フィデル・カストロ――みずから語る革命家人生(下)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000246606

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  •  下巻では、現代や未来のキューバについてウエイトが占められている。インタビュアーの切り口も、上巻とは異なって厳しいところもあり、あちこちでみられる掛け合いにも緊迫感が漂う。

     キューバで今も残る死刑の議論では、当初
    「いつかはキューバも死刑廃止国に含まれることになるはずだ。」
    という発言だったが、再度の議論では
    「極刑を科しても抑止効果がない犯罪があれば、極刑が抑止効果をもち、長続きする状況というものもあると思う。」
    と引き出した。これが本音だろう。

     逆にカストロに言いくるめられた場面もある。社会主義国では、メディアの制限がみられる、とインタビュアーは正面切って議論するが、
    「あなたは批判精神について私に質問をしているが、キューバより民主的だという振りをしている多くの国の報道機関の批判精神はどこにあるのだと私は問いたい」
    「自由で批判的という素振りを見せている報道機関は広告に依存しており、広告主を絶対的に批判していない」と、西側メディアの弱点を突かれて終わる。

     同時にカストロの苦労も聞きだしている。演説原稿はどうしている?という質問に対して、
    「私自身が準備したり、書いたりした原稿出ないと、声を出して読めない。」
    フランス、ミッテラン大統領は原稿を書かせている、とインタビュアーが話すと、
    「何ということだ!」

     そして、キューバの未来に対しては
    「この国は内側から崩壊する可能性がある。」
    と、単純に楽観視していないことも認めさせた。

     最後に、戦い続けたカストロの人生は、この言葉に集約されるだろう。
    「いいか、その戦争は起きなかったが、仕掛けるものを除いては戦争がどう始まるかは誰もわからないのだ」

  • 偏見なくカストロを見るとヤツはホントにいいヤツだ。敵も多いがそれ以上に味方も多い。アメリカは洗脳と弾圧という文脈のみでカストロとキューバを読み解こうとしているようだが、カストロはホントにいいヤツだと言う事を見誤ってる。もちろん、カストロ以後の事はどうなるかわからんけど、カストロが生きているうちはキューバの崩壊はないな。

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著者プロフィール

1943年スペイン生まれ。「ル・モンド・ディプロマティック」紙の社長であり、主幹。コミュニケーションについての研究も多く、パリ第7大学の教授も兼ねている。著者は「市民援助のための金融取引に課税する行動」(アタック)の創立者であり、行動するジャーナリストである。

「2004年 『21世紀の戦争 「世界化」の憂鬱な顔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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