プルースト/写真

著者 : ブラッサイ
制作 : Brassa¨i  上田 睦子 
  • 岩波書店 (2001年3月21日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000246088

作品紹介

まだ誕生したばかりの新しいメディアであった写真。カメラという機器の可能性を追究し、その機能を方法化して文学創造の核心に据えるプルースト。ブラッサイは、写真文化の草創期を生きたプルーストの生涯を溯り、当時の興味深い写真文化の場面を紹介し、ついで『失われた時を求めて』のテクストの具体相に深くその身を浸し論じる。その視野は相対性論や二〇世紀の認識論にまで広げられてゆく。本書は、卓越した写真家ならではの有無を言わせぬ説得力を持つプルースト論にして秀抜な芸術論である。

プルースト/写真の感想・レビュー・書評

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  • 2-3-2 写真論

  • 傑出した写真家であったブラッサイが、プルーストの思考そのものに、写真がどのような影響を与えたのかという興味を持ちはじめたのは、1968年『失時』(ブラッサイは『失われた時を求めて』を『時を求めて』と呼ぶ)を再読してからという。

    プルーストにふたたび没頭し、写真がプルーストにおいて、いかなる位置を占めているか突然理解できたと述べる。

    ロジェ・グルニエによれば、ブラッサイはいつも本書の手稿を持ち歩き、晩年、逝去する少し前に脱稿をしたという。

    巻頭に、ブラッサイの16枚の写真、
    ロジェ・グルニエの文章、
    ブラッサイの序、
    訳者による『失われた時を求めて』の簡単なあらすじ、
    『失時』の登場人物解説、
    実在人物の解説等、
    『失時』を読んでいない読者に対しても気配りのある構成になっている。

    訳者は俳人でもいらっしゃる上田睦子さん。

  • ”「作品というものは、作者が読者にさし出す一種の光学用具のようなもので、読者はこれなしには見ることができなかった自己の内部を見きわめることができるようになる。」(見出された時)
    写真技術はプルーストの創作の核心である。プルーストは登場人物を描写し物語を構成するにあたって、ヒントを写真技術から得ており、創作の過程すらも無限に多様な写真的メタファーによって明らかにされていく。
    《時を求めて》の主人公たちや風景に対するプルーストの観点の多様性は、そのまま写真のレンズの多様性に対応する。──p.168”


    写真家ブラッサイによる写真とプルーストの関係に焦点を絞ったユニークなプルースト論。『失われた時を求めて』の解題はもちろん、作者マルセル・プルーストの特異な生活ぶりが紹介され、とても楽しく読めた。

    なにより印象的だったのが、写真コレクターとしてのプルースト。とくに自分の写真と気に入った人物(その多くが美青年!)との写真交換に情熱を燃やす姿がとても──他人事とは思えず──微笑ましかった(苦笑した)。現代に生きていたら絶対にブログを持って、毎日だらだらと長文の記事・日記を書き、画像収集、交換に勤しんでいただろうな、と思う。そういえば何年か前のニューズ・ウィーク誌の特集で、プルーストの小説はインターネットみたいだという記事を読んだことがある。

    また、軍服に憧れて、それだけのために軍隊に志願したり、「浴場」(今でいうゲイ・サウナやバス・ハウス)に資金援助をし、そこに通いつめたりするプルーストにも親近感がわいてくる。

    そして『失われた時を求めて』は「ソドムとゴモラ」以外にも全編に渡って同性愛のモチーフが散りばめられているようだ。写真との絡みで言えば、サン=ルーとエレヴェーター・ボーイが二人してホテルの「暗室」に閉じこもるシーンは、なかなかそそられる。『失われた時を求めて』が無性に読みたくなった。

    ブラッサイは本名ジュラ・ハラース、1899年現ルーマニア領トランシルヴェニアに生まれ、1984年に亡くなった著名な写真家で、この本の巻頭にも『失われた時を求めて』からインスピレーションを得た16枚の写真が掲載されている。その微かにセピアがかった黒の深みが非常に美しい。


    [関連]
    ●写真の交換/レンズの転換 あるいは写真のレンズの多様性 http://d.hatena.ne.jp/HODGE/20070114/p1

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