民族の創出 まつろわぬ人々、隠された多様性

  • 岩波書店 (2014年7月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784000248723

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日本の民族性についての深い考察が展開されており、特に大和民族という単一民族の概念が、明治政府によって作られた「想像の共同体」であることを指摘しています。著者は、出雲やエミシ、クマソ、池間民族など、歴史...

感想・レビュー・書評

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  • 大和民族という単一民族といわれる日本は、明治政府が創作した「想像の共同体」であって、「本来は多民族国家」だということを、出雲を中心にエミシ(東北地方)、クマソ(南九州地方)、池間民族(宮古列島の一部集落と池間島)などの、いわゆる古代ヤマト民族に属しない民族の事例をあげながら、日本も多民族を前提とした多元的な国家像であるべきと提案した著作。

  • 出雲、蝦夷、熊襲などの例を挙げて1990年代以降の新たな民族アイデンティティ創出の動向を紹介する。しかしながら、現代ではこのような明治以前の民族区分には自分を当てはめられない人の方がはるかに多いと思われ、有効性には疑問を感じた。これらの民族意識では大和民族との対立物として自民族を捉えているが、大和民族なるものがそもそも実体がないのではないか。一方、巻末に挙げられている池間民族は有望な事例と思った。

  • 創られた単一性日本の中で私は誰なのか?
    と問いながら読み進んだ。
    結局辿り着いのは、やはり歴史であり文化の根差す場所…。
    もっと色々、ご先祖さまの話を聞いておこう。

  • ■体裁=四六判・上製・カバー・422頁
    ■定価(本体 4,200円 + 税)
    ■2014年7月25日
    ■ISBN978-4-00-024872-3 C0021
      近代以降の日本で,民族がいかに創り出されたか.混合民族論が主流だった日本で,戦後単一民族論が拡がったのはなぜか.大和中心のNation Building(民族意識や国民の形成)を出雲,エミシ,クマソなどの視点から捉え直し,同質社会論で覆い隠された日本人内部の多様性を解き明かしながら,多元国家観に基づく民族意識の再構築を説く.


    【目次】(※ルビは亀甲括弧〔 〕に示しました。)
    はじめに [v-viii]
    目次 [ix-xiii]

    第一章 出雲からみた民族の創出 001
    一 漢字語「民族」の誕生 002
     1 NATIONの訳語 
     2 幕末のわれわれ意識 
    二 神武創業の始めに原〔もと〕づく王政復古 008
     1 神話時代への回帰 
     2 出雲信仰の排除と国家神道 
    三 大和民族の登場 014
     1 記紀神話に基づく民族の創出 
     2 倭〔ヤマト〕神話と出雲 
    四 出雲民族の誕生 020
     1 出雲民族概念の出現 
     2 出雲民族意識の発生と広がり 
     3 複数層の民族概念 
     4 民族の違いを実感させたもの 
     5 戦後の出雲民族論 
    五 民族のるつぼとしての混合民族論 034
    六 民族概念再構築の課題 041
     1 日本のマジョリティは何民族か? 
     2 まつろわぬ人々の復権 
    注 049

    第二章 言語不通の列島から単一言語発言への軌跡 057
    一 言語不通の列島 058
     1 時代劇のうそ 
     2 文語を話す 
     3 江戸時代の共通語は漢語? 
     4 標準語不在の明治前半期 
    二 国語と標準語の創作 068
     1 標準語と国語の登場――東京山手の教育ある中流家庭の言葉 
     2 天皇家の母語喪失――標準語になれなかった京都言葉 
     3 人工の言語――標準語の創造 
     4 民族国家の希求と方言の撲滅 
    三 出雲言葉からみる言語画一化の過程 078
     1 ラジオ放送の始まりと方言コンプレックス 
     2 日本語均質化の完成 
    四 言語と方言の境界 085
    五 風土と文化と言葉 090
    注 094
    資料1 山浦玄嗣『ケセン語入門』序論「母なる国ケセン」(抜粋) 099
    資料2 山浦玄嗣『ケセン語の世界』(抜粋) 106

    第三章 二人の現津神――出雲からみた天皇制 109
    一 出雲国造〔こくそう〕――天〔あめ〕の下造らしし大神〔おおかみ〕の祭祀王 110
     1 一世紀で乖離した国造と天皇の知名度 
     2 古代出雲王の末裔 
     3 前近代における出雲国造の権威 
    二 王権を受け継ぐ御杖代〔みつえしろ〕――国造の火継式と天皇の大嘗祭 116
    三 天皇〔スメラミコト〕の変貌――祭祀王から絶対神へ 120
     1 スメラミコト――古代ヤマト王の末裔 
     2 幕末のミカド――山城国の宗教的権威 
     3 操り人形の玉〔ぎょく〕 
    四 二人の生き神と民衆 126
     1 天子(様)の宣伝――天皇像の民衆への浸透 
     2 国造の巡教、天皇の巡幸 
     3 民衆の生き神信仰と国造、天子 
    五 出雲の抹殺? 137
     1 出雲の周縁化 
     2 政治家への転向 
     3 祭祀権を失った現津神――天皇存在の意義 
    注 149

    第四章 創られた建国神話と民族意識――記紀と出雲神話の矛盾 155
    一 記紀神話と出雲 156
    二 神話を根拠に成り立つ国家と大和民族 160
    三 大和神話と出雲神話の矛盾 166
    四 戦後の建国神話教育――戦前との連続性 172
    五 いくつもの創世神話が共存する多元社会 177
    注 183

    第五章 島国観再考――内なる多文化社会論構築のために 189
    一 日本の島国観と単一文化論 190
     1 孤立した島国の農耕民という自画像 
     2 対馬・宮古島からみる島国論の矛盾 
     3 大きな島の小さな根性 
    二 人を繋ぐ東アジアの巨大の内海 198
     1 逆さ地図が語るもの 
     2 国引き神話と海流の道 
     3 海の道のフロンティア 
    三 新羅や越〔こし〕と結ぶ出雲の海人文化 213
     1 新羅と結ぶ出雲 
     2 越前の反り子と小羽山三〇号墓 
     3 出雲地名とオオナムチの伝承 
     4 寄り神信仰と文化圏 
     5 海人文化の伝播――アイの風と出雲節 
    四 近代国家の誕生と人を隔てる海への転換 226
     1 近世まで続いた海の道 
     2 裏日本の創造 
     3 水上から陸上へ――交通網の転換と南北の逆転 
     4 本州北岸域の人為的凋落とヤマト起源史観の拡がり 
    五 裏日本の復権と多元社会観の構築 236
     1 日本海文化論を巻き起こした出雲型墳墓 
     2 海でつながる多元世界 
    注 244

    第六章 アテルイ復権の軌跡とエミシ意識の覚醒 251
    一 エミシをめぐる自意識と他者認識 252
     1 民族国家の形成とエミシ 
     2 矛盾する自己認識 
     3 中近世から近代日本における他社による奥羽・東北観 
    二 アテルイの戦いと悪路王の伝説 259
    三 東北「熊襲」発言事件にみる現代日本のエミシ観 267
     1 ヤマトの侵略とエミシの抵抗 
     2 東北の鬼と悪路王の伝説 
    四 エミシの末裔という自意識 274
    五 アテルイ復権を導いた人々とその思い 278
     1 一力一夫河北新報社長 
     2 「延暦八年の会」と「アテルイを顕彰する会」 
     3 関西アテルイ顕彰会(北天会) 
     4 映画「アテルイ」と鳥居明夫・シネマとうほく社長 
     5 アテルイ復権をめぐるその他の動き 
    六 東北の風土が育むエミシ民族 288
    注 294

    第七章 クマソ復権運動と南九州人のアイデンティティ 301
    一 熊本県球磨郡免田町のクマソ復権運動 302
     1 クマソの子孫というコンプレックス 
     2 免田町一職員の奔走とクマソ復権元年 
     3 鎏金〔りゅうきん〕神獣鏡がシンボル 
     4 クマソ復権運動の始動 
     5 のクマソ復権を目指すドラマ作り 
     6 ドラマ後のクマソ復権運動 
    二 クマソ・ハヤトとは何者か 316
    三 ヤマト勢力の南進とクマソ・ハヤトの抵抗 320
     1 広大な日向国とヤマト勢力の南限 
     2 薩摩国の創設(七〇二年) 
     3 大隅国の創設(七一三年) 
     4 ハヤトの蜂起(七二〇年~七二一年) 
    四 ネイション・ビルディングの中でクマソ民族像 331
     1 教科書に書かれた熊襲 
     2 日常生活に息づくクマソ伝説 
    五 クマソ・ハヤトをめぐる自意識 335
    注 343

    第八章 新たな民族の誕生――池間民族に関する考察 349
    一 誇り高き池間民族 350
     1 映画「さよならニッポン!」と池間島 
     2 池間島を元島とする移民の末裔 
    二 池間民族をめぐる言説 356
    三 池間民族意識を根拠づけるもの 360
    四 民族とは何か? 363
    五 宮古諸島の多様性と池間民族 368
    六 多元社会・日本における民族観 372
    注 375

    終章 同質社会幻想からの脱却と多元社会観の構築 379
    一 単一民族発言が望むもの 379
    二 単一民族ではなく、同質民族ならいいのか? 382
    三 高度経済成長期の企業社会構造と同質化 384
     1 企業社会と単一社会 
     2 企画大量生産型近代工業社会の体質と気質 
    四 多元社会観への転換 391
     1 郷土を犠牲にする国家 
     2 網野善彦が残した課題 
     3 多元国家としての日本像 
    注 399

    あとがき(出雲の神々に感謝して 二〇一四年五月 岡本雅享) [403-408]


    コラム
     三宅米吉「国々のなまり言葉につきて」 071
     伊勢神宮の改造と神々の抹殺 140
     漂流がもたらした文化の伝播 201
     映画「アテルイ」政策上映の呼びかけ(抜粋) 285
     映画「アテルイ」エンディング(ATERUI will HERO) 287
     アタカラの星 371

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著者プロフィール

1967年出雲市生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。現在、福岡県立大学社会学部教授。専門は政治社会学・民俗学。著書に『中国の少数民族教育と言語政策』(社会評論社、2008年)、『民族の創出』(岩波書店)、2014年、『出雲を原郷とする人たち』(藤原書店、2016年)、『千家尊福と出雲信仰』(ちくま新書、2019年)など。地域や国を跨ぐ日本型Ethnic Studiesとしての出雲学を提唱。

「2022年 『越境する出雲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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