秘密解除 ロッキード事件――田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000245265

感想・レビュー・書評

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  • 著者は朝日新聞の編集委員。

    こういう政府関連文書は時間が経つと徐々に機密が解かれ、過去の謎が明らかになっていく。(十年単位ではあるが)
    本来なら本書のような本は国際政治学者が嬉々として出すべきものだろう。

    田中元首相を含め、米国の虎の尾を踏んだ政治家は政治生命を絶たれる、というのは神話だというのが著者の見立てだ。

    一方でCIAから(反共)政治資金を受け取った政治家は米国に弱みを握られることになり、自ら米国の意向に沿おうとする可能性があるとの著者の推測も説得力がある。

    陰謀説は一見わかりやすいが、本書の随所に出て来る会談録を見れば、情勢や思惑に従い、その場その場で丁々発止の真剣勝負をしていることがわかる。

  • ロッキード事件発覚から40年が経過し、当時の日米公文書の秘密指定が続々と解除されつつある。
    この本は、米国の国立公文書館や各大統領図書館などで発掘された新たな文書をもとに新たな視点、すなわち、徹底的に米国側の視点に立って、田中角栄ら日本の政治家やロッキード事件を分析したものである。
    特に、キッシンジャーが考える、アメリカの世界戦略、アメリカの国益というもの。
    また、ニクソンと地元ロッキード社との関係。
    そして、日本の戦後政治、吉田、池田、佐藤、田中、三木という流れ。
    結局、庶民が購買する小ロットで多品種な商品ではなく、航空機、就中、戦闘機という市場性のない物品を巡る売買契約。
    国益、戦争、秘密外交、情報公開のない世界でどうしても生じてしまう案件だろう。
    最後、そんな中、アメリカ側から、賄賂性を暴かれるのではという疑心暗鬼、そして、それに関する情報をマスゴミ市場で商品として高く売ろうとする業界に翻弄された日本の政治屋さんたち。
    まぁ、とにかく、いずれの業界の人間も、拠って立つ所を美しく保つため、最低限の矜持だけは、保持していきたいものです(笑)。

  • 田中はその政策によってキッシンジャーらの反感を買ったのではなく、その人となりを理由に、米政府内部の会議で、悪しざまに避難され、軽蔑された。キッシンジャーが我慢がならなかったのは、政治的に微妙な問題も含め、あること、ないことを織り交ぜて田中が報道機関に情報を流すことだった。「独自の資源取得外交」を理由に田中や日本政府が米政府にてきしされたり、やり玉に上げたりしたことを文書は、もしそれがあるのだとすれば秘密指定をとっくに解除されているはずであるが、私のリサーチでは米国立公文書館にも大統領図書館にも見当たらない。

    まず言えるのはリチャード・ニクソンが大統領だったから田中が逮捕されることになったということだ。

    秘密指定を解除された文書 キッシンジャーがもっとも痛烈な皮肉の言葉を浴びせていたのは田中とチャーチ小委員会スタッフのレビンソン

  • 2018.03.03 アゴラより。田中角栄逮捕は、ウォーターゲート事件の煽りをくったものだった。中川一郎の自殺も同様。その裏で、中曽根康弘と竹下登は追求の対象から外された。アメリカから資金を受け取っていたため、アメリカの都合に振り回された日本の政界。ただ、これで懲りた日本の政治家は、アメリカ企業から賄賂をもらうことは止めたのだと思う(甘い?)。

  • ☆田中はアメリカの虎の尾を踏んだわけではない。最初から信頼されていなかった。
    ☆むしろ、その後の政治家がアメリカよりになったのではないか。

  • タイトルと内容が 必ずしも一致しないが、面白かった。

  • 長年、誤魔化されていた所が、わかった。

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著者プロフィール

奥山 俊宏(オクヤマ トシヒロ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞編集委員。東京大学工学部卒。1989 年朝日新聞社入社。社会部などを経て、特別報道部。2009年にアメリカン大学客員研究員。『秘密解除 ロッキード事件』(岩波書店)で司馬遼太郎賞(2017 年度)を受賞。同書や福島第一原発事故やパナマ文書の報道を含めた業績で日本記者クラブ賞(2018 年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書)。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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