フードバンクという挑戦 貧困と飽食のあいだで

  • 岩波書店 (2008年7月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784000246446

感想・レビュー・書評

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  • 日本のフードバンク、セカンドハーベストジャパン(2HJ)の活動を軸に、フードバンクとは何か、その活動や課題を紹介した本。2008年の本なので、今はどうなってるんだろうか。もともとボランティアや寄付が当たり前のものとして根付いているアメリカと違い、日本ではそうしたことをする人が珍しく時に偽善者とみなすし、貧困は自己責任であるというような風潮もある。読んでいるとそんな日本の雰囲気に辟易もするけど、いいことをしたいって思いは誰にでもあって、そこに希望を見出したい。能登の地震の後に被災地に送られた食料に賞味期限切れのものがたくさんあったっていうニュースを前見たけれど、困っている人には期限切れだってありがたいだろみたいな常識はずれの発想を日本人はしがちな気がする。フードバンクはそうではなくて、輸送の途中で外箱が凹んだとか、製品表示の印刷ミスったとか、全然品質には問題ないのに売り物にはならないものを引き取って回しているのであって、そもそも外箱凹んだくらいで神経質にキーキー言うのもうるさいなあって思うけど、それが必要とされている人に届くのは本当にいいよね。食料を下さいって他者に頼むのは屈辱を覚えることなんだという受け取る側の感情も汲んだ上で、自分はいいことをしているなんて自惚れたり上から目線になったりせずに活動していくのは、実はすごく難しいことだなと思った。
    フードバンクは緊急的な手当てであって、そもそもの貧困対策になっていないし、防貧に手が回らなければ行き詰まってゆくっていう話が最後にあったけれど、でもそれは正論にしても目の前で飢えている人がいるのは一刻を争う事態なので、フードバンクだけが頑張るんじゃなくて、緊急手当てをフードバンクがやりつつ同時に防貧を国なり地方自治体なりが、あるいは困難を分割しながら他のNPOとかが取り組んでいくのがマストだと思った。
    食料自給率低いくせに食品に神経質で、助け合いの精神も廃れつつある日本に生きるのが本当に不安。

  • 「完璧でない」からと捨てられる食べ物。一方で、食べることに困っている人が大勢いる。両者をつなぐ活動の最前線、アメリカと日本から。 「Google ブック検索」より

  • 「フードバンク」という見慣れない単語が目に付いて、何気なく図書館で手にした本だったが、一気に読んでしまった!何とエキサイティングな活動なんだろう。そしてまだ始まったばかりではあるけれど、日本で「フードバンク」を設立したアメリカ人とそこに集う人々の生き様の何と魅力的であることか。文句なしの5つ星です。早速購入して自分の周りの人にも勧めます。

    「フードバンク」とは、簡単に言えば企業や商店、農地で消費期限が充分残っているのに廃棄されていた食べ物を、困った人々に渡す仲介役を行う団体のこと。一見簡単そうに思えたが、読み進むと事はそう簡単ではなかった。渡す側のニーズと受け取る側のニーズの違い、ものが食料なだけに発生する安全性の確保の問題、ロジスティックの問題、そして日本のNPO団体の多くが抱える財政上の問題、等々。

    そのような困難だらけの中、まずは行動と動き出した人々の勇気にはやはり感銘せずにはいられなかった。また、著者の、恐らくは相当量の時間を取材に費やしたであろうことから来る文章の確かさが、読み手にしっかりと届く迫力として感じられた。

    まずは出来ることから始める、ということを自分でもやってみようと思う。動き出さなければ何も変わらないと言うのは、きっと正しい。

  • 日本のフードバンク活動の始まりから現状、課題をフードバンクの先進国であるアメリカを例に書いている。最近のコロナ情勢でフードバンクが話題になってパントリー型のは私も知っていたのだが、フードバンクと一口に言っても、施設に寄付したり、炊き出しをしたり、個人に配ったり様々な形があることを知った。フードバンクに興味がある人だけでなく、貧困や食品廃棄、ボランティアに興味のある人は読んでみても良いかもしれない。

  • ラウンジ

  • 611.3

  • 先進国の中でも格差・貧困率が最も高い日本。

    食料事情
    日本と米国との比較
    日本の取り組みなど

    フードバンク発祥の地ーアメリカでの新たな岐路 トウモロコシなどを燃料にするバイオエネルギー開発や訳あり商品の食品業界の発展などフードバンクにとって厳しい状況が続いている。フードバンクを超えた論理が見れなかったが、そういうイノベーションを起こすきっかけが欲しい。
    今後、イギリスのEU離脱問題-世界の経済的問題からリストラや雇用率の悪化が進むことも予想される。

    絆創膏と批判されようが、何か活動を一歩一歩進めていることに変わりはない。
    それにチャールズさんの言う通り、
    「…ここになんとかしなくてはならない問題があれば、解決したい、と動き出すのは当然ではないのか」(p100 l.8-l.9)で進んでいけばいいのではと思った。
    筆者は生活だけではなく、手に職をつけるという課題を提示している。ただ、民間もしくはNPO法人などでどの程度実施できるのかも難しい所だ。

    自分自身、ボランティア活動していた中で、無知で失礼なことをしたことを思い出した。活動をする上での心持ちや向き合い方を勉強できたと思う。

  • ふーどばんくってなに?
    まず手に取ったときに感じた事。日本が食料自給率がひくくて、でもたくさんの食料を捨ててしまっているという事実はなんとなく知ってはいるけれど、それを解決しようとしている人たちの活動にはほとんど関心を向けていなかった。この本で食べ物だけではなく「貧困」という事実は日本にもあてはまることを知りました。

  • フードバンクの成り立ち、発展、そして日本での展開が俯瞰できる本です。配り手がいないとか食料自体が不足する、という最近国内のフードバンクが直面している問題も、通る道なんだというようなことがわかります。

  • 箱の潰れ、傷あり・・・小さな理由で食物が大量廃棄される現代社会。その反面食べ物を得ることもできない貧しい人々も存在する。
    “完璧でない”食べ物を貧しい人々、養護施設やホームレス支援団体などに届ける活動をおこなう「フードバンク」。活動を通じて、食生活のあり方や日本における貧困問題について考えることができる。

  • フードバンクという活動について,手際よく紹介する本

    私にとって新しい知見はなかったが,説得力のある良い本だと思った。

  • 「虐待を受けた女性が最終的に夫から逃れるまでには、平均して5回から7回、逃げては戻る、を繰り返すのが普通なんだよ」。あとで先輩からそう聞かされ、自分の無知からあの女性の苦しみをわかってあげられなかったことが悔やまれた。「統計」を知ることの大切さが身にしみた体験だった。(p.88)

    「相手の立場に立って考えよう」と私たちはよく言ったり、言われたりする。けれど「つい相手の立場に立ったつもりになって、こうしてあげよう、ああしてあげよう」となると、相手から思うような反応を得られなかったときなどに「差別的な偏見を、かえって自分の中に培ってしまう」ことに本田神父は気づいた。
    想像し、思いやることはできる。だが、「中途半端に相手の立場に立って考えるから、さらに傷口をえぐるようなことを平気でしてしまう」「単純で素朴な思いやりくらいではほんとうのことばは見えないはずです。そこに気づくことが大事」「ホームレス≠ホープレス」(p.107)

  • もったいないをありがとうへ。
    セカンドのコピー。
    食べ物を無駄にしない活動。
    企業も廃棄コストを削減できる。
    winwin。
    棄てらてしまうはずだったものが生かされ、それが人の生命につながるこの活動に私も積極的に参加していきたい。

  • 流石ジャーナリストが書いただけあって中身が濃い。

    フードバンクとは。形が悪く売れないものや賞味期限でなく企業の定めた販売期限のすぎたものを引き取り、配る。まだ食べられるし企業も廃棄コストが減って嬉しいよねと。

    2008年3月。日本NPO学会が主催する「NPO再考、10年を振り返る」と題した公開シンポジウム。

  •  生きるだけで精いっぱいである時代を超えて、じゃあ生きて何をするの? と問われる時代になっている気がする。いやもちろん、生きるのが第一なんだろうけれど……少なくとも生きるだけで精いっぱいではない人は、それを考えざるを得ないような。
     ……豊かさとは何でしょうね。

  • 「余ってる人から足りない人へ」、フードバンクの仕組みはとてもシンプル。フードバンク発祥のアメリカではソーシャルビジネスとしての地位を獲得し、寄付する側の税制優遇なども整備されている。しかし日本ではボランティアを偽善と捉えられる傾向があり、普及にはまだまだ障害が多い。他方で日本には「もったいない」文化があり、これは逆輸出できる習慣だとも思う。

    SCMや印刷技術が発達し、食品ロスが減少傾向にあり、食料が調達がしにくくなっているという話はなんとも皮肉で需給ギャップの解消が如何に難しいかを物語っている。

    食料問題というのは根深い複雑な問題だが、「問題」として提起しない限り解決もできない。そうした問題提起と現状を伝えるこの本の意義は物凄く深い。

  • フードバンクの考え自体はいたって単純。安全なのに「完ぺきではないから」と言って捨てられてしまうような「もったいない」食料を、足りない人に回すというもの。
    つまり無駄を再分配してゆくことです。

    ところがそれを実現するためにはアメリカでも、日本でも様々な障害があります。とりわけ日本では、その活動の知名度や日本ならではの「偽善」への厳しい批判、そしてNPOを支援するような制度の問題から、最低限の資金を回して運営してゆくことも難しいといいます。

    運営の実際的な問題ももちろんありますが、一つの文化として、日本で寄付がもっと流行するような方法はないだろうかと思いました。

  • まだ食べられるのに捨ててしまう食べ物を困ってる人に!
    発想と仕組みはシンプルで効果は大きい。なのにNPOだからなのか問題は山済みだ。フードバンクは絆創膏の役割だけでいいのか?という指摘があったが貧困や食糧不足の問題を根本的に解決するにはあまりに多くの問題が絡んでいるのでこの指摘はおかしい。

  • 団体の存在、社会問題を知る上で役に立つ。

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著者プロフィール

大原悦子 新聞記者として17年働いた後、フリーランスに。2008年から大学教員。50歳を過ぎて初めて書いたお話『カタッポ』が、福音館書店の創立60周年を記念した「絵本にしたいお話」に選ばれ、「こどものとも」(2014年1月号)として出版された。「そういえば、幼稚園児の頃の夢は絵本作家だった!」と思い出す。その後、『ケロリンピック』(福音館書店)も刊行。本作が絵本3作目。その他の著作に『フードバンクという挑戦-貧困と飽食のあいだで』(岩波現代文庫)、『ローマの平日 イタリアの休日』(コモンズ)がある。好きな動物は、もちろんキリン!

「2021年 『チリンでんしゃ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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