幽霊塔

著者 :
  • 岩波書店
3.79
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本棚登録 : 1004
感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000254199

作品紹介・あらすじ

時は、大正のはじめ。26歳のまっすぐで血気盛んな青年北川光雄は、絶世の美女、野末秋子に出会った。場所は、九州・長崎県の片田舎にある幽霊塔と呼ばれる時計塔。惨殺された老婆が幽霊となって徘徊すると噂されるところだった。秋子は、そんな場所で何をしようとしていたのか。秘密を抱えた秋子に、光雄は惹かれていき…。夥しい数のクモを飼う男、「救い主」と呼ばれる不思議な医学博士、猿をつれた太った女-怪しい人物たちが二人の周囲で暗躍する。そして時計塔の秘密とは?江戸川乱歩の名作が、宮崎駿のカラー口絵とともに蘇る!波乱万丈、怪奇ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログさんのお薦め本になっていたので、読んでみました。

    本書は宮崎駿さんが三鷹の森ジブリ美術館での企画展示を構想し解説パネルを描く際に読み込んだ、江戸川乱歩の『幽霊塔』を中学生から読めるように振り仮名を増やして校訂を行ったものだそうです。

    宮崎駿さんの余談、元本となったウィルキー・コリンズ『白衣の女』、アリス・M・ウィリアムスン『灰色の女』、黒岩涙香との関係、絵コンテも少しついています。

    この本の主人公の私は北村光雄というまっすぐな行動力のある高等遊民の青年です。
    ヒロインは絶世の美女の野末秋子、苛酷すぎる試練を経験しています。
    光雄の叔父が幽麗塔を買いとり、謎の美女の秋子を養女にするところから物語は始まります。
    光雄には許娘の三浦栄子がいましたが、栄子は性格が悪く、光雄は秋子と想い合うようになります。
    栄子は秋子を陥れようとします。
    秋子は栄子に恨みを買って殺されそうになります。
    その後栄子は首なし死体となって発見されます。
    そして数々の事件が起こりますが、どの事件も秋子が犯人だと疑われます。
    そして、秋子の秘密の使命とは何か?
    秋子は本当に犯人なのか?
    光雄には黒川というライバルも出現します。
    光雄と秋子の運命やいかに…!
    他にも探偵、謎の薬屋やら蜘蛛屋や博士まで多彩な人物が登場し、謎に包まれたストーリー。
    最後の大円団まで一気読みでした。
    大人も童心に返って楽しめる冒険活劇です。
    そして、宮崎駿さんの絵にはなごめます。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      涙香はオドロオドロしい単語が面白いですヨ。って好みの問題かな?
      「白衣の女」は冒険活劇ものですね。ウィルキー・コリンズには「月長...
      まことさん
      涙香はオドロオドロしい単語が面白いですヨ。って好みの問題かな?
      「白衣の女」は冒険活劇ものですね。ウィルキー・コリンズには「月長石」と言う長過ぎて再読出来ない迷作?があり、ロマンチックなタイトルだから読んだら、、、でした。此れも好みの問題。
      2020/09/23
    • まことさん
      猫丸さん。

      さすがです。
      やっぱりたくさん読んでいらっしゃるんですね!
      私は、現代小説ばかりこの頃読んでいて、多少古いものは、なか...
      猫丸さん。

      さすがです。
      やっぱりたくさん読んでいらっしゃるんですね!
      私は、現代小説ばかりこの頃読んでいて、多少古いものは、なかなか読みづらく、読めなくなってしまいました(^^;
      2020/09/23
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      まぁ猫は化けるくらいイイ歳ですので、、
      まことさん
      まぁ猫は化けるくらいイイ歳ですので、、
      2020/09/23
  • 以前、コミックで読んだのは黒岩涙香版でした。さらに江戸川乱歩がリライトします。これは読みやすく、展開にメリハリがあって映画的です。(映画化してほしい!) 宮崎駿さんの絵があるというので楽しみでしたが、挿絵ではありませんでした。本作には時計台のある洋館や迷路、絶世の美女から怪人や怪婦人まで登場するので、宮崎さんの挿絵があると楽しさが倍増するのに。映画化するとヒロインは誰がふさわしいでしょうね。あ〜面白かった。

  • 原作は海外小説であり、黒岩涙香の翻訳小説を江戸川乱歩が登場人物を日本人に変えてリライトした作品。今年公開された宮﨑駿の『君たちはどう生きるか』でもモチーフのひとつとして使われており、影響力の強さがうかがえる。ドラマチックかつ子どもから大人まで楽しめるストーリーと、乱歩による読みやすく格式のある文体ですいすい楽しい気分で読めちゃいます。ジャンルは探偵小説ですが探偵はあまり出番が無く、かといって主人公が何か解決するわけでもないので、読者も流されるまま筋を追うのが正解かと。場面場面のビジュアルが結構印象的で、幽霊塔での冒険だったり、美女が虎に襲われたり、池の中から首なしの死体が発見されたりディテールに原作と乱歩の良さが乗り、相乗効果を生んでいる。面白かった~。

  • 幽霊塔
    著作者:江戸川乱歩
    発行者:岩波書店
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • 面白かった!読んでる間は、モヤモヤしながら先へ先へと逸る気持ちで読んでいたけど、読後はスッキリ。
    時代や、幽霊塔というおどろおどろしい建物が舞台だし、作り出された設定やら背景やら、何か起こる感満載。
    登場人物も怪しい人だらけ。

    表紙や口絵が宮崎駿さんで手に取りやすかったし、江戸川乱歩はやっぱり面白い。

  • 連載ものなので章ごとに引きが強く、続きを煽りまくっていてちょっと面白い。お話はやはり時代がかっており、主人公も高等遊民のおぼっちゃまということもあり、どうしてもツッコミどころがあるのですが、乱歩独特の語り口と怪しく魅力的な世界観にどんどんと引き込まれます。
    宮崎駿の口絵ページは読了後に読むほうがわかりやすくておすすめ。翻案の顛末についての解説があったりして読み応えがありました。ここから『カリオストロの城』の創作に繋がっているなんて感激。

  • はじめに宮崎駿さんによる幽霊塔の構造の解説(想像)とアニメーションにした場合の絵コンテが載っている。
    キャラ設定も少し描かれているので、場面を想像しやすいし、入り込んで読むことができた。

    ジブリで想像しながら読んでいたので、パーティーの時のご飯はきっと美味しそうに描かれるんだろうな、時計塔の内部も細かく描かれるんだろうなと考えるのがとても楽しかった。

  • 乱歩作品の「お約束」がこれでもか! と詰め込まれている作品だった。
    主人公が、上流階級の男なせいか、所々「女性蔑視」「品行階級蔑視」が透けて見えて、なんともいえない昔らしさを感じた。

  • ★そこでは、この世のあらゆる不可能が可能にされていたといっても過言ではない。(p.2)

    ■メモ
    ・江戸川乱歩さんらしい大風呂敷と「しゅうー」と最後にしぼんでいく感覚。
    ・いちばんの売りは、やはり巻頭にある宮崎駿さんのカラーページでしょう。
    ・昔、春陽堂文庫の江戸川乱歩全集的ななにかを読破しているんでたぶん読んだことはあるんやろうと思うんですが、まったく覚えてまへん。ついでに黒岩涙香の『幽霊塔』も青空文庫で読んでますが微かな雰囲気の記憶だけでこちらもほぼ覚えてなかったんでどんくらいちゃうんか曖昧な感じです。

    【時計塔】渡海屋市郎兵衛が建てた時計屋敷。三階建西洋館。いろいろ仕掛けがあるもよう。建てた渡海屋自身が脱出でけへんでどっか内部で死んだゆう噂があり、ひとつ前の所有者お鉄婆さん殺害事件が起こった。ところが、居住空間として以外、出番がほとんどあらへんです。せっかく題名になってんのにもっと活躍してほしかったなあ。物語の大半がこの中のできごとって感じでもよかったんやないかなあ。ある意味看板に偽りありやなあ。
    【北川光雄】主人公の「私」。高等遊民で働く必要なし。うらやましいこって。時計塔を手に入れた元判事、児玉丈太郎の甥。正義漢ではあるんやけど短慮で軽薄な言動、とてもやないけど信頼でけへんタイプです。野末秋子に惚れる。顔のよさと心根のよさを混同するタイプ。婚約者として三浦栄子がいるが性格が悪く図々しいので嫌っている、というか、好みのタイプではないようで、そこに秋子さんとの出会いがあったもんやから…
    【野末秋子】物語の「謎」部分を担う人物。その「使命」とは? お鉄婆さん殺害事件との関わりは? その正体は? 左腕の腕輪は? いつも猿を連れてる肥田夏子との関係は? 結婚を強要してきている弁護士黒川太一との関係は? 蜘蛛屋敷「養虫園」のあるじ岩淵甚三との関係は? 結婚できないという理由は? 彼女の「神様」とは? なんでもかんでも秘密にせんと気がすまへんタイプ。ある程度ぶっちゃけてまえばええのにと思うたり思わんかったり。ま、それではお話にできへんか。

  • 宮崎駿につられて図書館で借りた。夢中で夜中まで読んだ。ワクワクドキドキした。情景がきれい。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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