またの名をグレイス 下

制作 : 佐藤 アヤ子 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 87
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000248068

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀カナダで、16歳のときに働いていた屋敷の主人と女中頭の殺害に関与した罪で有罪判決を受け、30年間服役した実在の女性、グレイス・マークスの事件に題をとった歴史小説。しかし扱っている主題は実に今日的だ。
    グレイスが失った事件の記憶を引き出し、彼女の正体を探ろうとする、野心家の若き心理学者。しかし彼女が語れば語るほど、その姿はいっそう深い謎に包まれていくようだ。彼女は彼に「真実」を分かち合おうとしているのか、それとも、飢えた犬に餌をあたえるように、聞き手が望む物語を作りだしているのか。
    強固な身分制と抑圧的な社会規範の下で生きてきた最下層の女性が、彼女を救済しようとする人々の欲望に黙って身をまかせつつ垣間見せる用心深さと大胆さには、どきりとさせられる。そして晩年のグレイスの穏やかな語りの中から浮かび上がる、死者たちへの激しく親密な感情。最後まで度肝を抜かれつつ、人の心の底知れなさに思いを馳せる。

  • 作者の作品は一貫してフェミニズム的だという感想を読んだことがあるが、読了後、確かにと頷いた。
    以前読んだ『侍女の物語』もその視点で読めばもっと面白かったのかもしれない。

    素敵な精神科医だと思って読み進めていたのだが、全くそんなことはなく残念な医師であった…

  • トリイ.・ヘイデンの書いたような多重人格なのか、すごい嘘つきなのか、なんなのか、彼女に翻弄される人たち。実際にあった殺人事件を題材に書かれた話。

  • グレイスは無実の憐れな少女かそれとも妖婦か…?
    保守派と改革派で揺れる19世紀カナダで起きた実際の殺人事件をベースに描かれた物語。黎明期の精神分析医であるジョージ先生とグレイスのインタビューを中心に物語は進む。

    「事件」を証言するのは全てグレイスのみ。グレイスの上品で落ち着いた語り口には説得力があり、彼女の発言はすべて正しいと信じたくなる。しかし所々に差しはさまれる発言やエピソードから「本当に信じて良いのか」という疑念を常に突き付けられ、催眠術のくだりで完全に「何を信じて良いのか」分からなくなる。挙句にジョージ先生は自身の女性問題で、土壇場で物語から退場してしまう。

    物語の所々に「キルト」が出てくるが、ラストシーンで最高に効いてくる。グレイスの作るキルトの三角形、メアリーとナンシーと、囚人グレイスが分かちがたく組み合わさって物語は終結を迎える。

    主犯はマクダーモットなのか、グレイスなのか、はたまたメアリーなのか。痺れるような読後感を残して、グレイスは歴史の記録から姿を消す。

  • 海外ものだが読みづらさはない。

    結局、グレイスがやったのかやらなかったのか。みんながそれぞれに結論を持ち、自分なりの白黒を信じていいて、結末を迎えてしまう。
    それなりに長い、上下巻を読み終えた読者にだけは、ヒントがどこかに隠されているんじゃ…というわずかな期待を裏切られても、不思議と苛立ちは感じない。不思議な読後感だった。

  • 2013/2/6購入

  • 下巻はアトウッドに首根っこをつかまれて、男女の嫌なところ・ずるいところをぐいぐい見せつけられる展開になった。「記憶喪失でなくたって、あなたたちこれだけ自分に都合よくふるまえるんでしょう?」っていう。そうですね、ごめんなさい、という気持ち。サイモンは上巻から頼りなかったけれど、あの環境で成り立ちうる一番ぐずぐずな状況を引き起こして舞台から去って行った。ダメ人間がインテリだと一層見苦しいですね。

    最後になって突然に噴出するグレイスの本音に、胃がざらざらする気持ちになった。その一方で、メアリーとナンシーが彼女の中に分かちがたく組み込まれてしまっていることが悲しい。でも、グレイスはほかにどうしようがあっただろう? グレイスはメアリーの死後、心の中に彼女を作り上げて、つらいときは相談しながら必死で生きていたんだろう。読み終わってみれば、この本はつらい子供時代・それに続く囚人時代を生き抜いた女性の一代記だったように思う。

  • この小説は、住み込みの女中と下男が主人と女中頭を殺したという実際の事件をベースにしてる。事件が起こったのは1843年。
    この事件は、カナダで有名な事件らしく、マーガレット・アトウッドも並々ならぬ興味を持ったようだ。できるかぎりの資料を集め、事実をベースに小説を組み立てている。

  • 下巻入ってからは結構おもしろかった。エーッていうのが三回くらいあったし。でも長いね。

  • 2009年11月22日読了。この殺人事件の失われた部分は、作者がうまく補填したのだろう。うまく出来てると思う。

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著者プロフィール

Margaret Atwood 1939年カナダのオタワに生まれる。オンタリオ北部やケベックで少女時代の大半を過ごし、トロント大学に入学、ノースロップ・フライのもとで英文学を学ぶ。その後、ケンブリッジ、ラドクリフ大学で英文学修士号を取得。さらにハーバード大学大学院で学んだ後に、カナダ各地の大学で教鞭を執る。処女詩集『サークル・ゲーム』でカナダ総督文学賞を受賞。詩、長編、短篇小説から評論、児童書まで幅広く活動する。詩集『スザナ・ムーディーの日記から』(1970)、小説『食べられる女』(1969)、『浮かびあがる』(1972)、『侍女の物語』(1985)『Alias Grace』(1996)などで世界各国の文学賞に輝く。最新作『The Blind Assassin』(2000)でブッカー賞を受賞。評論集『サバイバル』(1972)ではカナダ文学とは何かを正面から問いかけた。邦訳書に『キャッツ・アイ』(マーガレット アトウッド 著、松田雅子、松田寿一、柴田千秋訳、開文社出版、2016年)、『負債と報い――豊かさの影』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子訳、岩波書店、2012年)『死者との交渉―作家と著作』(マーガレット アトウッド著、中島恵子訳、英光社、2011年)『オリクスとクレイク』(マーガレット・アトウッド著、畔柳和代訳、早川書房、2010年)『またの名をグレイス 上・下』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子訳、岩波書店、2008年)『ペネロピアド(THE MYTHS)』(マーガレット・アトウッド著、鴻巣友季子訳、角川書店、2005年)『良い骨たち+簡單な殺人』(マーガレット・アトウッド著、中島恵子訳、北星堂書店、2005年)『カンバセーション アトウッドの文学作法』(マーガレット・アトウッド著、加藤裕佳子訳、松籟社、2005年)『ほんとうの物語』(マーガレット・アトウッド著、内田能嗣 訳、多湖正紀・山本紀美子 共著、大阪教育図書、2005年)『昏き目の暗殺者』(マーガレット・アトウッド著、鴻巣友季子訳、早川書房、2002年)『闇の殺人ゲーム』(マーガレット・アトウッド著、中島恵子訳、北星堂書店、2002年)『寝盗る女 上・下』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子・中島裕美 共訳、彩流社、2001年)『マーガレット・アトウッド短編集』(マーガレット・アトウッド著、Alan Turney編、久慈美貴 注釈、ロングマン・ジャパン、1998年)『食べられる女』(マーガレット・アトウッド著、大浦暁生訳、新潮社、1996年)『サバィバル』(マーガレット・アトウッド 著、加藤裕佳子訳、御茶の水書房、1995年)『Sudden fiction (2)』(「ハッピー・エンド」 Happy Endings 収録。ロバート・シャパード 著、ジェームズ・トーマス 訳、柴田元幸 著、文芸春秋(文春文庫)、1994)『ファミリー・ポートレイト—記憶の扉をひらく一枚の写真』(「偉大なる叔母たち」 Great Aunts収録。キャロリン アンソニー (Carolyn Anthony)編、松岡和子・前沢浩子訳、早川書房、1994年)『浮かびあがる』(マーガレット・アトウッド 著、大島かおり訳、新水社、1993年) 『青ひげの卵』(マーガレット・アトウッド 著、小川芳範訳、筑摩書房、1993年)『スザナ・ムーディーの日記』(マーガレット・アトウッド著、平林美都子 他訳、国文社、1992年)『侍女の物語』(マーガレット・アトウッド著、斎藤英治訳、新潮社、1990年→ハヤカワepi文庫(早川書房)2001年)『ダンシング・ガールズ マーガレット・アトウッド短編集』(マーガレット・アトウッド著、岸本佐知子訳、白水社、1989年)『描かれた女性たち 現代女性作家の短篇小説集(SWITCH LIBRARY)』(「急流を下る」 The Whirlpool Rapids収録。マーガレット・アトウッド・アリス マンロー・アン ビーティ 他著、岸本佐知子 他訳、Switch編集部編、スイッチ・コーポレーション書籍、1989年)などがある。

「2001年 『寝盗る女 (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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