はアンチ鶴べいだったんだ。滅多にいないと思うけど、
    ダミ声が嫌い、半ズボンが嫌い、人の話しを横取りするとこも嫌い…。本編と関係なくここが印象に残った。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

山藤章二(やまふじ・しょうじ)1937年東京生まれ。風刺漫画家、イラストレーター。

「2015年 『戦後70年 わたしの戦争体験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山藤章二の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×