- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000246491
感想・レビュー・書評
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「ふつうの子」と「フツーの子」
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“いまどき”子どもの、思春期という名の迷宮を抜け出すための「心の葛藤」の実例集。スクールカウンセラーの立場から見た、子ども達のネットやアイドルの利用の仕方も紹介されている。
2009年発行の本だが、今でも通用する内容だと、私は感じた。(むしろ事態は悪化すらしている、とも…)
「フツー」の一言で、実は「困っていること」を「なかったこと」にする態度が、思春期に訪れる内面的な変化を、急激で制御不能にすらなりかねないものにしてしまっているようだ。そしてそれは、現代の大人の価値観を、忠実に映しているものでもあるのだ。 -
最後の一章だけでも価値がある。
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スクールカウンセラーである筆者が、生の現場から現在の思春期の子どもたちについて論じた本。
実例が生々しいです。
中間的なエレメントへの視点を失わないこと。 -
今がどれほど難しい時代か。途中までこれは賞味期限のある本だなと思っていたが、とんでもない時代に向き合う難しさをこれでもかと説いた事例と解釈であった。
また、あとがきにあった何でも「発達障害」の視点で見てしまうことの危うさ。分かりやすいだけに気をつけねば。
・「物語」の「もの」には、「霊」とか「魂」という意味がある。
・優れた聞き手の条件とは、曖昧なメッセージに堪える力が強いこと、そして自分自身の感情の動きについてモニターできる能力が高いこと。
・喪失感が、内面が形成され、未来の自分のために努力をすることができるようになるためには必要不可欠な感覚である。 -
ちょうど、近所のママ友と
こ~ゆ~、スクールカウンセラーみたいな人たちが教科書から学ぶ事、自分たちは実地でやってきたから強いよね…的な話をしてたとこだったので、特に後半興味深く読んだ。
どうしても「知識」として専門の学歴を持った人を学校には置くことになるんだろうけど、それだけの勉強をするために、自分の思春期を満喫していない場合ってのがあって、それって厄介だよね…って。
事例は生な感じで興味深かった。
現れ方は、今までの思春期と確かに違って、専門家は「あれれ?」ってなるんだろうけど、とことん思春期を拗らせた経験があると、その根っこの部分の共通項にすっごく思い当たるんだよね。 -
「ふつう」に考えると理解しにくい「フツー」の子が増えている。そのフツーの子とはどんな子なのかを、現場から実例と共に読み解く本。20代の私が読んでも理解できない言動が多く、著者の悪戦苦労ぶりが目に浮かんだが、自分の思春期体験を思い起こしながら読むとクラス内のカースト制度、アイドルやアニメへの傾倒など分かりやすい身近なケースもあり、興味深く読めた。~が悪いという投げ出しの結論ではなく、根気強く臨床を重ね思春期の揺れ動きを見守りあくまで中立の視点を一貫しているのに強い好感を思った。他の著書も読みたい。お勧め。
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ここで言う「ふつう」の子と、「フツー」の子では
「葛藤」できるかどうかが1つのキーワードになっていたのかなと思いました。
思春期は身体や心が子どもから大人へと変化していく(変わることは象徴的な意味での死でもある)時期で、子どもはその橋渡しの時期に簡単には割り切れないテーマとぶつかることになる。
その中で生じてくる両極の気持ちを徐々に抱えられるようになることによって、それぞれの成長の道を歩んでいく。(抱えることは、解決することを意味する訳でもなくてね。)
抱えきれなくなってしまったものを一緒にみて、その子が自分の物語を見出していくときに隣に居て支え、その物語の中を生きていけるように、もう一度内面に取り込めるようにしていく過程。
そこに立ち会うのが治療者の役目なのかなあ、と思いました。
また、つながらない両極の気持ち、要素をつなぐもの(中間にあるもの)こそが、その人が紡ぎ出した「物語」であるということを強調したかったのかなと。
意味づける力、象徴化する力、これってすごいなあと改めて思ったり。
ちょっと本の内容からはズレましたが、その辺が強く心に響きました。 -
河合隼雄先生のお弟子さんにあたる先生の一般向けの本。思春期臨床のつかみ所のなさを上手に表現している。子どもたちのイメージやファンタジーが、最近の流行ものなどの丁寧な記述から浮かび上がってくる絶妙な本。臨床家の生の声がちょっと生なましくて、いいのかな?と思う。
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確かに、フツー、と口にする中・高生などが多くこんな感じだなあ、という実感は私にもある。が、それをどこまで一般化し、理論化できるのか。次は、そういう本が読みたい。