ユートピア政治の終焉――グローバル・デモクラシーという神話

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000254113

作品紹介・あらすじ

聖書に端を発する黙示録的神話は、啓蒙主義、フランス革命=ジャコバニズム、ロシア革命=共産主義、ナチズムを経て、今もなお、ネオコン(新保守主義派)や新自由主義派、また、イスラム過激派のなかに生き続けている。本書はまず、近代以降、黙示録的信念を持つユートピア主義と現実政治の関わりを分析する。次いで、近年のブッシュ・ブレア両政権によるイラク戦争、すなわち、武力でイラクに民主主義を伝道しようとして失敗した、その経緯を明らかにする。そして、ユートピア政治の終焉に代わる、現実主義政治の再興とその可能性を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • (原著は"Black Mass : Apocalyptic Religion and the Death pf Utopia"2008年)著者のジョン・グレイは、イギリスの政治哲学者であり、現在はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの名誉教授です。

    キリスト教の、「啓蒙思想」と「ユートピア思想」 と「黙示録的な終末思想」が、政治の場にて現れており、ジャコバン派・共産主義・ボルシェビキ・ナチスヒトラー・ブッシュJr.の新保守主義・イスラム原理主義もこの系譜なのだと、ジョン・グレイは主張します。
    非宗教的な「科学」や、宗教と決別した「哲学」のふりをした、中世キリスト教思想が、現代世界政治にも影響を及ぼしているという話です。


    【メモ 】

    ・共産主義(歴史的唯物論)もナチズム(科学的人種主義)も、普遍的な民主主義も、グローバルな自由市場という新保守主義も、ユートピアを信じる神話である。
    これらは、最古の時代にまで遡る黙示録的信念の最新バージョンである。

    ・終末信仰は、イエス以降のキリスト教に特徴的な信仰である。仏教・ヒンドゥー教・旧約聖書・イエス以前の西欧哲学にはない概念である。

    ・共産主義もナチズムも啓蒙イデオロギーを利用している。

    ・イスラム過激派も近代西欧哲学の産物である。

    ・啓蒙主義は、ソ連崩壊後、イギリスの新自由主義・アメリカの新保守主義としてむしろ力を強めている。
    ・ブレアとブッシュは、政治を神の使命という形で実践した。

    ・新保守主義は左翼を起源とするイデオロギーである。新保守主義は、キリスト教右派とともに、自由主義(リベラル)な意見の立場とも協力できる。

    ・イラクは、新しい世紀におけるはじめてのユートピア的な実験の場だった。

  • (後日追加)

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著者プロフィール

(John Gray)
1948年生まれ。イギリスの政治哲学者。オックスフォード大学で博士号取得後、オックスフォード大学、ハーヴァード大学、イェール大学その他で教鞭をとり、2008年に引退するまでロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授(ヨーロッパ思想)。著書 『グローバリズムという妄想』(日本経済新聞社、1999)、『自由主義の二つの顔:価値多元主義と共生の政治哲学』(ミネルヴァ書房、2006)、『アル・カーイダと西欧:打ち砕かれた「西欧的近代化への野望」』(阪急コミュニケーションズ、2004)、『ユートピア政治の終焉:グローバル・デモクラシーという神話』(岩波書店、2011)、『バーリンの政治哲学入門』(岩波書店、2009)、『わらの犬:地球に君臨する人間』(みすず書房,2009)、『猫に学ぶ:いかに良く生きるか』(みすず書房、2021)他多数。The Guardian, Times Literary Supplementその他の紙誌に定期的に寄稿。

「2021年 『猫に学ぶ いかに良く生きるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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