忘却のしかた、記憶のしかた――日本・アメリカ・戦争

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000247832

作品紹介・あらすじ

冷戦の終焉、戦後五〇年という節目において、またイラクやアフガニスタンでの新しい戦争が進行するなかで、日本とアメリカは、アジア太平洋戦争の記憶をどう呼びおこし、何を忘却してきたのか-。ポスターや着物に描かれた戦争宣伝や修辞、ヒロシマ・ナガサキの語られかた、戦後体制のなかで変容する「平和と民主主義」、E.H.ノーマンの再評価など…。過去をひもとき、いまと対置することで「政治化」された歴史に多様性を取りもどす、ダワーの研究のエッセンスが凝縮された、最新の論集。一九九三年以降に発表したエッセイ・評論に、著者自身による書き下ろしの解題をつける。

感想・レビュー・書評

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  • ジョン・ダワー『忘却のしかた、記憶のしかた』岩波書店、読了。戦争をいかに「記憶」し「忘却」し歴史を構成していくのか。本書は二〇世紀日本の戦争とアメリカの占領を材料に、選択と非選択がいかに分かちがたく結びついているのか事例的に検証する。 http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0247830/top.html

    例えばこんな具合だ。
    イラク戦後の経営はGHQの日本占領を指標とするが、むしろ日本の満州国創設に酷似しているし、原爆投下は、科学技術の欠如を自覚させるが、それは科学への楽天的な信頼性をも召喚する。

    陰影に満ちた考察は現代史の多様さを存分に描き出す。「日本のおこないを放免することなく、『日本問題』を理解するというジレンマ」を常に意識することで、本書は歴史の「暗転」を示し出す。遙かな高みから裁断するのではなく、錯綜した事象を解きほぐす手仕事には、著者の人間的暖かみを感じずにはいられない。

    ※冒頭の書き下ろしノーマン論は秀逸。

  • 著者 ジョン・W.ダワー 著
    外岡 秀俊 訳
    ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
    刊行日 2013/08/02
    ISBN 9784000247832
    Cコード 0021
    体裁 A5 ・ 上製 ・ 366頁
    定価 3,300円

    冷戦の終焉や戦後50年という節目において,日米両国は,過去のアジア太平洋戦争をどう記憶し,忘却してきたのか──.歴史の複雑さをどのように直視し,現在と未来に生かすべきかを真摯に考察した,著者の本領発揮というべき論文集.1993年以降に発表した論文・エッセイを収録.各論文冒頭に,自身による書き下ろしの解題をつけた.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b261457.html

    【簡易目次】
    日本の読者へ
    凡例



    第1章 E.H.ノーマン,日本,歴史のもちいかた

    第2章 二つの文化における人種,言語,戦争
         ――アジアにおける第二次世界大戦

    第3章 日本の美しい近代戦

    第4章 「愛されない能力」――日本における戦争と記憶

    第5章 被爆者――日本人の記憶のなかの広島と長崎

    第6章 広島の医師の日記,50年後

    第7章 真の民主主義は過去をどう祝うべきか

    第8章 二つのシステムにおける平和と民主主義
         ――対外政策と国内対立

    第9章 惨めさをわらう――敗戦国日本の草の根の諷刺

    第10章 戦争直後の日本からの教訓

    第11章 日本のもうひとつの占領

    初出一覧
    原注
    訳者あとがき
    索引

  • 忘却のしかた、記憶のしかた――日本・アメリカ・戦争
    (和書)2013年11月04日 20:27
    ジョン・W.ダワー 岩波書店 2013年8月3日


    柄谷行人さんの書評から読んでみました。

    図書館で借りたけれど購入したくなる一冊です。

    兎に角いい本です。

  • ジョン・ダワーの論文集や序論集といった感じか。
    筆者の指摘が鋭いのは、日本国民の多くが反戦や戦争責任を認識しているにもかかわらず、政権中枢がそのような認識をしていなかった。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  •  日本でもベストセラーとなったピュリッツァー賞受賞作『敗北を抱きしめて』で知られる米国の歴史家(日本史家)の最新著作。

     『敗北を抱きしめて』が、終戦直後の日本社会を重層的に描き出した一大叙事詩・群像劇であったのに対し、本書はいわば短篇集である。戦中・戦後の日本および米国社会から見た日本という大枠のテーマを、さまざまな角度から変奏した歴史評論集なのだ。

     米国社会における最良の日本理解者ともいえる著者は、正視眼で日本の戦後を見据える。書名の「忘却のしかた、記憶のしかた」とは、68年前に終わった戦争を、日本社会がどのように「忘却」し、どのように「記憶」してきたかを指している。

     『朝日新聞』屈指の名文記者として知られた外岡秀俊(現在は北海道大学公共政策大学院研究員)による訳は、平明でありながら格調高い。「訳者あとがき」も、それ自体が本書の見事な解説になっている。

  • 著者自身の解題のついた政治評論集。

  • 歴史から学べること。戦後のこと知らないことが多すぎる。いろはカルタ掲載の3ページを写真に撮る。

  • 著者は日本の近代史研究家。日本の戦中戦後史に関する評論をまとめたもの。
    著者のベストセラー「敗北を抱きしめて」は、以前読んだことがある。戦後の占領期の日本の社会風俗をテーマとした本だだったが、とても面白かった。この評論は、戦中戦後の日本についてのもので、「敗北を抱きしめて」の時代を補足するような内容になっている。戦後の日本人は何を記憶し、何を忘れているのか(忘れようとしているのか)をテーマとして取り上げる。日本が中国大陸で行った侵略行為は忘れたい記憶となり、原爆の記憶はその上に上書きされた忘れられない記憶となっている。日本人の行動が戦前戦後で間逆に変わってしまったのは何故か。当時の様々なテーマ-文化の違い、戦争の記憶、原爆、政治制度、風俗等を取り上げて考察を行っている。
    正直、自分にはこの評論集を考察できるような知識も無いし、歴史は書き手の立場によって肯定したり否定されたりするものなので、内容についての評価はできないが、著者がこの戦争や風俗をどのように見ているか、歴史の見方にはいろいろな視点があることを学べたことが収穫だった。
    明治~昭和を生き、戦争で全財産を失った自分の祖母の時代がどのような状況であったのか、戦中戦後の厳しい時代を生きた人達と日本を取り巻く空気が感じられ、とても興味深く読むことができた。

  • 1993年以降に発表された著者のエッセイ・論文集。書かれた目的はそれぞれ違うのですが、一貫して著者の主張は「日本だけが特別ではない」「アメリカだけが特別ではない」ということだということ。
    戦後の日本占領をモデルに、イラク戦争を正当化しようとするアメリカ国内の論に対して、日本による満州国の占領との類似点の方が多いことを証明されていく。
    アメリカによる日本占領が成功した事由について、世界のほとんどの目が、実は日本ではなく欧州に向いており、そのためGHQと日本政府というほんの少数の人々の手で国家を設計できたことにある皮肉。
    歴史認識は歪むというのが通例ですが、それが戦後どのように行われていったのか(日本とアメリカの中で)。我々は何を忘却し、記憶したのか。それを認識していないがために、歴史認識の違いによって、いかに他国と衝突することになっているのか。改めて考えさせられる本でした。

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