またの名をグレイス 下

制作 : 佐藤 アヤ子 
  • 岩波書店 (2008年5月29日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000248068

またの名をグレイス 下の感想・レビュー・書評

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  • 19世紀カナダで、16歳のときに働いていた屋敷の主人と女中頭の殺害に関与した罪で有罪判決を受け、30年間服役した実在の女性、グレイス・マークスの事件に題をとった歴史小説。しかし扱っている主題は実に今日的だ。
    グレイスが失った事件の記憶を引き出し、彼女の正体を探ろうとする、野心家の若き心理学者。しかし彼女が語れば語るほど、その姿はいっそう深い謎に包まれていくようだ。彼女は彼に「真実」を分かち合おうとしているのか、それとも、飢えた犬に餌をあたえるように、聞き手が望む物語を作りだしているのか。
    強固な身分制と抑圧的な社会規範の下で生きてきた最下層の女性が、彼女を救済しようとする人々の欲望に黙って身をまかせつつ垣間見せる用心深さと大胆さには、どきりとさせられる。そして晩年のグレイスの穏やかな語りの中から浮かび上がる、死者たちへの激しく親密な感情。最後まで度肝を抜かれつつ、人の心の底知れなさに思いを馳せる。

  • トリイ.・ヘイデンの書いたような多重人格なのか、すごい嘘つきなのか、なんなのか、彼女に翻弄される人たち。実際にあった殺人事件を題材に書かれた話。

  • グレイスは無実の憐れな少女かそれとも妖婦か…?
    保守派と改革派で揺れる19世紀カナダで起きた実際の殺人事件をベースに描かれた物語。黎明期の精神分析医であるジョージ先生とグレイスのインタビューを中心に物語は進む。

    「事件」を証言するのは全てグレイスのみ。グレイスの上品で落ち着いた語り口には説得力があり、彼女の発言はすべて正しいと信じたくなる。しかし所々に差しはさまれる発言やエピソードから「本当に信じて良いのか」という疑念を常に突き付けられ、催眠術のくだりで完全に「何を信じて良いのか」分からなくなる。挙句にジョージ先生は自身の女性問題で、土壇場で物語から退場してしまう。

    物語の所々に「キルト」が出てくるが、ラストシーンで最高に効いてくる。グレイスの作るキルトの三角形、メアリーとナンシーと、囚人グレイスが分かちがたく組み合わさって物語は終結を迎える。

    主犯はマクダーモットなのか、グレイスなのか、はたまたメアリーなのか。痺れるような読後感を残して、グレイスは歴史の記録から姿を消す。

  • 海外ものだが読みづらさはない。

    結局、グレイスがやったのかやらなかったのか。みんながそれぞれに結論を持ち、自分なりの白黒を信じていいて、結末を迎えてしまう。
    それなりに長い、上下巻を読み終えた読者にだけは、ヒントがどこかに隠されているんじゃ…というわずかな期待を裏切られても、不思議と苛立ちは感じない。不思議な読後感だった。

  • 2013/2/6購入

  • 下巻はアトウッドに首根っこをつかまれて、男女の嫌なところ・ずるいところをぐいぐい見せつけられる展開になった。「記憶喪失でなくたって、あなたたちこれだけ自分に都合よくふるまえるんでしょう?」っていう。そうですね、ごめんなさい、という気持ち。サイモンは上巻から頼りなかったけれど、あの環境で成り立ちうる一番ぐずぐずな状況を引き起こして舞台から去って行った。ダメ人間がインテリだと一層見苦しいですね。

    最後になって突然に噴出するグレイスの本音に、胃がざらざらする気持ちになった。その一方で、メアリーとナンシーが彼女の中に分かちがたく組み込まれてしまっていることが悲しい。でも、グレイスはほかにどうしようがあっただろう? グレイスはメアリーの死後、心の中に彼女を作り上げて、つらいときは相談しながら必死で生きていたんだろう。読み終わってみれば、この本はつらい子供時代・それに続く囚人時代を生き抜いた女性の一代記だったように思う。

  • この小説は、住み込みの女中と下男が主人と女中頭を殺したという実際の事件をベースにしてる。事件が起こったのは1843年。
    この事件は、カナダで有名な事件らしく、マーガレット・アトウッドも並々ならぬ興味を持ったようだ。できるかぎりの資料を集め、事実をベースに小説を組み立てている。

  • 下巻入ってからは結構おもしろかった。エーッていうのが三回くらいあったし。でも長いね。

  • 2009年11月22日読了。この殺人事件の失われた部分は、作者がうまく補填したのだろう。うまく出来てると思う。

  • 面白かった。
    緻密な空気、あまり衛生的ではない、当時の感じ。

    タイトルからして秀逸です。無垢なグレイス。端々にしたたかさが見えて怖い。

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