人はなぜ騙すのか――狡智の文化史

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000245135

作品紹介・あらすじ

嘘、偽り、詐欺、謀略…。秩序や倫理をもって排除しようとしても、決して人間世界から排除しきれない「狡智」という知のあり方。この厄介な知性は人類の歴史の中でどのように生まれ、どのように意味づけされ、社会の中に組み込まれてきたのだろうか。古今東西の史実や物語を素材に、狡智の深層と人間の本性との関わりについて考える。

感想・レビュー・書評

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  • 著者:山本幸司(1946-)

    【版元】
    本体2,300円+税
    刊行日:2012/02/15
    9784000245135
    四六 上製 250ページ 在庫あり

    嘘,偽り,詐欺,謀略…….秩序や倫理をもって排除しようとしても,決して人間世界から排除しきれない「狡智」という知のあり方.この厄介な知性は人類の歴史の中でどのように生まれ,どのように意味づけされ,社会の中に組み込まれてきたのだろうか.古今東西の史実や物語を素材に,狡智の深層と人間の本性との関わりについて考える.

    ■著者からのメッセージ
    古代・中世の武士たちの戦い方に,狡いとしか言いようのないやり口が,しばしば見られるのに違和感を持ったことから,この本は始まりました.アンフェアな行為そのものではなく,そうした戦い方を記述する軍記文学の作者たちが,「狡い」行動に対してまったく無批判で,場合によっては,むしろ賞賛さえしていた点が,とても奇異に感じられたのです.そこには恐らく我々と違う価値観が作用していたのだろうと考え,それ以来,「狡い」行動様式や狡智について材料を集め始めました.
     そのうちにギリシャ古典における狡智について,ヴェルナンという学者が書いた本に行き会い,ほぼ同じような問題が扱われていることに気づきました.視野を広げてみると,世界中の到る処で,こうした狡智が顔を覗かせる場面が見られるのです.その面白さに惹かれて,あちこちを彷徨っているうちに収拾がつかなくなり,大汗を掻きながらようやくまとめ上げたのが,この本です.
     このようなテーマは専門研究の枠組には収まりません.そういう意味では,あくまでも試論か私論に止まるのかもしれませんが,狡智のように社会の中で否定的に見られている現象を,正面から取り上げることは,社会の仕組みを知る上で,実はとても大事なことなのだと私は考えています.

    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b262993.html


    【目次】
    献辞 [iv]
    目次 [v-viii]

    はじめに 001

    序章 フィクションの中の詐欺師たち 007
    1 「スティング」の世界 007
    2 バルザックの金融小説とポーの詐欺師論 010
    3 コリンズ,メルヴィル,マン 014
    4 エンターテインメントとしての詐欺話 018
    5 エゴと倫理観 022
    6 「ウソ教室の勧め」 025
    7 柳田國男と『不幸なる芸術』 028

    第一章 日本人の狡智観 033
    1 日本神話における詐略 034
    2 源平合戦の騙し合い 038
    3 味方同士の騙し合い 043
    4 詐略の名人 050
    5 「やまと心」とは 053
    6 やまと心の実例 058
    7 藤原頼長と信西入道 062
    8 藤原為盛の機知 065

    第二章 馬喰八十八の智恵 069
    1 「馬喰八十八」078
    2 「エンマ様をぶち殺した農夫」 080
    3 領主を騙した粉ひきの話 083
    4 「二人のコンパードレ」と「カンプリアーノの物語」 086
    5 死体を使って儲ける話 089
    6 「レスターの修道士」 092

    第三章 狡智と致富 097
    1 八十八の類話 097
    2 昔話における馬喰 102
    3 騙る馬喰 108
    4 狂言に登場する馬喰像 112
    5 交換による金儲け 114
    6 「ウサギのかしこい商売」 117

    第四章 中国における狡智の哲学 125
    1 諸葛孔明と曹操 126
    2 老子,莊子,墨家 130
    3 荀子 135
    4 「兵とは詭道なり」 138
    5 韓非子 142
    6 謀計の評価 147

    第五章 ギリシャ人と狡智 151
    1 オデュッセウスの狡智 152
    2 ヘルメスという神 156
    3 プラトンの狡智に対する態度 161
    4 狡智の領域 168
    5 メーティス的知性 171

    第六章 生きるための狡智 181
    1 狡智とは 182
    2 トリックスター,八十八 184
    3 『狐物語』 190
    4 ピカレスク文学の世界 192
    5 狡智と喜劇 196
    6 マチンガの狡智 200

    終章 騙しの起源と動物行動 207
    1 人間の本性と動物との関連性 207
    2 動物の欺瞞行動 211
    3 騙しとは 215
    4 類人猿の騙し行動 219
    5 他者の理解と騙し 224

    参照文献 [231-238]
    あとがき [239-241]

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:141.6||Y
    資料ID:95120556

  • 人を騙す。戦争や政治、商売の場面で、知恵を絞りながら相手に勝つプロセスでは、騙すつもりはないが結局騙したことになったり、騙すつもりで騙したり、さまざまな場面で人を騙すことがある。この騙すということに対する、日本、中国、ギリシャでの文化比較がテーマ。
    結局のところ、道徳的な観点をどこまで考慮するかが課題なのだが、戦争の場合、道徳ばかり説いていても殺されてしまえば元も子もない。圧倒的な力の差がある敵を前に、知力で対抗するというのはよくある話。戦争ならばどこまで許されて、商売ならばどこまで許されるのか。面白い観点での本である。
    個人的には、馬喰八十八の話は長すぎると思う。実際の戦争や政治での論争をネタにした話で整理できると良いのだが。

  • 引用される多くの昔話や寓話、その他の作品から動物の騙し合いなど、そこのところは興味深くて面白かったのだけど、タイトルから想像した着地点からさほど外れなかった。

    というかタイトルがあんまり合ってない気がする。
    哲学または心理学っぽい。
    けど内容は○○学だ!と決めにくい。
    騙しの歴史 というには少々スケールが大きいかな。

    柳田國男の話が印象的。
    あとは大和魂とか。

    誰かを騙してみたくなりますね。

  • タイトルにひかれたが、正直自分の想像している内容ではなかった。
    自分たちや親や先生、友達などから、嘘はいけない、人をだましてはいけないという事を、実話や寓話、ニュースを見ながらと様々な場面で何度も教わってきたが、スポーツでの駆け引きやフェイクとだましの違いとはなんだ?
    智謀、叡智と奸智の違いは何か?言う答えとして、先を読み、他人の行動を読み、対応策を考えるという知性において両者に差はないと言う事が著者の言いたいことなのだろう。
    映画や小説では、詐欺師を主人公にした話が何本もあり、詐欺師をある種ヒーローとして描いている。
    また古くは日本をはじめ中国、ギリシャでも、人をだます物語や実話がいくつもあるが、それらは非難をするわけではなく、騙した本人の行動や知性を称賛している事が多いという事を紹介している。
    現代とは倫理観が違う点もあるかもしれないが、騙しととらえるのではなく、駆け引きと考えれば、現代でも騙しは公然と、そして一つのテクニックとして捉えられている事がわかるし、もっと積極的に肯定的に捉え活用していきたいと思うような内容だった。
    もちろんニュースになるような詐欺はだめだけどね。

  • 【新刊情報】人はなぜ騙すのか 141.6/ヤ http://tinyurl.com/bv8574o 嘘、偽り、詐欺、謀略…。秩序や倫理をもって排除しようとしても、決して人間世界から排除しきれない「狡智」。史実や物語を素材に、狡智の深層と人間の本性との関わりについて考える。 #安城

  • 騙す知恵も「知性」の仲間。その「狡智」について日本、中国、ギリシャなど古今東西の昔話や思想を考察し、騙しの起源を探った本。もともと「やまと魂」という言葉も、実は勇敢というような意味ではなく、「狡智」を意味していたとか。
    時代や文化によっては狡賢さは賞賛されるものでもあって、昔話や歴史に語られる清清しい騙しの話が面白い。全体的には堅い文章で重複も多い。

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著者プロフィール

山本幸司(やまもと こうじ)
1946年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院経済史専攻修士課程終了。出版社勤務を経て、中央大学大学院国史学専攻博士課程単位取得。神奈川大学短期大学部・同大学院歴史民俗資料学研究科教授を経て、現在、静岡文化芸術大学文化政策学部教授。専攻、日本中世法制史・思想史。著書に『天武の時代』、『頼朝の精神史』、『日本の歴史09 頼朝の天下草創』、『〈悪口〉という文化』など。

「2009年 『穢と大祓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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