『ファンタジーの魔法空間』(2002)とは、作家・井辻朱美さんの魔法のレンズを通して、ファンタジー(以下、FTと略す)の本質を拡大してまなざす、究極の夢文学評論集です☆
FT作家・翻訳者・評論家・歌人にして夢の狩人✧ という著者が、FTにジャンル分けされる作品の数々を取り上げ、とりわけ不思議な力が働く「場所」「空間」を切り口として論じたのが本書です。
『指輪物語』『ゲド戦記』『ナルニア国ものがたり』に代表される不動の古典から、『エルリック・サーガ』のような変化球、『ハリー・ポッターと賢者の石』『レイチェルと滅びの呪文』など近年の主流まで手広く登場☆
どうしても「ハリポタ映画の人気に便乗した企画だろーな」と想像してしまうのですが……★ 井辻氏のFT論を読めるなら、理由なぞ何でもかまわないのです✧
特に井辻氏独自企画(?)「家のファンタジー」の章は、精読の価値あり☆☆☆
上に挙げた有名古典FTは、井辻さんが別の機会でも取り上げる可能性が高いですが、『危険な空間』『台所のマリアさま』などのマイナー作品の考察は、ほかでは読めないかもしれません。
その章は、FT文学を身体的な感覚で捉えた解釈を示しているのが興味深い。
住まいと住人(家族関係も絡んでくる)がつながっている感覚。視線のビームによる結界、ドアが空間にもたらす亀裂、DIYでこしらえる精神的な拠り所……。毛細血管まで総動員して(!?)感じ取るイメージまで浮かびます★ 家と身体との結びつきもまたファンタジー体験なのだなと、考えさせられます。
著者のくわしいFT論を読んだあとでは、とても生意気で恥ずかしくて書きづらいことですが……、作品をただただ漠然と読むだけではなく、自分の視点で物語を捉え直して、脳内で再構築するという作業もFT的かと思います。つまり、自分で書評・レビューを書いてみる行為も、りっぱなファンタジーなのかもしれません★