遊牧の人類史 構造とその起源

  • 岩波書店
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  • 本 ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000254311

作品紹介・あらすじ

人類は定住する以前には移動しながら生きてきた。その長い営みの中から遊牧という文化は生まれてきた。にもかかわらず、人類の歴史において遊牧文化はどこか傍流として位置付けられてきた。遊牧民の生活様式そのものを凝視する著者の研究は、遊牧の起源と、その生態の隠れた体系性を明らかにし、人類史的な意味を考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 別の継投で言われてみればそうだよね、がたくさん。
    遊牧が先、そのあと牧畜や農耕、定着化。
    国民国家と資本主義に押しつぶされそうになっているけど、おそらくその論理では押さえられなそう。
    一番早く家畜化したのは、犬こちらは狩猟に。それとは別の系統で西アジア起源の山羊羊の乳利用から牧畜へ。

  • ふむ

  • 著者の過去著作から引き継がれた遊牧の知識を、人類史という視点からまとめ直した名著。文句なしの星5つ。

    そもそも、遊牧民の多くは(例外はトルコ系民族の突厥くらい)文字や遺跡を残しておらず、情報は周辺民族や国家の歴史を参照するしかない。
    この根本的な困難を抱えつつも、フィールドワークの経験から推測される人類の過去をつづった本作は、まさに『人類史』と呼ぶに相応しい。

    1970年代から80年代に著者が行ったというフィールドワークの豊かな描写には、胸がわくわくする一方、イラクやシリア、モンゴルもまた、現在紛争中あるいは政治的不安定を抱えていることを深く憂うものである。(2020年8月末、中華人民共和国内モンゴル自治区はモンゴル語教育を禁止され、今に至る。)

  • トルコ系の一つのムラの体験記。細かく放牧の仕方はあるんだけど生活の様子がわからない。何食べてるとか、それをどのように入手してるとか。

  • 遺跡を遺さず歴史も記さなかったがゆえに、農耕民のカウンターパートにおかれがちな遊牧民だが、農耕民同様、地球上での現生人類の発展に欠かせない存在だったし、その影響力はしばしば彼らを圧倒さえしてきた。遊牧の起源が、群れて暮らす動物に合わせて始まったとする推定は説得力があり、頻繁に使われる「共生」という言葉は、ヒトを動物の一種として捉える点を踏まえ、自然な形態の象徴に思えた。群生する動物を狩猟の対象でなく共生の対象としたのは、生きる為のコスト低下の観点から大きな発見だったように感じる。定住しない生活様式は、働き場所を固定する価値が漸減する今日、見直される向きもあり、遊牧と農耕が持つ特徴の対比が、現代にも適用し得るのは面白い。著者のフィールドワークを通じた、遊牧生活の実態の説明は精緻で、本書のメインの読みどころ。タイトル通り遊牧の人類史(歴史)を考察する一冊ではあるが、実証と論考に裏付けされた内容は、むしろ科学分野の本と言っても良いかもしれない。

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著者プロフィール

国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。専門は社会人類学。
主な著書に『遊牧の世界―トルコ系遊牧民ユルックの民族誌から 上・下』(中公新書、1983)、『世界民族問題事典』(共編、平凡社、1995)、『カザフ遊牧民の移動――アルタイ山脈からトルコへ 1934-1953』(平凡社、2011)などがある。

「2020年 『中央アジアの歴史と現在 草原の叡智』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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